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焦土と測量士  作者: today
第一章
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少年と電脳士2

ごめんなさい、長くなってしまいました。

 工具箱をひっさげて受付を通り過ぎる瞬間、カウンターの奥で口論する男女の声が聞こえた。


「だから、俺が先に見つけたからお前の出番じゃないんだよ。」


「はぁ?先とか後とか関係ないでしょ。むしろあんた達みたいなむさい集団に、繊細な電脳戦をするような依頼が来るとは思えないのだけれど。こん棒持って害虫駆除でもしてれば?」


 覗いてみれば、褐色の大男と金髪ツインテールの少女が睨みあっている。

 男の胸には赤いきつねが刺繍されている。


 通称ブラッドフォックス

土壌調査と旧軍事研究施設を中心に情報を集める測量団のマークだ。


 一方、少女の肩には銀の蝶が描かれている。


 通称アイアンフェアリー

重武装施設攻略と古い施設からの情報抽出をメインに活動する測量団のシンボル。


 一般人に知られているほどに彼らの活動は有名、かつ有能。

 知りたい情報なら何でも知っている集団と言っても過言ではない。

 そんな彼らがなぜこんな穴倉に?


「こっちだって電脳戦くらいやるよ。それに、女ばっかりのお前らよりハードな仕事現場では優秀な電脳士が必要なんだよ。」


「そんなの、粗雑なあんたらが勝手に自爆してハードにしてるだけでしょ。それに、女だって男に負けないくらいハードな仕事をやってますー。」


 なんだか、アイアンフェアリーの方が幼稚に見えて来たのは白夜の錯覚だと思いたい。


「だいたい、お前さんの所は女しか取らないんだろ?」


「そんなこと一言も言ってないけど。優秀な人間なら誰でも歓迎よ。」


「だいたい、それでも女ばっかりの所より、男の多いこっちの方が遠慮なくいろいろ言えて、彼もストレスが溜まらない職場になると思うのだが。」


「そんなの、彼次第じゃない。それに、こちらだって配慮するわよ。むさくるしい空間より私たちの方がよっぽど良い職場にする自信があるわ。」


 様子から察するに、ここに来た理由は新人の電脳士を雇うためらしい。

 まあ、この手の人間にかかわれば一発で出身がばれてしまうから、さっさと逃げるのが一番だ。


「お疲れ様~」


 小さい声でカウンターの受付嬢に挨拶をし、一歩踏み出した瞬間に肩を掴まれた。


「まあ、もう少しここにいとけよ。」


 振り向けば、禿げお…、社長がにこやかに立っている。

 表情から分かる。

 お金でももらったのだろう。

 移籍金とかの名目だろう。


 ぐいぐいと引っ張られ結局、事務室側に引き込まれてしまった。

 作業場と違い、小奇麗な一室。


「連れてきました。」


 へこへこと頭を下げて、俺をさしだす社長。


(もはや社長の威厳が無いな。この際、店長、いや禿げオヤジで十分だ。)


 心の中の罵倒も通じず、測量団のリーダーと思われる彼らの前に立たされる。


「お前が、ビャクヤ・セキドウか?意外と華奢だな。」


 褐色の大男にそう言われ、少し腹が立った。


「そういうあなたは、誰ですか。」


 失礼だと分かっているが、向こうもいきなり華奢だの言って失礼なことを言ってきている以上、こっちが改まる必要など無いと白夜は判断した。

それともう一つ分かったのは、自分が電脳士としてヘッドハンティングをされたらしい事だ。


 おかしいとは感じていたのだ、ウィルスは攻撃などの任務を受けたら、破壊されるまで行動を続ける。

 あそこで、最後の一体が逃げたのは恐らく何らかの情報を量子通信で持ちかえるためだ。

 この二人のどちらかが、ウィルスをけしかけたのだと推測する。


「これは失礼。レッドフォックスのファイターをしている、ルディング・エマヤだ。君のスカウトに来た。」


 確か、ファイターは陸戦を得意としたポジションで、測量団では肉弾戦を担当する事が多いはずだ。

だから、体格がかなりガッシリしているのかと、少し納得した。


「折角のお誘いですが、お断りさせていただきます。」


 そう、こんな集団にかかわっても良い事など何もない。

 フィニルを持つ人間との戦いも多くなりそうだし、命がけの仕事など給料がいくら良くても割に合わない。


「なぜだ?給料もかなりいいはずだし、好きな場所に住めるしいろんな事が出来るぞ。」


 ルディングの瞳は、断る理由が分からないと言ってきている。


「給料がいくら良くても割に合いません。」


 白夜の瞳は拒否の色を強くたたえた。


「そうよ。こんなむさ苦しい筋肉馬鹿と一緒に命がけの旅なんて、給料がいくらもらえても割に合わないわよ。」


 それまで黙っていた、金髪碧眼の少女(白夜より背が低い)がルディングに向かって吠える。


「いや、そういう問題ではなく、命がけの旅なんてしたくないと言いますか…。」


 小さいのに近くで見ると、やけに威圧感のある少女に白夜は若干気圧される。


「なんで?自分で言うのもなんだけど、うちの子たちは結構可愛いとおもうのだけど。そんな集団のなか

頼れる男が一人。女の子に頼られるのは好きじゃない?ひょっとしたらその内、恋が芽生えて…。」


 目をキラキラさせながら、次から次にまくしたてる少女。


 (あー、なんか自分の世界に入り始めたな。面倒くさい女だな…。第一、女が大勢いる中に男が一人ならこき使われて酷い目にあうのが落ちだ。色恋沙汰などありえんて。)


 うんざりし、部屋から出ようと踵を返した瞬間、体が停止した。



駄目だし、感想等よろしくお願いします。

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