第六百四話『さよにゃらにゃん』
第六百四話『さよにゃらにゃん』
《ぐすん。泣いてはいけにゃいのにゃよぉ》
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「じゃあ」
『ドナ。さよなら』
「……ねぇ、ミスト。
あなたって」
『外の世界』
「に出かける時は、
必ずそういうわね」
「って、
なにあきれたお顔で、
しゃべってるのかしら?」
「あきれてる、
っていうよりも、
……そうね」
『違和感』
「を覚えてる、のほうが、
ぴぃったり、かもね」
「あら。おかしいかしら。
じゃあ、あらためて」
『ドナ。ただいま』
「もっと、おかしい、って」
「よね。
わたしもそうだと思ったわ」
「んもう、ミストったらぁ。
わたしさまが、
いいたいのはね」
『さよなら』
「じゃなくてもいいでしょ、
ってこと。
キラいなの。
なぁんか」
『今生の別れ』
「みたいな悲しみを、
含んでいるようで」
「判るわ」
「判るの?
あなたでも、
この、
しんみり、
とした気持ちが」
「そりゃあ判るわよ。
当たり前じゃない。
長年、
連れそった親友なんだし。
これといってなぁんの」
『とりえ』
「もない、あなたが」
『その他大勢』
「よりも目立たない、
あなたが」
「ちょっと待ってよ」
『その他大勢』
「よりも目立たない、って、
それじゃあ、
わたしさまって何者なの?」
「そうねぇ。
……だったら」
『おまけ、その一』
「とか?」
「あのね」
「ダメなら」
『おまけ、その二』
「とか?」
『いい加減になさい!』
《んにゃ。今日の温泉はとてつもにゃく、いい湯加減にゃん》
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「今ウチとミーにゃんはにゃ」
『温泉の森』
「の岩風呂に、
つかりすぎてにゃ。
こうして水面に、
ぷかぷか、
と」
『あお向け』
に浮かぶのが、
精いっぱいにゃんよ。
……って、
ミーにゃん。
あんた、
聞こえてんのにゃん?」
「聞こえてんのわん。
んでも」
『うつ伏せ』
「に浮かんで」
『土左衛門』
「となるよりは」
『はるかにまし』
「なぁのわん」
「にゃら、どうあっても、
風呂から上がって」
『ひと休みの涼み』
「をしにゃいの?」
「うん。
いっくら、
お顔も身体も」
『真っ赤っ赤』
「に、ゆだってるからって、
でもって、
どアタマが」
『ぼおぉっ』
「と、のぼせてるからって、
約束どおり、
ミストんが来るまでは、
なんとしたって、
耐えてみせちゃう。
……そう」
『ここから逃げてたまるか』
「なのわ」
くるりっ。
「うつ伏せにゃん。
とうとう意識を失った、
って」
くるりっ。
『にゃにゃんと!』
「あお向けに、
戻ったのにゃん!」
『ぷはあぁっ!』
「あんちくしょう。
温泉のお湯を」
『お汁』
「として飲んじゃうくらい、
なにがどうなってんのか、
もはや、
さぁっぱりのぱり、
な次元にまで、
達しちゃったんだけどぉ。
んれでも、
なにがなんでも」
『負けてたまるか』
「なぁのわぁん!」
《にゃあんて奇跡を目撃したもんで、つづくのにゃん》