百合の奪還②
三人はリムジンへ急いで駆け込み、出発させた。
「百合…ごめん…あの時…俺がもっとお前の話聞いてれば…あいつなんかと…」
「ハル様!」百合がハルに抱きついた。
「ハル様!もういいのです。そんな事はどうでもいいのです。もう百合の事離さないで下さい!ハル様のおそばにいさせてください!」百合が泣きながら言った。
「ああ…もう二度と離さないから。」ハルも百合をギュッと抱きしめた。
「ハル様…」
「百合…愛してる」
二人は長い間抱きしめ合っていた。
「はっくしょん!」もう耐えられなかった。先輩たちのいい場面をなるべく邪魔しないように静かにしてようと思ったが、どうしてもくしゃみが出てしまった優羽。
「あ。」ハルと百合が優羽を見て同時に言った。二人の世界に入り、優羽の事をすっかり忘れていたのだ。
「すいません。どうぞ続けて下さい。」優羽がホント申し訳なく言った。
「コホン。」ハルは急に恥ずかしくなり、百合を抱きしめた手を離し、横に座らせた。
百合も恥ずかしそうだった。
三人は少し沈黙になった。そして、同時に笑った。
「ハルさん、良かったですね」優羽が言った。
「あぁ、優羽のおかげだな」ハルが優羽に優しく笑いかけた。
「いえ、俺は何も」優羽が言った。
「でも、最初から百合さんの事、奪えば良かったじゃないですか。そしたら、ハルさん土下座なんて…」優羽はハルに土下座をさせたあの男が憎かった。
「ああ。百合が素直じゃねぇんだよなぁ〜。最初からハル様好き〜ハル様抱いて〜って言ってくれればよかったんだ。」ハルが言った。
「そんな事言ってません」百合が無表情で強気に言った。
「あれ?そうだっけ?何て言ってたっけな。もう一回言ってみて。」ハルは百合に愛してると言わせようとしていた。
「もう言いません」百合はまた無表情で言った。
「な?素直じゃねぇ〜だろ?」ハルが優羽に言った。
優羽は笑った。
「あいつに脅されてたんだな、百合」ハルが真剣な表情になった。
「…」百合はコクリと頷いた。
「あの人、きっとお店を消しに来ます…そうなったら、みんなが…」百合が下を向く。
「安心しろ百合!その事は俺に任せろ!もうぺーぺーの俺じゃねぇ」ハルが百合に言った。
百合は何も言わず、ハルの手を握った。
優羽はハルを見た。何かハルに考えがあるようだった。
ハルの顔は自信に満ちていた。
優羽は二人の姿を見てほっとした。