第六百五話『根性(こんじょう)の別れにゃん』
第六百五話『根性の別れにゃん』
《きっと、どっちかが間違ってるのにゃん》
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「とにもかくにも、よ」
『なぁんもなかった』
「あなた、なのに、
今や、ここ」
『霧の都』
「の長代理。
でもって、
将来、長となるのも、
決して夢じゃない、
ときたもんだ、よね。
それもこれもすべては、
ありとあらゆる」
『根性』
「を凌駕する、
と伝えられる」
『ど根性』
「という名の」
「あなたの」
『根性』
「が引き寄せた賜物。
これあるからこそ、
あなたは認められたの」
《にゃあんとも、ややっこしい『いい回し』にゃん》
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「そう。
あなたにとって、
なくてはならないものよ。
なのに、
ああ、
それなのに、
それなのに」
『根性の別れ』
「だなんて。
これが、
悲しくなくって、
なにが、
悲しいの、
って泣き叫ぶくらい、
悲しいに、
決まってるじゃない」
「……あのね、ミスト。
アタマ、大丈夫?
ほら」
『霧の都』
「特製のミルクでも飲む?」
「……なんとなく」
『ちっちゃいちっちゃい幼児』
「扱いされてる気が、
しないでもないのだけどぉ。
でもまぁ……ありがとう。
フシギね。
妖精なのに」
『ちょうど、
ノドをうるおしたかったの』
「なぁんて時があるなんて」
ごくごく。ごくごく。
『ああおいしい』
《はっ! ミルクを飲むの、忘れてたのにゃん!》
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「せぇっかくのかく、
にミーにゃんを説得して」
『ひと休みの涼み』
「をしてるっていうのにぃ。
いっくらネコにゃからって」
『忘れっぽい』
「にもほどがあるのにゃん。
……と、そうにゃ」
『今からでも遅くにゃい』
「番台に、
ちんまり、
と座ってる」
『今はネコ姿のミムカにゃん』
「に頼んで」
『豊かにゃ自然に育まれた』
「植物から造られたミルクを、
いたにゃいてきて、
もらうのにゃん」
『にゃっ、ミーにゃん』
「って……」
ごくごく。ごくごく。
「ミーにゃんミーにゃん。
あんた、
ウチに黙って、
にゃに飲んでんのにゃん?」
『えっへん!』
「なにを隠そう」
『豊かな自然に育まれた』
「動物。すなわち」
『永遠なる神秘の母ネコ』
「と誰からも愛される」
『ミルクネコ』
「のおチチをしぼって、
採取した」
『動物性ミルク』
「なのわん。
のぼせてたアタシに、
やさしくもミムカんが」
『はい、どうぞ』
「って、
差し出してくれたのわん。
どぉ、ミアン?
うらやましくって、
うらやましくって、
しょうがないんじゃ、
って……」
『にゃあるほろぉ』
ごくごく。ごくごく。
ごくごく。ごくごく。
ごくごく。ごくごく。
『こらあぁっ!』
「どこにでもありそうな、
ミルク瓶に、
入っているからって、
アタシに断わりもなく」
『気軽にホイホイ』
「ってな調子で、
立て続けに飲みやがって、
って……うわうわうわわん」
『まもなく三本目も空っぽ』
「にしてんじゃないのわん。
そもそも、
ミルクネコのミルクはね」
『超伝説級ミルク』
「って評価されるくらい、
すっごいもんなのわん。
なもんで、
ミアンの言葉じゃないけど」
『今からでも遅くないのわん』
「きぃっちりのちり、
と」
『アタシの分は、
残すのわぁん!』
《コクがあっておいしいもんで、つづくのにゃん》