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車屋異世界転生記  作者: ライ蔵
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一章 元オッサン異世界で早くもグロッキーになる。


 オヤジ様が療養している街に向けて出発する朝が来た。


 俺はリーザと家の戸締まりを確認した後、自分の部屋に戻り旅に出るための服装に着替えていた。

 セリーヌさんがフード付きのローブを用意してくれていたので羽織りながらリーザに念話でルナリスさん達と仲良くするように伝える。


(分かっている。お前も我が力が必要な時には必ず呼ぶのだぞ。)

「ええ、大丈夫です。その時にはお願いします。」


 小声でそうリーザに伝えたときにドアがノックされ返事をするとガチャリと扉が音を立てセリーヌさんが部屋に入ってきた。


 「うん、ちゃんと準備が出来てるみたいだね。もう少しすればルナリス達が来るはずだからそれまでにジュエルちゃんの髪を編んどきましょうか、そうすれば邪魔にならないだろうしね。」


 「はい。お願いします。」


 そう俺が答えるとセリーヌさんは後ろに回り髪の中盤辺りから緩く編んだ三つ編みにしてくれる。


 「はい、出来たよ。」


 おぉ、やっぱり髪は纏めると楽だな!


 「うーん....この街では大丈夫だけど他の街に行ったときにはやっぱりフードをかぶってた方が良さそうね...」


 俺の全身を見ながらセリーヌさんがそう呟いた。


 「そうなのですか?」


 「うん...この街にはダグラスなんかが居るから変な人が居ても大抵は大人しいのだけどね。あぁグルンは変な人だけれど大人しくないわね。」

おいおい、グルンのオッサン。変人扱いされてるぞ。


...まあ、あれは変人か。


 「トラブルを避けるためにジュエルちゃんには途中で泊まる予定の街ではフードをかぶっててもらいたいのだけれど大丈夫かな?」

 「はい、大丈夫です。」

 俺も変人に絡まれたくないからな、絡まれると面倒だし言うことを聞いとこう。


 俺は髪を編んでもらったあと工房に居るオヤジ様の弟子達に出発の挨拶をしに行く。


 挨拶をすると弟子達は「お父さんは大丈夫さ、頑張れよ。」、「ジュエルちゃんに会えば直ぐに元気になるさ。」と口々に返してくれた。


 「ルナリス達が来たからそろそろ出発するわよー。」

 セリーヌさんが出発のために呼びに来た。


 俺はセリーヌさんに連れられルナリスさん達が待つ表に出る。

 馬車は既に馬を付けいつでも出発出来る準備が出来ていた。


 「よっしゃ、セリーヌに任せてれば安全だからどーんとまかせて行ってこい!」

 「必ずダグラスさん達とこの街、リーンベルに無事に帰って来るのよ!」

 「はい!必ず!!!」


 俺はそうグルンとルナリスさんに返すとルリシスちゃんが俺に抱きつき瞳に涙をためながら「ジュエルちゃん、無事に帰って来てね!」と言ってくれ俺は頷きながら「はい、帰ってきたらまた色々とお話をしましょう!」と答えながら微笑み返した。


 眠そうな顔で表に出てきたリーザを抱え上げルリシスちゃんに渡す。


 「すみませんがリーザをお願いします。」

 「うん!心配しなくて大丈夫だよ!リーザちゃんを預かるね。」


 俺とルリシスちゃんはリーザを見るがリーザはルリシスちゃんの腕のなかで既に半分位寝ている....リーザ、寝過ぎだぞ...


 「「では行ってきます!」」


 俺たちは二人で見送ってくれる人たちに挨拶をし、オヤジ様達のいる街へと向け出発した。






 俺たちの住んでいる街、リーンベルを出発し数時間後俺たちは昼御飯を街道沿いの野原で食べていた。


 俺はセリーヌさんが作ってくれていたサンドイッチを食べながらこの数時間の旅について振り返っていた。


 一言で言うと、馬車の乗り心地が悪すぎる!

 馬車自体は二頭引きでパワーはある。流石の二馬力だ。

 ボディはしっかりとした木で出来ていて丈夫そうだし中もそこそこ広い。

 それはいいのだが問題は他だ。


 タイヤは一応ゴムで出来ているようだが中にチューブが入っている訳でもなく中までゴムで出来ているようだ。

 パンクの心配は無いのだろうが乗り心地が最悪だ。

 サスペンションなぞ存在するはずもなくボディを支えているパイプフレームに木製のホイールが取り付けられている。


 たぶん荷馬車だからだろうがサスペンションが無いのが一番の原因だな。

 ベアリングもどうもあまりいいものでは無いらしく抵抗も大きそうだ。

 というかベアリングが存在するのか?メタルの軸受けじゃねえか?これ。


 途中であまりの乗り心地の悪さの為、セリーヌさんに「おしりが痛くて割れてしまいそうです...。」て言うと大笑いされながらクッションを差し出され「これを敷いて座ってないと痛いよ~。」と言われる。


 確かにセリーヌさんを見ると操縦席にクッションを敷いて座ってるな....

 頼むから早くクッションがあることを言って欲しい。


 昼御飯を食べ終わり小休憩の後、出発のために立ち上がりまだ痛い自分の尻を擦りながら馬車に戻っているとそんな俺の様子を見たセリーヌさんが少し困った顔をしながら「もう少し我慢してねジュエルちゃん。夕方までには今日泊まる街まで着くからね。」と言う。


 ええ、いいですとも。この旅についてきたのは俺自身の意思ですから。

 迷惑をかけないように我慢するぜ!

 ここが今生で初めての男の見せ場だ。


 俺は馬車の荷台で振動による痛みを我慢しつつセリーヌさんに迷惑がかからないように大人しく座っていたのだが、またも問題がおき始めた。


 それは...



 That's乗り物酔いです....



 これはキツイ!乗り物酔いなんてガキの時以来だぜ...いや今はガキか。



 乗り物酔いで頭がくらくらし、嘔吐感が込み上げてきて非常にまずい。

 このままじゃあセリーヌさんに迷惑をかけてしまう。

 無理やり着いてきたようなものだからなるべく迷惑をかけないようにしたいのだが....


 どうにかならないもんかなと考察しているとふと思い付いた事がある。

 俺、回復魔法が使えるのだから自分に回復魔法をかけたら乗り物酔いが治るんじゃねえかと思い至った。


 よし、やってみるか。


 俺は乗り物酔いで少しふらついているが集中して魔力を練り、自分に回復魔法を使ってみる。

 するとどうだ今まで乗り物酔いで頭がグラグラしていたのが急にスッキリとし、おまけに尻の痛みまで消えている。


 おぉ神よ!!!!


 回復魔法、凄いな!初めてエストワールに手を合わせたくなったぞ!


 すっかりご機嫌になった俺はせっかくのこの世界での旅なのだから旅を満喫しようとセリーヌさんの隣に座り外の景色を眺める事にした。

 勿論クッションを敷いて。


 「ジュエルちゃん、お外を眺めるのならローブのフードを被りましょうか。初夏になってきたと言ってもまだ少し風も冷たいしね。」


 そう言われフードを被りながら「はい、わかりました!」と言うとセリーヌさんが眼を細めながら笑顔を返してくれる。

 セリーヌさんにも俺の気分が良くなっているのが伝わっているようだ。


 「さぁ、もう少しで今日泊まる街、ルーレンスに着くわよ!着いたら美味しいご飯を食べましょう!」

 「はい!楽しみです!」


 俺は流れ行く景色を眺めながら今日食べるであろう夕御飯に想いを馳せた。






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