2-5 ブック side
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ふむ。思いのほか続きますねこのやり取り。おカミさんがここまで食い下がるのにはなにか理由があるのでしょう。ということは『XIII Crowns』は一旦諦めましょうか。
「ナツさん。ナツさんはユニオンのトップなわけですからここは少し歩み寄ってみましょうか。」
「え、あ、うん。」
「おカミさん。おカミさんは平和と秩序ですね。」
「うん。多分?」
これで1度落ち着きましたでしょうか。
「ではナツさんの仰っている居心地のいいとは寛ぐとか安らぐとかそう言った語彙として捉えても?」
「ああ、うん。多分?」
ふむ。居心地だとコーズィーとかリラックスとかでしょうか。おカミさんのだとオーダーとか、ハーモニーとかもいいかもしれませんね。でもこれだとナツさんらしさがないでしょうか。カームとかでもいいでしょうかね。
ファンタジー的にはセレニタ、ルーン、アマニやクリドでもいいでしょうか。
ヒール、ハイレン、クラード、安らぎという意味ですがこの辺もよさそうですね。
確かイタリア語で天国や楽園を表すチェーロという言葉がありましたか。
「『ルーン チェーロ』と言うのはいかがでしょうか。略すとルーチェになるのですが。」
少し考え込んだ後この名前を提案。マルチウィンドウを開いてから文字で説明をする。
「『lugn』《ルーン》はスウェーデン語で穏やかなという言葉で、『Ciero』《チェーロ》はイタリア語で空などを示すのですが、天国や楽園という言葉と認識しております。そして『luce』《ルーチェ》ですが、光という意味なのでナツさんにピッタリかと思うのですが。いかがでしょう。浅い知識で申し訳ないのですがご一考いただければと。」
しばし沈黙、安直すぎましたでしょうか。どうも歳のせいかこういったセンスがなくて困りますね。取り下げましょう。
「やはり私の知識では・・・。」
「「いいじゃん!!!」」
「わ、わたしもとてもいいのではないかと思います。」
「ルーチェか。可愛い名前だね。」
「ね!ルーチェかわいいよね!」
おっと、これは思いの外好評でしたね。少し恥ずかしくなってきました。自分の案が採用されるというのは久しぶりの感覚ですね。ありがたいことです。
「俺が光か〜。ちょっと照れくさいね。」
「ナツ、調子乗らない。ルーンチェーロね!決まり!」
「ルーンだとスペルは違うけど月とかって意味もあるからおカミには最適かもしれないね。」
「私、月の女神を目指すことにするわ。」
「あ、あと、神秘とかそういう意味合いもあったはずですね。」
予期せぬところですがオムさんもいつの間にか会話に入っていけてますね。これは僥倖。こうしてユニオン名は『lugn ciero』《ルーン チェーロ》に無事決まりました。
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さて、あとすべきことはひとつですね。こういってはなんですがもうあとは背中を押すだけのようですので少し強引に進めてしまいましょう。
「さて、では僭越ながら私の提案に乗っていただけたということで次の議題に進ませていただきますね。」
「次の議題?なんかあったっけ?」
「はい。ナツさん。ひとつ重要なことをお忘れかと思いますが、まあ先程既に役職自体は決まっていましたがまだオムさんからの返事をお受けしてないのですよね。」
「え?そうなの?」
当てがあるので連れてくる、と申しましたがオムさんは1度話を聞きに来たはずです。まだオムさんの口から入社のお返事はいただけていないのですね。
「まあ現代で言うところの内々定という形でしょうか。ナツさんもおカミさんもオムさんの加入に対しては歓迎と受け取っておりますが、さてオムさん。いかがでしょうか?私のお誘いは受けていただけますか?」
強引に話を持っていったのでなるべく優しい言葉を添えてお伺いしましょうかね。まあ先程のユニオン名を決める話からオムさんも入る方向に気持ちは寄っていっているとは思うのですが果たして。
「あ、えっと、あの、工房長はいいんですけど、その、私人付き合いが苦手なのであまりその、お役に立てるのかどうかは。」
ふむ。ここは茶化したりせずちゃんとオムさんの言葉を待っていますね。さすがナツさんとおカミさんです。というのは少し上から目線すぎますかね。どうも社長職、今は会長職ですが、それが長すぎるのかもしれませんね。
「あの、だからその、纏めたりとか仕切ったりとかはできないし大人数も苦手なので、その、えっと、だから、あの。」
「え、ごめん。もしかして嫌とかだった?」
素晴らしいタイミングですねおカミさん。チラッと目が合いましたのでそのまま続けてくださいと目配せをしておきましょう。
「もし、嫌とかなら無理強いはしないんだけど、私はオムさんなら大歓迎って思ったよ。実際ゲーム始めた初日から知ってるから私たちからしたら最古参だし、遊んだ回数は少ないかもしれないけどずっと好印象なんだよね。」
「そうだね。最古参は間違いないし、なんか出会い方も運命的だったし、マスターとしても申し分ないというかぜひお願いしたいと思ってるよ。言葉が足りなくて申し訳ないけど。」
これは僥倖。お2人の真摯な1面をお見せすることが叶いましたね。期待以上です。さすがとしか申し上げることがありません。
「あ、えっと、全然嫌とかじゃないんですけど、あの、逆にその、嫌じゃなければなんですが・・・。」
「嫌なわけないじゃん!」
「プレイスタイルは尊重するので。逆にこちらからよろしくお願いします。」
「あ、ありがとうございます。ではお言葉に甘えて、お願いします。」
丸く収まりましたね。隠しても隠しても隠しきれない笑顔が私から溢れ出ているのではないでしょうか。




