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16話

塾の授業後、俺は1人で駅のホームへと向かう。暗い中一歩一歩踏み出しドボドボと帰る。

昨日、そして今日の事を思い出しながら。




「私、君の事好きになっちゃったから。」


昨日、あの木下りんごに告白された。

ちょっとほっぺたを赤らめて、俺の左腕をそっと両手でさわりながら。


嬉しかった。

本当に嬉しかった。


でも、俺は、、、



『めっちゃ嬉しいです。でも、俺好きな人がいます。』


別に好きな人なんていない。

いないのに。


ふっと、佐藤怜の顔が浮かんだ。


そして、ほんの一瞬でりんごさんの表情が変わる。

恋をした少女のような顔から目の前の僕を嘲るような顔に。


「なに、真面目に受け取ってるの。

私があんたなんかの事好きなわけないでしょ。

ただ、佐藤と仲良くしてたから奪ってやろうと思っただけ。

次、連絡してきたら、ストーカーってマネージャーに言うから。

二度と連絡してこないで。」


こっわー。木下りんご怖ぇーー。


仲良くしてもらっていたの、めっちゃ嬉しかったです。

かわいいし、おっぱいデカいし。

一緒にご飯行って、喋って楽しいし。

佐藤さんとはぎこちないけど、りんごさんとはすごい楽しかった。



それなのに。

仲良くなれたと思って嬉しかったの俺だけなのかよ。


ずっと、悲しさと悔しさが渦巻いて俺の心の中で回る。

胸がずっしりと重くて苦しい。


昨日の夜もりんごさんの言葉が脳内で繰り返されて全然眠れなかった。


朝になったら少しは楽になるのかなと思った気持ちもまだ悲鳴をあげている。


そうして、女性不信になりそうな俺は半分死にながら一日を過ごした。

多分ずっと、ぼんやりしていたのだろう。


「なーなー、響ー。お前、ずっと死んでるやん。だから、内臓売らしてくれよ。」


布川の軽口で少しは気持ちの整理がついたのかもな。


そうして、肩を落とし歩いてる今に至る。


「山本くん、その、あの、おめでとう。良かったね、美希さん、えっと、りんごさんと付き合って。」


名前を呼ばれて振り返ると、暗いからよく見えないけど少し離れた所に佐藤さんがいる。


「これからも、、、

友達としてはよろしくしてね。

あと、、、

一緒に帰るのもやめないと、、、だね。

いつも、帰り道楽しみにしてたよ。

ありがとう。」


『付き合ってないぞ?』


「告白されてるの見ちゃったんだ…ごめんね。


べっ別にSNSに晒したりしないし、誰にも言わないから大丈夫だよ!」


『あの、俺、りんごさんに遊ばれてた。

佐藤さんと仲良くなれて、りんごさんとも友達になれると思うとか何言ってるんだよ、この勘違い野郎って感じだよな。


俺みたいなしょせんモブの奴が。』


「別に付き合ってるとかじゃないの?」


『うん。』


「あと、山本くんはモブなんかじゃないよ。

私にとっては、あのー、、、助けてくれた時、、、ヒーローみたいに思えたよ!

だから、そんな悲しい事言わないでよ!」


そう、泣いたような声で絞り出すように言ってくれた佐藤さん。

思わず俺も涙が出てくる。

人前で泣くとかいつぶりだろう。

この子といる時はいつも素の自分でいられる。

普段出すのは怖い自分を受け止めてくれるからかな。


『あー、マジでありがとな!マジで元気でた。お礼にアイス奢るわ。』


そう言って駅とは反対方向の佐藤さんの方に足を進める。


「来ちゃダメ!今の顔見られたくない!」


そう言って、俺はなんか近づきかけて止められてる状況になる。

そういえば、佐藤さん、初めから泣いた震えた声だったよな。


女ゴコロってむずすぎだろ。

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