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怪談

作者: trtrt

私はその日、おじいちゃんの葬式に来ていた

遠い地方なので、夏休みでもめったに来ることはなかった

しかし、さすがに、自分の親が死んだのだ、両親二人して、休みを取って

電車で片道、六時間以上かけて、私は、南のほうへ、南のほうへと、降りていた

電車を乗り換えるたびに、気温は上昇し、私は、徐々に不安になっていく

母親の話では、その田舎では、未だに、クーラーが、無いというのである

一両編成の電車で、駅に着くと、一台だけ、タクシーが止められており

すぐに、三人でその車に向かった、先に電話で、お願いしており、こんな場所に、普段タクシーはないという

私は、全く、コンクリートの建物のない揺れる道の中

昔、両親が一度、仕事で手が離せないとかで、田舎に預けられたことを思い出していた

そこで、釣りに連れていかれたり、山の田んぼに行ったそうであろうが、全く記憶にない

それでも、私の感情の中に、一つ、ある言葉が浮かんでいた

それは、何の岩だったかは、思い出せない

しかし、何でも、その岩で、命を落とすと、生き返るというのだ

今、子供ながらに考えて、そんなことは、無いと、そう思う

しかし、やけに、その言葉が、頭の中に、しみついてしまっていたようで

家に近づくにつれて

ばらけていた、記憶が、徐々にまとまり、次第に、あの思い出も、あわただしい、出迎えや、用意などで、押し流されていった

無事葬式は、終わったが、そのうちの一人が、言う

「しかし、棺桶のふたも開けられないなんて、よっぽど、酷い死に方をしたんだろう」

私はその言葉を聞いて、母親の顔を見ようとしたが、皆移動する流れの中で、私も、それに付き合うしかなかった

火葬も終わり、両親は、有休をとったとかで、あと二日、母親の実家に滞在することになった

本当に何もない場所であるが、クーラーは、何年も前に設置したとかで、一部の部屋だけが冷たかった

「本当に、突然だったね、あんな元気な人だったのに」

母親が、その母親とせんべいを食べながらお勝手で何かをしゃべっていた

私は、持ってきた本を読みながら、なんとなく聞いていた

「あのね、実は、みんなが、いたから、あまり詳しいことは言わなかったけど

お父さん、死んだ場所が、あがばがだったんよ、それで、あまり周りにも、言えないし、本当に、困ったんけど、潮の流れで、向こうの沖について、漁港で、回収したけど、今夜あたり、出るかも知れんね」

私は、何か、不謹慎な気がした

向こうのほうで、父親の声がした

「おい、ちょっと、海岸に散歩に行かないか」

父親に言われ、私は靴を履いて玄関から出ようとすると、母親も、一緒に行くとついてきた

時刻は、夕方を、超えようとしている

もう、日は、地平線へと隠れてもおかしくなさそうであった

「本当に、残念なことをしたよ、あんなに」

父親は、そういうが、母親のほうは、首を振るばかりで、何も言わない

母親たちが、歩いていく

しかし、私には、やけに、見覚えのある場所に思えた

「あれ、何だっけ」

ただ、それは、昔、遠い記憶の中で、そこに、歩いていた記憶がある

おじいちゃんと、そうだ、私は、ここに来ていた

その時、何と言ったっけ、おじいちゃんは

「いったらいけんど」

そんなことを言われた気がする

確か、岩が、鋭くて、火山岩だから、けがをしやすいし

落ちやすいと

私は、前を見て、声を出そうとして、気が付く

目の前に、誰もいないのだ

「お父さん」

私は、声をかけたが、そこには誰もいなかった

丘のような、薄い草が、一面に生えている

その先には、切れ立った崖しかない

「何処に行ったんだよ、おかあさん」

何度か叫んだところで、私は、背後の声を聴いて振り返った

そこには、両親の姿があった

ちょっと、戻っていたというのだ

私は、それにあんどして、抱きついて、首を傾げた

びっしょりと濡れていたのである




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