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ナンバーワン②


「おい!百合〜!こっち来て見ろよ!すげぇ眺めだぞ!」


「ハル様。そんなに騒いだら危ない…」


ハルと百合は豪華客船を貸し切って、船のデッキへ登った。


デッキからの眺めは最高だ。

しかし、百合は高い場所が少し苦手なようだった。


「百合!大丈夫だから!ほら!」ハルが手を引き、一番高い場所へ百合を案内した。


百合はハルの手をとり思い切って登った。


「わぁ…素敵。ハル様とても綺麗でございますね。」百合が目を輝かせながら、景色を見渡した。

「だろ?」ハルが笑った。



ハルが後ろから百合にネックレスを付けた。


「ハル様、これは…」百合が付けられたネックレスをみながらつぶやく。


「お前、それ欲しかったんだろ?」ハルが言った。


「でも、こんな高価なもの…」

百合は以前のデートの時にじっとこのネックレスを見ていた。が、とても手を出せる金額ではなかった。


「いいんだ。やる。」ハルが言った。

ハルはそれに、今まで稼いだすべての金をつぎ込んだ。


「ハル様…」百合がハルを見ながら言った。


「お前は俺の女だ」ハルが言った。


「はい!ハル様!」百合は笑顔で答えた。


そして、二人はキスを交わした。

百合の首にはダイヤとパールのネックレスがキラキラと輝いていた。




「おい!ハル!お前肉食だなぁ。」

一馬が言った。


ハルが百合との交際の事を一馬に話していた。


「ああ、俺はがんがん行く」ハルが言った。


「よかったな!あんな美人。おめぇにはもったいねえぐらいだ」一馬が笑いながら言った。


「いや、つり合ってるつーの。お前は女作んねえのか?」ハルが聞いた。

「ん?ああ、まあな…」一馬が答えた。


「何でだ?」ハルが聞く。


「いいんだよ俺は!それに、俺って、一人の女に尽くすタイプじゃねえし」一馬が不自然に笑った。


「ふぅ〜ん」ハルは何かがおかしいと思ったが、それ以上は何も聞かなかった。



それから、仕事ではお互い助け合い、喜びあい、時には失敗もあったが、それをバネにして必死にがんばった。


百合との交際も順調に進んでた。





「あれ?今日は一馬いないのか?」ハルが出勤すると一馬がいない。


一馬に電話をかけた。


「おう、ハル」

一馬が出た。


「お前、どうした?具合でもわりいのか?」ハルが聞いた。


「ああ、ちょっとな。今日は休ませてもらうよ」一馬が言った。


「風邪か?おめえバカは風邪引かねえんだぞ?今日一日でお前との差を広げてやる」ハルが言った。

「バカじゃねえよ。それに、お前じゃ一日で俺との差がそんな変わるとは思えねえよ。」一馬も言った。


「明日は来るか?」ハルが聞いた。悪口を言い合うのも仲の良い証拠だ。


「ああ。明日は行く。今日がんばれよ」一馬が言った。


「ああ、じゃあな」


二人は電話を切った。


今日の仕事は張り合う仲間がいなくて寂しかった。



次の日。


ハルが出勤すると一馬がいた。


「お前もう大丈夫なのか?」ハルが控え室に入るなり一馬に聞いた。


「ああ、大丈夫だ」そう言って笑顔をみせる一馬。

しかし、ハルには空元気を出しているように見えた。


ハルは病み上がりだからかと思いなおした。


やはり一馬がいる仕事は楽しかった。


次の日。


また一馬が居ない。


「あれ?一馬…」ハルはまた一馬に電話をかけた。


今回は電話に出なかった。

ハルはおかしいと思い、父に電話をした。この店の社長なら、スタッフから連絡が来てるはずだと思った。


「親父か?あのよ、一馬から連絡来てねえか?」ハルが聞いた。


「…………」


ハルは電話を切った。


父が言うにはどうやら一馬は入院しているらしい。


ハルは急いで、一馬が入院している病院へ車を飛ばした。


病室へ入ると一馬がいた。


「お前…どうしたんだよ?風邪じゃねえのか?」ハルが息を切らしながら言った。


「よお、ハル。風邪じゃねえみてえだな。」

一馬は顔色が悪く、辛そうだった。


「大丈夫か?辛そうだな。横になれよ。」ハルが一馬を横にさせた。


「ああ、わりぃ…」


「検査したのか?何か病気なのか?」

ハルは心配でしょうがない。


「………」


「一馬?」

黙りこくった一馬を不思議に思った優羽。



「なぁハル…遺伝ってこえーな」一馬がか細い声で言った。


「遺伝?」ハルが聞き返した。


「……俺の親、二人ともガンで死んでんだ。」一馬が言った。


「…ガン…」ハルはショックを受けた。


「で、でもまだガンと決まった訳じゃねえだろ?」ハルが撤回した。


「ああ…そうだな。」一馬は微笑んだ。


後日、ハルの父が医者から一馬の病気を知らされた。


「親父!どうだった!ガンなんかじゃねえよな?」ハルが診察室から出てきた父に攻めよった。


「……ガンだ……持って一ヶ月だそうだ…」ハルの父が泣きながら言った。


「……うそだろ?なぁ!親父!うそだろ!…何でだよ…何で…一馬が…あと一ヶ月…」ハルは泣き崩れた。


「若いから進行も早い…」父が言った。



二人は一馬の病室へ行った。


一馬は昨日よりも具合が悪そうだったが、入ってきた二人に笑いかけた。

「社長…手間かけさせちまってすいません…」一馬が言った。


「いや、一馬も俺の息子同然だ。」父が一馬を見て言った。


「社長…嬉しいです…」一馬が微笑んだ。


「一馬。お前の病気の事だが、ガンだと言われた。」ハルの父はハッキリと一馬に言った。


「…そうですか…やっぱり…」一馬が言った。


「でもな!そんなに深刻じゃないらしい!すぐに良くなると医者は言ってたぞ!だから、早く治して、元気になれよ!」

父はそう言うと病室を出て行った。


「…本当かハル?」一馬がハルに聞いた。


「ああ、俺もそう聞いた。良かったな!」


「後なお前が居ない間、俺の人気は急上昇だぜ!でもお前の客まで一人じゃ見きれねえよ!早く病気治して、店来いよ。女分けてやるからさ。」ハルは笑いながら言った。


「…何言っちゃってんだ…お前に分けてもらわなくても、俺の女は腐るほどいるつーの…ゴホッゴホッ」一馬がせき込んだ。


「大丈夫か?ほら、寝ろ。早く治せよ。また明日来てやるから」

ハルはそう言うと病室を出た。


ハルはしゃがみこみ泣いた。


二人は一馬に嘘をついた。一馬が死ぬなんて信じたくなかった。



ハルは次の日もその次の日も、毎日一馬の病室に行った。


一馬が帰ってきた時の為に仕事にも手を抜かなかった。


ブーブー。ブーブー。

控え室にいたハルの携帯がなった。百合からだった。


「おう、百合」ハルが言った。最近は一馬の事と仕事の事で頭がいっぱいで、百合にはほとんど連絡をしていなかった。



「ハル様。次はいつお会いできますか?お話したい事がございます。」電話ごしの百合が言った。

「わりい、百合…俺今お前にかまってる時間ねぇんだ。また連絡する。」ハルは電話を切った。


百合にもこの時、大変な事がおこっていた。






「百合…お前私の妻になれ。そうしたら、店の一番にしてやる。」百合の店の社長が、百合を社長室へと呼び、言った。


「社長様。申し訳ございません。百合は心に決めた方がおります。」百合がはっきりと断った。


「それはあのガキの事か?見た事あるぞ。あのガキホストらしいじゃないか。」社長がハルの事を言った。


「はい、そうでございます」百合は無表情で答えた。


「ホストなんて五万とこの世にいる。いつ落ちるか分からんぞ。私の妻になれば将来は保証されたようなものだ。毎日贅沢できるぞ。」社長は美人の百合を自分のアクセサリーとして飾っておきたかった。


「社長様。申し訳ございません。」百合は頭を下げ断った。


「私がここまで言ってるんだ!それでも断る気か!」社長が怒鳴る。


「……」百合は下を向く。


「そうか…やっぱりお前も頭の悪い女のようだな。こうゆうバカは体でしつけるしかない」そう言うと社長は百合を押し倒し、服を破いた。


「社長様!おやめ下さい!キャー」百合は必死に抵抗した。


が無駄だった。社長は百合を無理矢理襲った。


それから、百合は社長室を出ると、涙を拭き、呼吸を整え、ハルに電話した。


「ハル様。次はいつお会いできますか?お話したい事がございます。」

百合はハルに助けを求めた。



そんな百合を知らず、ハルは忙しいと言って、電話を切ってしまった。


百合はハルと話ができなくて、とても心細かった。


それから、社長は暇があれば百合を社長室へと呼んだ。その度に百合は泣きながら社長室を出ていった。







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