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1. 悪役令嬢レティシア・オベール

 是非シリーズにとのお声がありましたので、連載版始めました。二話までは短編とほぼ一緒で、ちょぴっと詳しく書いてあるかも、くらいです。


 セリタス王国には、馬鹿な侯爵令嬢がいる。

 継承権第一位の王太子殿下の婚約者。未来の国母、レティシア・オベール。

 本来その立場にいるべきは、聡明で能力が高く淑女の鑑のような存在だ。

 しかし、レティシアは高飛車で傲慢だった。おまけに、貴族の証でもある魔法も下手だった。


 彼女はプラチナブロンドの巻き髪を靡かせ、自分よりも下位の令嬢を引き連れて、王立魔法学園の廊下を闊歩する。貴族だけが通う学園に制服はなく、無駄に華美なドレスは人々の目を惹くが、その紅い瞳に捉えられてしまえばおしまいだと、一般生徒は皆目を伏せるのだ。

 ……そんな中、レティシアを気にしない存在がいた。


 新学年を祝う舞踏会で、一男子生徒が声を上げる。音楽は鳴りやみ、人々は動きを止めた。


「殿下、私の話をお聞きください! レティシア・オベール様は、アネットを虐げ、学園内の分断を引き起こしています。そのような人は国母にふさわしくない!」


 時期外れの転入生。伯爵家の隠し子で、突然貴族になった元平民。アネット・フランソワ。柔らかいブラウンの髪はふわふわと揺れ、オリーブの瞳は優しい雰囲気。彼女はとても可憐で勤勉だった。それも転入試験で満点を叩き出し、すぐに生徒会に招集されたほどだ。生徒会は特に優秀な生徒だけが集められるエリート集団で、王太子殿下を筆頭に、後に国の中枢を担う人物が所属している。

 そんな期待の新星であるアネットを、レティシアが虐げているというのだ。

 殿下の冷めた瞳に、男子生徒は続きを語る。


「レティシア様は、優秀で可愛らしく人気の高い彼女に嫉妬し、彼女をお茶会に呼ばず、公衆の面前で叱りつけたりしたのです」


 皆、レティシアを見た。確かに、レティシアにはアネットに嫉妬する要素がある。彼女は決して聡明ではないし、それ故に、侯爵家でありながら生徒会に入れていない。実際、魔法実技の時間に叱りつけているのを目撃したのは、一人や二人ではない。


「これだけではありません。その上、レティシア様はアネットに暴漢を仕向けたのです。殿下がアネットと二人で話しているのを見て、殿下を疑い、アネットを消そうと思ったに違いありません。自分が愛されていないからといって下劣な行為です」


 と、ここでレティシアはその長いまつ毛を瞬かせた。こてん、と首を傾げる。その姿を見て、誰もが口を噤んだ。



「殿下を疑うなんてこと、しないわ。(わたくし)、愛されていますもの」


 バーン!

 そんな効果音が鳴り響くかのようだった。シリアスな雰囲気は消し炭にされ、皆耐えきれなくなったかのように口をキュッとすぼめる。笑ってはいけない断罪劇の始まりだった。

 唯一、殿下だけが自由に大笑いをして、レティシア……レティを抱き寄せる。


「あっはははは……。そうだね、可愛いレティ。僕は君をとても愛しているよ」

「知ってますわ。だからといって、毎度どこへ行くのか、何時に帰っていらっしゃるのか、何をお話しになるのかまで報告してこなくてよろしいのですけれど」

「僕が伝えたいから、伝えているんだよ。本当は記録用水晶の録画まで見てほしいくらいだ」


 殿下は艶のある黒髪を揺らし、レティの額に自分の額をくつける。そのアメジストのような瞳には口を尖らせたレティしか映っていない。美麗な王子様と金糸の令嬢。完全に二人だけの世界だった。その距離の近さに一部生徒は手で目を覆う。


「わ、私はいじめられてなんていません!」


 イチャコラによって貴族たちの重い雰囲気が解けたところで、ここぞとばかりにアネットが声を上げる。アネットに恋をしていた数人以外、一般生徒たちは皆、首を縦に振った。

 ()()レティが、嫉妬などでいじめるわけないのだ。

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― 新着の感想 ―
>その紅い瞳に捉えられてしまえばおしまいだと、 何がそんな恐ろしいのか、後にその理由を読んでびっくりでしたw
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