争いをなくすには……
「どうして水の中の生き物は一種類しかいないの?」
僕は夏休みの自由研究で≪生物の多様性≫についてまとめることにした。
鳥にも犬にも猫にだっていろんな種類があるのに、水の中には一種類しかいない。それが不思議だったから。
ただ、ちょっと遊びすぎちゃって、おじいちゃんに手伝ってもらっている。
「おじいちゃんが子どもの頃は、人が増えすぎていてな。貧しい国では特に深刻で、食べ物を奪い合っていたんだ」
今では想像できない事だけど、おじいちゃんが言うならきっとそうなんだろう。
「争いを止めるためにはたくさんの食べ物があればいいんじゃないか、と考えて、プラナリアの遺伝子を魚に入れる実験をしたんだ。他にもいろいろ遺伝子を詰め込んだが、重要だったのはプラナリアだ。切っても治るし、勝手に分裂して増えるしな」
「なんで魚だったの?」
「魚をたくさん食べたかったから。実験は成功。どんどん増える魚。食べ物はたくさんの人に届くようになって、餓死で死ぬ人はいなくなった。ただ、食べ残されるようになって、それを海に捨てる馬鹿がいたもんで、繁殖しすぎて他が絶滅してしまったんだ」
「ふーん……ケンカはなくなったの?」
「いや、残念なことに別の事で争い始めた。宗教とか人種とか、違うことで争うからな。手に負えんわ」
おじいちゃんは肩をすくめて煙草に火をつけた。
煙がこっちに来る!撤退!
「争いを止めるならやっぱり人にしとけば良かったか。みんな同じなら争わんだろうしな」
そんな声を背に、僕は研究室から出ていった。
テーマ
「死なない」×「魚」
→再生力がすごくて死なない。プラナリアみたい。
→繁殖力やばそう。食料問題解決できそう。
→食料の奪い合いがなくなった程度で争いってなくならない気がする。