1-7 オム side
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「とりあえずこれくらいでいいかな。」
山エリアでレベリング兼素材集めをしていた私は目的の《グリーンベアー》通称緑熊から取れる毛皮を集めるため約100頭の退治を終えたところだった。
この毛皮から作ることができるものは緑に紛れることができ、ギリーマントがあればハイド率が上がり、寝袋やテントであれば野営していても森林に溶け込むことができる。
「ドロップ率悪すぎでしょ。毛皮が1番取れるんじゃなくてなんで爪とか牙が多いのよ。」
しかもこの緑熊、山エリアのダンジョン内でしか出てこないモンスターで狩り尽くすと1度ダンジョンに入り直さないといけない。ものすごく手間がかかるモンスターである。ちなみに山エリアは初級と中級の間に位置するエリアである。
「とりあえず戻ってテント作ろうかな。」
そう思っていた矢先、いきなり通話窓が現れる。
「えっ!?通話!?なに!?」
通話の相手の名前はNuts XIII。少し前に街でぶつかって以降音沙汰の無かった相手である。
「あの陽キャの人か。なんだろう。」
『は、はい。もしもし。』
『あ、オムさん?ナッツですけど覚えてますー?』
『あっはい。もちろん覚えてます。ど、どうか、あの、えっと用事ですか?』
『用事なく電話することあります?(笑)今からって時間ありますかー?』
確かにおっしゃる通り。それにしてもやっぱり漂う陽キャ感が否めないなこの人。
『今用事が終わって街へ戻ろうとしていたところですが・・・。』
『あ、もう落ちる感じです?ちょっと攻略手伝って欲しいんですけど!』
『や、まだ落ちはしないですが、攻略ですか?ちなみに何を?』
『森エリアの女王蜂です!』
森エリアは初級の人がまず挑戦するエリアだが、女王蜂は最初のフィールドボスだ。インスタンスなので他のパーティと鉢合わせたりはないのだが、この人たちもうそんなにレベリングしたのかな。ちょっと早い気がするけど。
『攻略条件的なのは揃ってますか?お会いしてからの期間だと少し難しい気がするのですが。差し出がましくて申し訳ないんですけど・・・。』
『今ねー!カミともう1人で3人でいるんだけど、その人が少し足りないって言ってる!あとタンクが足りない!』
もう1人はもう少しレベルが高いんだろう。ステータス聞いてないから分からないけど・・・。最悪私1人でも倒せるし女王蜂久しぶりだしな。パーティプレイってこのゲームでした事ないけどまあ大丈夫か。
ちなみに、この時点で私はワールドランキング6位に載っている。無心にレベリングしていたらこうなったのだが、プレイ時間にものを言わせてるだけなので特に誇らしいことではない。私と同じ時間ゲームしてればだれでもこれくらいは出来ると思う。
もしかして、知ってて呼んでるのかな。でもタンク足りないって言ってるしな。どうしよう。
『オムさん?聞こえてる?ラグってる??』
『あ、す、すみません。少し考え事をしていました。分かりました。お受けしますね。タンクも女王蜂なら出来ると思うのでメインタンクさせていただきます。』
『ありがとうございますー!どれくらいで準備できそうですか?』
『そうですね、30分もあれば大丈夫だと思います。』
『じゃあ30分後に森エリアのテレポゾーンで!』
『しょ、承知しました!』
えっと、まずは街にもどって、とりあえず片手剣と片手盾でいいかな。挑発スキルはあるし防御バフもあるし、あとはポーション類も用意しないと。
「あぁ!パーティ構成聞くの忘れた!どうしよわからん!!」
だめだ。もし片手剣被ったらどうしよう。それともランスのがいいかな。いやでもランス使えないしな。でも盾とメイン武器の小太刀は相性が悪いし、えっと、あとはーーーーー。
考えても埒が明かないので片手盾、両手盾、防御特化大剣、魔術結界系の考えうるタンクの手段を大急ぎで用意して待ち合わせ場所へ向かうことに。ちなみに一番最初に用意した片手盾に片手剣の構成でなんの問題もなく取り越し苦労に終わる。
余談だがこの準備で緑熊の爪と牙をほぼ使い切ることになって後々新たに狩りにいくのだが、次は毛皮ばかりが出るというどうにも全てにおいて悪循環に見舞われる栞であった。
☆
「す、す、すみません!お待たせしちゃいましたか?」
黒衣の二刀長剣といういかにも某主人公の様な見た目のナッツと前に会った時よりさらに派手に、いや彼女の言い回しだと神々しくなった女神様はすぐ見つけることができた。
「うわ!?びっくりした、あ、オムさん。や、全然大丈夫ですよ!来てくれてありがとうございます!」
「今急に現れたよね?まあいいか。よろしくね〜!なんかイメージ違うね!」
しまったハイド切り忘れてた。そして今日はタンクということで普段のハイド率アップの装備は外して、動きが鈍らない程度の鉄製のアーマーを着ている。
「オムさん。はじめまして。百科 辞典と申します。お2人からはブックさんと呼ばれておりますのでそのように呼んで頂ければ幸いにございます。」
「は、はじめまして、えっと、あの、あ、オムで大丈夫です!ご丁寧にどうも!よ、よろしくお願いします!」
ご丁寧に挨拶してくださったブックさん。とりあえずパーティを組みましょうということで4人パーティを組み、森の中へと歩いていく。
「オムさんなんでそんなに緊張してるの〜?」
「え?あ、いや、パーティプレイってあんまりしたことなくってですね、はい。」
「普段は1人なの?」
「普段はというか、常にソロですね・・・。」
そんな会話をしながらも私はいつもの癖で接敵を極力避けながら歩く。パーティの中でもタンクなので先頭を歩いているので後ろを他の皆さんが着いてくるという構図だ。
『突然すみません。オムさん少しいいでしょうか。』
!?びっくりしたあ。これは個人通話か。相手はブックさんだな。
『あ、はい、なんでしょう?』
『もしかして、わざと接敵を避けてますか?』
「なんか全然敵いないね。」
「森エリアってダンジョン以外静かなんじゃない?初級エリアって聞くし。」
『ね?お2人もお気付きかと思いまして、そろそろかなと。』
しまった。森エリアだと私の索敵スキルが高すぎて全て避けてしまっていたのか。全く気が付かなかった
『すみません。適度にぶつかるようにしますね。』
『そうして頂けるとお2人も暇が紛れるかと思います。』
チラッとブックさんに視線を送ると最後尾からニコッと微笑みかけてくる。物腰の柔らかい落ち着いた方なんだなと思うと同時にこの2人との関係性も気になるものだ。そうして数回の戦闘を行い、フィールドボス《スピニング・クイーン》の元へとたどり着いた。




