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3話

 

 「あら、早いわね。あなた達が一番乗りよ」

 

 目標を果たしたカイ達がセイフティースペースに戻るとアニウス以外誰もいない。

 どうやら最も早く課題をクリアすることができたようだ。

 

 「それじゃああなた達は夕食の用意をしてあとは自由時間です。明日からも同じパーティで動いてもらうので親睦を深めておいてください」

 

 アニウスの指示に従い、広いセーフティスペースの端に場所を取る。

 パーティ結成当初より大分打ち解けたようで、会話も盛り上がっていた。

 

 夕食の準備をしながらオリヴィアとミリアが雑談をしている。

 妙に馬があったのか探索の途中からずっと仲が良さげだった。

  

 「私オリヴィアちゃんってもっと取っ付きにくい人だと思ってたんだけど全然そんな事無いね。学院に戻っても仲良くしてね」

 

 「……ちょっと喋るのが苦手なだけ。これからもよろしく」


 そう言いながら二人して微笑みつつメンバー全員の料理を作っていく。

 

 「なぁなぁヒューズ、お前ミリアちゃんのこと気にかかってんのか?」

 

 「んなっ!?いや、そんなことはないぞ。僕は魔法の研究以外に現を抜かしてる場合じゃないからな」


 寝床の用意をしながら顔を赤くしているヒューズをからかっているのはウッドだ。

 その持ち前の人当たりの良さから彼はヒューズともう仲良くなっているようだった。最も、ヒューズがおちょくられているようなだけにも見えるが。

 

 そして残りの三人であるカイ、リイナ、フィナはその他の生活準備をしながら今日の戦いを振り返っていた。

 

 「カイ君、あなたあんなに近接戦闘得意だったんですか?授業では全然そんな様子見えなかったですけど」

 

 「あんまり悪目立ちしたくなかったからな。下手に実力見せると色々くってかかってきそうなやつがいるし」

 

 カイは昨日の出来事を思い出して少しげんなりする。

 

 「あら、その割には私相手には容赦なく叩きのめしてくれたじゃない。おかげで私の自尊心はボロボロなんだけど」

 

 隣で荷物の整理をしながらフィナが刺のある声でカイに声をかけた。

 

 「いや、流石に学院最強相手に手は抜けなかったしあの時は俺も自分の力を試したかったというか……。っていうかやっぱり根に持ってるのか」

 

 額に手をあてカイが息を吐く。

 最近ため息ばかりついているような気がしてならなかった。

 

 「えっ、フィナさんってカイ君に負けた事あるんですか?」

 

 リイナが目を見開いて驚く。

 フィナが誰かに負けたなんて話は聞いた事が無く、その相手が学院最弱と蔑まれるカイだというのだから驚くのも無理は無かった。

 

 「えぇ、惨敗よ惨敗。もちろん精霊術の使用が禁止された模擬線でだけどね。それでも私が負けたのはあの一度きりだわ……」

 

 本来ならそれでもあり得ないと一笑にするところだが、ゴブリン達との戦闘で実際にその身のこなしを見ているのでリイナは納得するしか無い。 

 

 めらめらとフィナの目に再戦の炎が燃え上がっているのをみてカイは軽く頭を抱える。

 あの時つい調子に乗って全力を出してしまったのは本当に失敗だった。

 

 「というわけで、私は今回の迷宮探索であなたに目に物みせてやるわ!覚悟してなさいカイっ」

 

 びしっと指でさされ思わず顔をそらす。

 そんな様子をリイナが苦笑しながら眺めていた。

 

 と、そこに一人の影が近づいてくる。

 

 「よぉ落ちこぼれ、どうやらフィナのおかげで一位だったようだな。女におんぶにだっこで恥ずかしくねぇのかてめぇは」

 

 「グリュー……」

 

 その姿を確認したフィナとカイの表情が、げんなりとしたものになる。

 

 「フィナも大変だな、こんな奴のおもりなんてよ」

 

 「あなたには関係ないでしょグリュー。それにカイはよくやってくれてるわ」

 

 フィナがカイを持ち上げた事が気に食わないのか、表情にありありと不機嫌さをにじませた。

 

 「無能がどんなに頑張ったって使い物になんかなんねーだろ。ちっ、てめぇみたいなのをみるとイライラすんだよ」

 

 そう捨て台詞を吐いてグリューは自分たちのパーティに戻っていく。

 面倒な事にならなくてよかったとほっと息をついていると、隣からリイナに心配そうな表情を向けられる。

 

 「カイ君大丈夫?あんまり気にしすぎない方が良いですよ」

 

 「慣れてるから大丈夫だ。ありがとうリイナ」

 

 カイにとって心配されるというのはあまり無い経験なので。つい返答につまってしまった。

   

 「カイにはちゃんと力があるんだし気にする事は無いわ。最も私が言うまでもないとはおもうけど」

 

 つっけんどんな言い方だが、フィナも励ましてくれる。

 対抗心を燃やしているとはいえ、フィナは元々カイに対する悪い感情はもっていないため肩を持つときはしっかりもってくれるのだ。

 

 そんな二人にもう一度礼を言っていると、オリヴィア達から夕飯の用意ができたという声がかかった。

 

 「今日は野菜たっぷりの鍋。初日だから豪華にした」

 

 そういってオリヴィアがたき火の上に鍋を置く。

 風の精霊術を使いながら空気を循環させつつ鍋をわかせる。


 「おぉ、うまそうだ!それじゃあ早速食べるかっ」

 

 ウッドの声を皮切りにみんなが鍋に箸を伸ばす。

 途中カイとウッドの肉争奪戦が勃発したりしたが、おおむね平和に初日の夜は更けていった。

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