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【電子書籍化&コミカライズ進行中】私、愛されていますので  作者: 秋色mai @コミカライズ企画進行中


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26. ママですよー!


「卵……か」

「ええ、これでおいしい卵料理がたっくさん作れますわよ!」


 にわとりとドラゴンの卵の違いも分からないレティは、パァァァと光輝く笑顔だ。同時に張り付いていた瘴気が溶けてなくなっていった。あまりに無垢さに瘴気も浄化されるらしい。


「レティ、それはドラゴンの卵だから食べられないよ」

「……ん!? なるほど、凶暴化していたのはこのためだったのか!」


 殿下がそう教えてから、長兄が気づく。レティほど馬鹿ではないのだが、この兄もまた脳筋であった。

 ドラゴンの卵だと分かった途端、レティはそっと親ドラゴンの腹の下に戻す。


「殿下、このドラゴンを見逃すことはできませんの?」

「いや、親ドラゴンは子が孵化したら死ぬから、手を下す必要もない」


 よくわかっていないレティに殿下が説明する。一学年の時に魔物生物学で習った範囲のはずだが、レティはテストが終われば忘れてしまう。


「子は親の亡骸を食って育ち、空を飛ぶ。ドラゴンはそういう生態なんだよ」

「生態……」

「このドラゴンは気絶しているから、このまま死ぬだろうね」


 ついでに長兄も分かっていなかったようであり、レティと同じ顔をしていた。殿下は内心で「こんなのでよく騎士団長が務まるな」と思っていたが、優秀な副団長がいるのである。

 レティはいそいそと卵を取り出し、今度は卵の上に寝そべった。


「……コルセットをしたままだと温められないんじゃないかな」

「じゃあ脱ぎますわ」

「こんなところで脱ぎ始めたら君を二度と外に出さないよ、レティ」


 長兄は妹の奇行を笑い、殿下の目は闇に堕ちる。殿下の言っていることがわからず、レティは卵の前で首を傾げた。


「って、ん……?」


 ────ピキピキ、と音がする。

 卵にヒビが入り、左右に揺れる。バキンと割れて、頭に殻を乗っけたままのドラゴンの雛が顔を出した。

 ピギャーと鳴く子ドラゴンの真っ黒な瞳は、まっすぐにレティを映している。


「殿下、この子って闇ドラゴンですわよね?」

「うん、正確には闇属性のドラゴンだけど……レティ待っ」

「じゃあヤミーですわね!」


 よくわからないながらも、応えるようにピィヤァと鳴いて、ヤミーが首を傾げる。その愛らしさに、レティはヤミーを抱きしめた。


「ああ……」


 殿下はもう何を言っても遅いことを悟る。長兄は何も考えずに受け入れて「ここまで大きくなるのかー」なんて呑気に親ドラゴンを見ている。


「ヤミー、私がママよ!」


 魔物に続き、とうとうドラゴンまで飼いはじめたレティであった。項垂れる殿下を見て、レティは首を横に振る。


「人の都合で倒し、親子の一度きりの機会を、私が失わせてしまった……ならば私が守るのが道理でしょう?」

「レティ、親子といえどドラゴンだ」

「ドラゴンだって生き物ですのよ。ねー?」

「ピヤァ」


 ……やはり無駄であった。

 卵を持ち帰って研究機関に渡し、人工ドラゴンを作らせて生物兵器にしようと思っていた殿下だったが、また利用しようとしたものがレティに救われてしまった。


「親ドラゴンはヤミーが食べるからいいとして……瘴気の浄化はどうしますの?」

「それこそ、ラファエルの出番だろう! 今呼んだ!」

『……あの兄上、まだ何も言われていないのですが? どうやら討伐できたようですけど』


 次兄が呆れたように応える。長兄の手が大きすぎて、フットボールほどの水晶玉がりんごに見える。


 数十分後、次兄が到着した時には、もう親ドラゴンの亡骸はなかった。そしてヤミーは二回りほど大きくなっていた。


「遅かったな!」

「あのですね、ここ国境沿いなんですよ? これでも馬に速度上昇の魔法をかけてきたんですから」

「走ればすぐだろう、なぁ?」

「ええ!」

「脳筋組で結託するのやめてください」


 そんなこんなありつつも、次兄によって速やかに瘴気は浄化された。さすがは聖女の息子、次期筆頭神官候補である。その呆気なさにレティが尋ねる。


「……最初からラファ兄様がいらっしゃっていればよかったのでは?」

「レティシア、湧いた魔物を倒してからでなければ、こんなに落ち着いて浄化できないのです。今回は子ドラゴンの孵化で消費されたようですが、魔物が湧くのは瘴気のエネルギーが使われているということで……」

「まあ、なんだ! ラファエルは細いからな! もっと食え!」

「肩幅ゴリラは黙っていてください。人の話を遮ってはならないと、母上にいつも言われているでしょう」


 オベール家の圧倒的陽の雰囲気に、殿下の影が薄くなる。

 結果として、また生き物を拾ってきてしまったレティは、もちろん母に叱られた。

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