第六百五十三話『浮かべにゃいのにゃん』
第六百五十三話『浮かべにゃいのにゃん』
《にゃあんせ、忙しかったんにゃもん》
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『とある異世界』
「では」
『身を捨ててこそ、
浮かぶ瀬もあれ』
「とかいうことわざが、
あるらしいが……」
『想い出した』
「なにを、でしょう?」
『川底の調査』
「なるものを、
オレがやらされていた際、
……いや。
今でも時折、
頼まれてはいるが、
まぁそれは、
どうでもいいとして。
あたかも塔のような、
……そう」
『水面を超えて突き出ている』
「といった巨大な岩が、
数多く見られた。
もちろん、
何事もなければ、
それで問題はない。
しかしながら……」
『単なるぐう然か?』
「それとも」
『オレの運が悪いのか?』
「理由は今なお不明だが、
飛びこんで、
いくらも経たないうちに、
まるで、
ねらいすましたがごとく、
これらのどれか一つが、
岩崩れを起こして」
『浮かぼうにも浮かべず』
「どころか」
『埋没』
「な目にも、
しばしば、
あわされた。
本来であれば、
保守空間の任務時における、
災難のため」
『すぐに、
回収しなければならない』
「はず、なのだが」
『なにしろ、
忙しかったものですから』
「を理由に、
そのまま忘れ去られ、
いつまでも、
ほったらかしにされた。
ミアン殿たちが、
オレを遊びに誘うため、
お前に声をかけなければ、
おそらく今も。
……なぁんてケースは、
一度や二度じゃなく、
ざらにあった、と」
『なっ。レミロ』
「ミロネ……はあぁ。
——と、ため息を、
つくしかありません——」
『昔の話』
「を持ち出して、
ひがまれても」
「レミロ」
『ざらにあった』
「といったはず。
オレの記憶が正しいのなら、
ここ最近では、
つい」
『昨日の話』
「だぞ」
「……と、そうでした。
すみません」
『なにしろ、
忙しかったものですから』
《んにゃら、しょうがにゃいのにゃん》




