一章 元オッサン異世界で夢を見る 2
俺はただ見ているだけだが今ダンジョンの中で絶賛戦闘中だ。
このダンジョンはどうやら区画でモンスターの種類が違うらしくこの区画は動物系のモンスターばかりだ。
襲いかかる狼形型モンスターを俺は切り裂き道を切り開いていく。
後列には若きオヤジ様が風を纏わせた剣で大型の熊を押さえている。
中列にいる若いセリーヌさんが熊に細身剣で急所を突き止めを指す。
こんな感じでダンジョンアタックをしているがこの区画、敵多すぎねぇ?
前までの区画とは比べ物にならないくらい多いぞ。
大小の獣モンスターに30匹は囲まれてる。
「仕方がない!あれを使う!」
そう言う若きオヤジ様の周りに風が集まり、その風を纏いながら右足で大地を蹴る。
目で追えない剣の斬撃音がすると廻りを囲んでいた獣モンスターが肉塊になっていた。
おいおい、強すぎじゃねえかオヤジ様!
若きオヤジ様が肩で息をしているが少し間を取り息を整えながら
「次の区画でこのダンジョンを抜けれる筈だ。少しここで休憩しよう。」
「分かったわ!しかしあれがダグラスの疾風烈斬ね...恐いくらい強力な技ね。」
そう少しおっかなびっくりに言う若きセリーヌさんに
「そうでもないさ。あれには弱点があるし何より使用者の体への負担が大きいから連続では使えない。」
そう言いながら剣を握ったまま地面に座る。
「それに俺の右足も限界が近いようだ。あの技は右足を酷使する。そろそろあの技自体が俺には使えなくなるだろう。まあ、まだ歩けるだけでも儲けものだ。」
道具入れからランプ型の魔導具を取り出し明かりをつけるとダンジョン内が淡く明るくなった。
「もう使うのは辞めろ。おそらく次は無いぞ。」
若きオヤジ様はゆっくりと頷きながら「ああ、そうだろうな。」と言いながら自分の右足を擦っている。
暫くの間、皆体力を回復させるために黙ったまま携帯食糧を口にしていたが、若いセリーヌさんがオヤジ様に話し掛け始めた。
「ねぇ、そう言えばダグラスはこのダンジョンに来たことがあるような素振りだけど来たことがあるの?」
「ああ、前に攻略したことがある。とは言っても今回と違って俺と同ランクの奴等5人パーティーとヴァルダーで深部に潜ったんだけどな。」
「ダグラスと同ランクの人達のパーティーてどんな化け物パーティーよ...」
若干呆れたようにセリーヌさんが言いながらジト目で若きオヤジ様を見ている。
「それぐらいこのダンジョンは危険度が高いんだ。だがこの表層はそこまででも無い。反対側に抜けられるこの隠し通路を発見したのもその時だ。」
真剣な顔から少し気を抜いたような顔に変わり喋り続ける。
「だから奴等はここまで追っては来ない。おそらくダンジョンの入り口で俺達が出てくるのを待ち構えてるさ。仮に追ってきているとしてもこの通路は何回も潜ってる人間にしか見つからないだろうな。」
「ふぅーん、そう言うことか~。」
「じゃあ、そろそろ出発するか。ここを抜けた後、ギルドに行って事の顛末を伝えなければ。あんな組織存在していては駄目だ!」
「ええ!」
「その通りだ。」
2人と1匹はお互いに頷き最後の区画に向かう準備を始める。