3-2 ナツ&オムside
☆
「あ、昨日眠過ぎて街でログアウトしたんだっけ。」
今後は自分で素材を掘ったらどうだ、というブックさんの提案に乗ったことで昨日採掘系のスキルを上げるために単純作業を繰り返していた俺は単純作業に眠くなって街でログアウトしていた。
「とりあえず家戻ろっかな。」
すみれはまだログインしてないし、ブックさんはインスタンス内だ。なんかしてんだろ。そう思い特にすぐすることも思いつかなかったのでギルドハウスでのんびりしてようとハウスへテレポートする。
「あ、うす。」
ハウスへ戻ると庭の喫煙所にイケメンが片手をあげて返事をする。このイケメン、たまにこうやってタバコを吸いに来る、侍の装いの男性(アバター)。
「暇なん?」
「まあ。」
「中入ればいいのに。」
「いや、まあここで事足りるし。」
「タバコ吸ってるだけだもんな。」
装備からしてなかなかに高レベルなんだろうと予測ができるこの人はユニオン『Knights of Starlight』《ナイツ オブ スターライト》のVin Seeker《ヴィン シーカー》さん。ちなみにあだ名はシカさん。
「シカさんもうちくればいいのに。」
「今のギルドには世話になってるからね。」
何度か誘ったが断られている。別段何も困らないからと移籍には至っていないが、割とよく遊ぶ方だ。ちなみに俺も強制するつもりはないので本人の意志に任せている。
「とりあえず会っちゃったし中どうぞ?」
「じゃあ遠慮なく。」
タバコを吸い終えたので2人で中へ移動する。
「コーヒーでいいんだっけ?」
「うん。ありがとう。」
何かいるかと思って確認を取ってから工房へ向かうと、工房にはオムさんが何か作っていた。
「おは。」
「あ、ナツさん。おはよう。」
「あ、ちょーどいいや。コーヒー2つ頼むわ。」
「誰か来てるの?」
「うん。シカさん。」
「シカさんね。了解。」
コーヒーをお願いしてその場を去ることに。
☆
「シカさんね。了解。」
そう返事をして自分の制作を終えてからコーヒーを入れる。シカさんは確かビターチョコ系のお茶請けだったな。なんかいいのあるかな。そう思い料理系の制作レシピを開く。
「え?まって?なんで私こんなメイドみたいなことしてるの?」
そう言いながらもコーヒーと一緒にビター系のガトーショコラを用意する私も私だと思う。
「お待たせ。シカさんいらっしゃい。」
「さんきゅ。」
「お邪魔さまです。ご丁寧にどうも。」
「オムさんも一緒にどう?」
「あ、私これからちょっと素材集めに行ってくるから大丈夫。」
そういって装備を戦闘用に変更する。目の前で行うが脱いだり来たりする訳では無いので別に裸体を晒すわけではない。
「じゃ、行ってきます。」
「行ってらっしゃい。」
「あ、え?あ、行ってらっしゃい。」
☆
「これはこれは、大変なオーダーが入っていますね。」
「そうなんだよね。」
大変なオーダーとはナツさんからの置き手紙だ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
オムさんへ
なんか、工房って、単体グレードアップが
あるらしいのね。
で、ミスミズに見せてもらったんだけど、
機械的でかっこよかったんだよね。
あと、ハウジングの質がかわるらしい。
俺やりたい。
ウチもよろしく。
From Nuts XIII
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「グレードアップって確か《ガイル鉱石》700個よね。」
「あと、《シルバルウッド》が500本ですね。」
「買う?」
「木はなんとかなりますが、石は私は掘れませんね。」
ガイル鉱石は岩山エリアの頂点付近で取れる素材だ。当然モンスターもそこそこ強いのだが、採取レベルが高い。モンスターはハイドスキルでどうとでもなるが、採掘しようと思うと人を選ぶ仕様である。
「どうかしたー?」
「あ、デニムさん。」
「こんにちは。」
「あーこれかー。」
デニムさんはギルドメンバー。自称ルーチェの孫の手。 そんなデニムさんはナツさんの置き手紙を呼んでいる。
「よし。おねーさんが人肌脱ごう。」
「え?掘れるんだ。」
「ハッハッハ。痒いところに手が届く。そんな私がBlue Jeansだよ。」
「さすが。孫の手。」
「困った工場長を放ってはおけないだろう?」
そう言って消えていったデニムさん。
「では私も木を切ってきます。」
「じゃあいろいろ準備しとくね。」
この手紙が置かれたのは昨日の夜だろう。おそらくナツさんはハウジングのテンションでログインしてくる。ちなみに急なお願いなど日常茶飯事だ。もう動じてなんていられない。
「設計図描いて主要素材以外入れとくか。」
これが私の日常。




