ある日のブック
☆
なんとまあ、困りましたね。
日々のデイリークエストを消化中、デイリークエスト用のボス討伐のみのものをプレイしていた時です。このデイリーでは10人1組になってボス討伐をするというものなのです。
今回はタンクが2人にアタッカーが6人、ヒーラーが2人とものすごく偏ってしまいました。それはまあよくある事なのですが、攻略中タンクの方が止まってしまいました。恐らく回線障害でしょうかね。たまーにあります。
「ワイプ〜!」
どなたからか声がかかりました。ワイプとはワイプアウトということらしいですね。このゲームでは安全エリアに下がることをワイプと呼びます。そしてしばらくタンクの方の復帰を待つことに。攻略も終盤でしたのに惜しいことをしましたね。
「戻ってこないしプレイヤーリストからも消えちゃったんで、とりあえず続きやってみましょうか。」
どなたかから声が上がりそのままやっていましたが、中盤ぐらいでまたワイプがかかりました。
「すみません。これ僕一人じゃ無理ですね。抜けます。」
そういって退室してしまわれたのは残りのタンクの方でした。じゃあ、それなら、私も、と次々に抜けていき残ったのは私と二刀長剣の方、あとヒーラーの方が2人ですね。
「ナツ、私達も抜けるよ。」
「いやちょっと待って。もう掴めそうなんだ。」
「は?」
「あの、そちらのヒーラーの方申し訳ないんですが俺の事ずっと見ててもらえますか?もう1人のこっちのヒーラーは身内なんですけど、火力高いのでヒールキツくなったら呼んでください。」
「え、やるの?」
「あとそっちの召喚の人。」
「はい。」
「範囲攻撃、タンク大ダメージ、状態異常系のときはバフください。あと常に速度系のバフもほしいです。」
「わかりました。では、このまま攻略を続行ということでいいですか?」
「え、ほんとに?嘘でしょ?4人で?」
「よし、ナツ。いくよ。」
「おう!!!」
そこからこのナツと呼ばれている方の凄いこと凄いこと。タンクさながら全ての攻撃を受け止めて見せたあと素早い攻撃でダメージを蓄積、被ダメこそ多いものの最初に声をかけていらっしゃったこともあってかヒーラーの方も常に回復をしていらっしゃったので瀕死には至らずといったところでしたね。
そして、もう1人のお連れの方。この方ヒーラーでしたよね?高純度の火力の高い魔法のバリエーションもさることながらダメージもだいぶ稼いでいらっしゃいました。実に4割。私よりダメージを与えていらっしゃいます。しかしながら、状況判断はとてもお上手で、相方ヒーラーさんが苦しそうだとヒールに周り、バフが足りないと思えばそちらへ周り、余裕が出来たら攻撃に転じ、と素晴らしい機転を利かせていらっしゃいました。
☆
「ふぅわぁ〜〜〜〜〜〜。脳みその血管切れるかとおもったあ〜〜〜〜〜。」
「すみません。わがまま言って。お疲れ様でした。」
「いや、その、こちらこそありがとうございました。本当にお疲れ様でした。」
「お疲れ様でした。素晴らしかったですね。感動いたしました。」
「ほら、ナツ。お礼。」
「あ、ありがとうございました〜。またやりましょう〜。」
戦闘が終わってすぐ、フィールド中央に横たわるナツと呼ばれた方。戦っている時とは別人ですね。しかし、なんだったんでしょうか今のは。いくら攻略難易度そのものは低いボスだとしても、10人パーティーで攻略するはずのボスをほぼ2人で削りきってしまわれました。私なんてアタッカーなのに1割。恥ずかしいですね。
「あの、お疲れのところお声かけして申し訳ございませんが、ひとつよろしいでしょうか?」
「え?は〜い。ど〜ぞ〜。」
「ナツ!起きろ!」
「あ、はい。」
よっ。と言って起き上がるナツさん。
「先程の戦闘大変感銘を受けました。もしや高レベルのプレイヤーの方なのでしょうか?」
「え、いや?全然ですよ?なんか、燃えるんですよねああいう状況。」
「この人変人なんですよ。気にしないであげてください。」
いやいや、あなたもですよヒーラーの方。
「ハッハッハッハ。剛毅な方たちですね。素晴らしい。」
「剛毅?」
「たしか褒める系の言葉だよ。」
「そう?ありがとう!崇めてね?」
「やめとけ。」
なんて面白い方たちでしょう。この機会逃してはなりませんね。
「よろしければ私とフレンド登録をしてはいただけませんか?」
「あ、わ、私も!」
「「もちろん!」」
こうして私とナツさんたちとの日々が始まりました。




