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ハル病院

昨日の幸せ気分に浸りながら控え室にいた優羽は「いかん、いかん」と気持ちを切り替え、仕事に集中する事にした。


ガチャリ。扉が開きハルが控え室に入ってきた。

「おはようございます。ハルさん」優羽はハルの体調が良くなり、先輩が出勤してきて嬉しくなった。


「うっす」ハルも優羽を見て挨拶した。


「お前、昨日はどうだった?うまく行ったか?」他の人に聞かれないように、ハルが優羽の耳元でささやいた。


「うまく行きました。ありがとうございます。」優羽もハルの耳元でささやいた。


「やったか?」ハルがまた小声で言った。


「一回目のデートでやるわけないじゃないですか。」優羽も小声だ。しかし、さっきよりも強い口調だった。


「ん?そうか?」ハルは「やってないのか」と言う感じで答えた。


「そうですよ」優羽はまた強い口調だった。


「おい!テメェーふざけんじゃねえぞ!」急に同じ控え室にいたホストが大声を出した。


ハルと優羽は声の方に顔を向けた。

すると、胸ぐらを掴み二人でにらみ合っていた。どうやら喧嘩しているみたいだ。

周りにいたホスト達も何事かと集まり始めた。


「何してんだよ!どうしたんだよ!」とハルが喧嘩の仲裁に入り、二人を引き離した。


「こいつがなぁ!俺の女に手出しやがったんだよ!」今にも殴りかかりそうになりながらハルと同期のホストが言った。それをまたハルが止めた。


「はぁ?手出したからって、のこのこ付いてくる女の方がわりいだろ!

テメェーに飽きてたんじゃねぇ〜の?」最近他の店から移動してきたハルより年上のホストが言った。このホスト、いかにも自分がかっこ良いと思ってるホスト。いわゆるナルシストだ。


どうやら、女の取り合いでもめているらしい。


「二人とも落ち着けよ」ハルが二人を引き離しながら言った。


「お前ら、女の事でいがみ合ってみっともねぇ〜ぞ!」ハルが二人に言った。


まだ二人は睨み合っている。


「あ〜めんどくせぇ、じゃ、その女お前にやるよ。俺他にもいるから」ナルホストが憎たらしく言った。


「はぁ?ふざけんなよ。テメェ何様だよ」とハルの同期ホストがまた殴りかかろうとした。


「おい、やめろよ」ハルがまた止めた。


「あ〜あ、いい子気取りですか?」ナルホストがハルに言った。


「あ?」ハルはナルホストを睨んだ。


「お前、社長の息子らしいな。おまえが人気あんのって裏でなんかやってんじゃねえの?まぁ、ボンボンだし、金さえやれば女はいくらでも寄りつくよなぁ?女は金が大好きだからな」ハルはまだナルホストを睨んでいる。


「おい、てめぇ何言ってんだよ」優羽がナルホストを睨みつけながら言った。


「優羽、いいから、ほっとけ」ハルが優羽を止めた。


「あぁ、こいつか。ハル様がかわいがってる後輩ってゆうのは」ナルホストは優羽の事を見ながら憎たらしく言った。


「ボンボンの考えてる事は良く分かんねぇなぁ!このガキの何がいいんだか」また優羽の事を見ながら言う。


「お前、ハルさんに嫉妬してんだろ。」優羽がナルホストに言った。


「はぁ?嫉妬?するわけねぇ〜だろ。それよりテメェその口の効き方気にいらねぇなぁ。年上には敬語を使えって、パパとママに習わなかったのかな〜?あぁ、そうか、お前って親居なかったんだっけ」ナルホストが言い終わるか終わらないかの時に、ハルがつかみかかりナルホストをぶん殴った。


「てめぇ、調子こいてんじゃねえぞ!」ハルはナルホストを殴り続けた。

「てめぇこそ、調子乗ってんじゃねえぞ!ボンボンが!」ナルホストも負けてはいなかった。


「ハルさん!」優羽は必死でハルを止めた。


周りで見ていたホストも止めに入ってきた。


でも、二人を止めるのはなかなか難しかった。


ボーイ達も何人か騒ぎに気がつき駆けつけた。


「何の騒ぎですか!?店内まで聞こえてますよ!」一人のボーイが言った。

それに気付いたハルは喧嘩をやめた。


ハルがナルホストに馬乗りになり有利な体勢だった。ナルホストは顔中血だらけになり、床に転がっていた。


「テメェ、二度と俺の前に現れんなよ」ハルがナルホストを睨みながら言った。そして、控え室を出て行った。



「この店でハルさんに嫌われたら、もう終わりだな…」


「お前さ、もうこない方がいいぞ、次は殺されるぞ」見ていたホストがナルホストに次々に言った。


優羽もハルの後を追って控え室をでた。


優羽はハルがどこにいるのか探した。

「ハルさん、ここにいたんですか。」


ハルは店の裏にあるゴミ捨て場に座り、煙草をふかしていた。


「あぁ、優羽か。ミイラ取りがミイラになっちまったぜ俺」笑いながらハルが言った。


優羽は笑わなかった。


「お前、平気?」ハルは優羽が言われると一番つらい事を言われた事を気遣って言った。


「…」優羽は何も言わなかった。


ハルの額から血がたくさん出ていた。


優羽は涙をボロボロ流した。


「えっ?!大丈夫か?お前殴られたか?もしや、俺殴った?」ハルが優羽が泣いているのを見てうろたえた。


「違います…ハルさん…俺の為に…すいません」優羽は震えながら言った。


「ん?あぁ、体が勝手に動いただけだ。気にすんな」ハルは優羽の頭をポンっとたたいた。


優羽は、自分の事で本気で怒ってくれる人がいてとても嬉しく、とても心強かった。


「あいつ、俺様の顔ボコボコ殴りやがって。あ〜あ。これじゃ店出らんねぇな。」ハルが顔をさすりながら言った。


「よし!キャバ行くぞ!優羽!」ハルは笑顔で優羽に言った。


「はい!」優羽も笑顔で答えた。


「でもその前に病院行きましょう。」優羽が言った。


「行けるか、そんな所!恥ずかしい」恥ずかしいとごまかしているが、ハルは病院が大嫌いだった。もう、病院の雰囲気、匂い、医者、見るだけで何か痛い事をされそうだ。


優羽は無理矢理ハルを病院まで引っ張って行った。

「優羽君、やめましょうよ。僕大丈夫ですから」ハルが何だか変な言葉使いで優羽を説得していた。

二人は待合室で呼ばれるのを待っていた。


「大丈夫ですよ。ハルさんって以外と恐がりなんですね」優羽が言った。

「あ?お前今なんつった?あぁ?」いつものハルになった。


「弥生さ〜ん、中へどうぞ」看護師がハルを呼んだ。


「ハルさん、呼ばれましたよ」優羽がハルをこずいた。


「…あぁ、今頃キャバクラにいる頃だったのに…」ハルは上を見上げていった。


「ほら、早く」しょうがなく優羽も診察室へと同伴した。


「あららら、なんでこんなに怪我しちゃったの?」年寄りの医者がハルの顔を見て言った。


「あの…その…」ハルがもじもじしながら言う。

「なんか転んだみたいです」優羽が耐えかねて答えた。


「すごい転び方したね。」医者は転んだのではなく喧嘩だと分かっているようだった。医者は傷を見れば大体分かる。


「他にはどこか打ったとことかは?」医者が聞いた。


「なんかこの辺痛いです」ハルが鎖骨の辺りをさわりながら言った。


「ちょっといいかな?」医者がハルの痛いと言った所を触った。


「い〜!!」ハルが飛び上がった。


「あ、これ折れてるね」医者が簡単に言う。


「骨折ですか!?」優羽が驚いて聞いた。


「骨折です、一応レントゲン撮りましょう。あとね、額の所、これパックリ言ってるから縫うね」またまた医者が簡単に言った。


「縫うんですか?!」またまた優羽が驚いた。


ハルは目をつぶり、青ざめていた。


「優羽…俺…死ぬ…」ハルが言った。


「大丈夫。すぐ終わるから」医者はカルテに何か書き込みながら言った。

それからしばらくして処置が終わった。医者は入院した方が良いと言ったが、ハルは断固として拒否したので、家で療養し、病院に通うとゆう事で話しはまとまった。


「ハルさん、すぐ終わって良かったですね」帰りのタクシーの中で、優羽がハルに言った。


「はぁ、また行かなくちゃなんねえのか。あのナルホストめ」ハルはぶつぶつ文句を言い続けた。

しかし、優羽は自分の為にこんな傷をおってしまった先輩に申し訳ないとゆう気持ちと、この人にずっと付いていこうとゆう気持ちになっていた。



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