1-11 オム side
☆
「ウラァ!!!」
女王蜂の突進攻撃を打ち合わせ通りに二刀で受けきって跳ね返したところから戦闘開始。本当に跳ね返してるよ。
女王蜂はノックバック効果で体勢を崩している。
「待てコラ!!」
そこから二刀を巧みに操り攻撃に切り替えるナツさん。
「7、8、9、12!?」
まさかの12連撃。
「スターバースト、」
「ナツ!!!邪魔!!!!!どけ!!!!!!《プロテクト・ライトニング》!!!」
明らかに決めゼリフを叫ぼうとしていたところで慌てて引き返すナツさん。おカミさんが放ったのは中級の大ダメージ光魔法だ。この人ヒーラーじゃなかったっけ。
「今いいとこだったのに!」
「うるさいこのゲームにそんな技ない!!スキルちゃんと使えバカ!」
そんなやり取りをしながらもきっちり次の攻撃を受け流した所で範囲攻撃のモーションが入ると、ナツさんはすかさず中央固定。その隙に私と後衛2人は後ろへ下がる。この攻撃は射程距離があり後ろまでは届かないのだ。
そして、ピクっとこちらから見て右側の羽が動いたのと同時に半身を左にズラすナツさん。自分の立ち位置の攻撃が過ぎるとまた半身を戻して正面を向く。そして逆の羽がまたピクっと動くやいなや右側へ前進を始める。この人見極める速度がめちゃくちゃ速いな。
「おカミさん。詠唱始めましょう。」
「もうやってる!」
後衛のやり取りを聞きながらもナツさんを観察する私。
「《ブルームスター》!《アッパースウィング》!かーらーのー!《コアブレイク》!!!」
「《セブンススター!》」
初級片手切り払い、初級片手切り上げからの中級片手剣大ダメージスキルをリズム良くぶち込んだ後華麗にステップバックしスペースを開ける。そしてそこにおカミさんの無属性大魔法が刺さる。
「ふむ。素晴らしいですね。ではそろそろ私達も動きましょうか。」
ニコッと笑いかけてくるブックさん。それにしてもさっきまでと全然動きが違うなこの2人。なんだったんだろう。
「ノってきた!回復準備して!ブックさん防御バフ!硬いの!」
「はい。どうぞ。《土の精霊・アースアーマー》!」
そう叫ぶと被弾しながらも突っ込み続け単体攻撃やスキルの嵐。私も加減をしながら反対側から切り刻むこと約2分。
「疲れた!交代!」
急に急旋回して下がり始めるナツさんに合わせ私も下がる。
「《フレイムウルフ》、《アイアンゴーレム》!」
初級召喚獣を2体召喚し、時間を稼ぐブックさん。その間スタミナポーションをがぶ飲みしているナツさん。おカミさんはナツさんの回復中。
その後も本当に前半は何だったのかと思わされる安定ぶりでどんどんと女王蜂のHPを削っていく。
「あ、そろそろ来ます!」
「りょ!」
女王蜂のHPが7割削れたのを確認し、体勢を整え配置に着く4人。すると大きなモーションから図太い針がフロアの中心目掛けて打ち出される。
「こんっの!くっそおっもいんじゃボケーーーーー!!!」
「えっ!?」
まさかの空中に飛び込みこれでもかとガスガス剣技をぶつけフロアの端っこまで吹き飛ばすナツさん。いや、無理やりすぎない?こんな攻略、動画でも見たことないんだけど。
「《チェーントラップ》。」
「ぬわっ!またこれ!?」
え?これって闇魔法の捕縛するやつだよね。ダメージはないけど3秒動けなくなるやつ。
跳躍の影響で私たちとだいぶ距離が空いていたナツさんは闇の鎖によって中央より少し私たち寄りに引き戻されて固定されている。
「《光の精霊・チャージヒール》。」
振動ダメージを受けているナツさんに継続回復をかけるブックさん。大ダメージ攻撃をまさかの手段で回避したパーティはその後も危なげなく女王蜂退治に成功する。
《Congratulation!》
「やったー!勝ったー!いぇーい!」
「疲れた〜。」
「お疲れ様でした。お2人とも素晴らしかったですよ。」
「お疲れ様でした!」
両手を振り上げて喜ぶおカミさんと座り込むナツさん。相変わらずニコニコと笑いかけているブックさんである。
「あ!見て!ドロップ《女王蜂の羽》だって!」
「私には《女王蜂の杖》が出ていますね。これ、私いらないのでおカミさんにお譲りしますよ。」
「俺剣出てないし素材は売り払うかな〜。」
「え、いいの?やったー!でもモフモフでなかったね。」
「そうですね。残念ながら。」
ちなみにこのゲームのドロップ品はランダムで各ストレージに自動で分配される。その後のトレードは自由である。
「モフモフ?」
「うん!モフモフが欲しかったの!」
「モフモフって《女王蜂のマフラー》の事ですか?」
「あー、多分それ!」
なるほど。確かに初級エリアでは人気度の高い装備だ。首に巻くタイプのアクセサリーで、毒耐性に保温効果のある装備なのだが、なによりも肌触りや見栄えがいいという現在ではほぼおしゃれ装備として活用されている。
「女王蜂のマフラーはドロップ品じゃないですよ。」
「え?そうなの?」
「はい。《女王蜂の綿毛》をメインにつくるアクセサリーですね。」
「あ、それなら俺ひとつあるよ。」
「必要数は2つのはずですが、私もひとつ出ているので必要数はクリアしていますね。」
あの練度ならもう一度行っても問題なくクリアできそうだな。今日はもう疲れたから後日にもう一度来たらすぐ作れるだろう。
「欲しい!」
「え?」
「欲しい!!」
「おい、カミ。さすがにレアドロップを助っ人にたかるな。」
「いーやーだー!欲しい!」
「えっと、あの、つ、作りましょうか?」
「やったーーーーー!ありがとう!」
思えばこの時から未来への布石は打たれていたのかもしれない。




