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中学生に戻った俺は学園一の美少女の自殺する過去を変え未来に戻ったら彼女と結婚していました。

中学生に戻った俺は学園一の美少女の自殺する過去を変え未来に戻ったら彼女と結婚していました。

作者: 社畜豚




「行ってきまーす」



返事なんて来ないの分かっていて扉を閉めた。


俺の名前は入江イツキ。

27歳童貞フリーターいわゆる負け組だ。

コンビニバイトで「すいませんすいません」と謝る日々。


大学も行かず起業したが、会社が火災に遭ってしまい倒産した結果、多額な借金だけが残ってしまった。

借金返済のために働いて壁の薄いボロアパートとコンビニを行き来するだけの日常。

はっきり言って地獄だ。



「……はぁ」



信号が青になったので渡ろうとした瞬間、トラックがこちらに突っ込んで走ってきた。運転席を見るとトラックの爺さんは眠っている。


ああ、これ死ぬなと思った。


同時にまぁいいかとも思った。生きててもいいことなんて一つもないし。

そう思って目を閉じた。すると浮かんだのはある女の子の笑顔だった。


あ、そうだ。たった一つ自分の人生に後悔があったな。

椎名小鳥。学校一の美少女と呼ばれアイドル的存在だった。

中学生だった頃、好きだった女の子。人生で初めて告白して無惨に振られた。


後悔は告白して振られたことではない。



自殺してしまった彼女に何もしてやれなかったことだ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



気がつくと制服を着た女の子が俺を見上げていた。

幼顔で栗色のショートボブに可愛らしいヘアピン。くりっとした瞳をしている。

あぁ、そうそう。椎名小鳥もこんな顔だったなぁ。



「はぁ? ことりのことが好き? ちょっと優しくしてたからって自分にもチャンスがあると思ったの? 気持ち悪い」



目の前の女の子は嫌悪感丸出しの表情で吐き捨てるように言い放った。



「……え?」



その顔、その声、間違いない。椎名小鳥だ。

中学の時自殺してしまった椎名小鳥が目の前にいた。



「……椎名……小鳥?」


「……はぁ? あんた頭大丈夫?」


「え? なんだこれ?」



てういうか俺も制服着てるんだけど!? 

ここ学校か? 

え? 何で?


椎名は混乱する俺を見て何か話しかけようとしたところで



「椎名さーん部活始まるよー」



部員に声をかけられた。



「はーい!! ことり、今いきまーす!」



彼女はそれに対し、先ほどとは反対の甘ったるい声で返事をして笑顔で走っていった。



「ちょっと待ってくれ!」



思わず呼び止めてしまった。

椎名は何も言わず立ち止まり、くるりとこちらを向いた。



「何で……俺に優しくしてくれたんだ?」



ずっと疑問に思っていたことだった。



「別に、ただ。ことりはああゆうのが嫌いなだけ。ことりはあんたのこと嫌いじゃなかったし。困ってる人を助けるのは当然でしょ。そもそもあんたいじいじし過ぎ。だからいじめられるの。

もっとシャキッとすれば?」



じゃ、と手を上げて立ち去っていく椎名の後ろ姿を呆然と見つめる。


しばらくしてやっと冷静になってきた。

そうだ。確かこんな風に振られたんだった。


中学3年の頃俺はクラスからいじめられていた。靴や物を隠されたり、意味もなく殴られたり。みんな見て見ぬふりして誰も助けようとしなかったし、気にも止めなかった。


だけど、椎名小鳥だけは変わらず接してくれていたんだ。

隠された靴とか一緒に探してくれたし、筆記道具や教科書とかも進んで貸してくれた。



「……そうだよな」



今思えば椎名のいう通りだ。やさしくされたからって舞い上がって、ワンチャンあるかもって当時は思ってた。

多分、全部見透かされてたんだろうなぁ。



「って。何で死に際の走馬灯でこんな思いしなくちゃならないんだよ」



俺は神様を恨みながら空を見上げる。

そういえば、こんな漫画や小説見たことがあるなぁ。これっていわゆるタイムリープって奴なのだろうか。



「ははっ。まさかな!」



自分の考えた仮説を自分で笑いながら俺は帰っていった。

いつ、この走馬灯は終わるんだろうと思いながら過ごしていたら1日経ってしまった。


起きて、制服に着替え、登校する。10年以上前にくりかえしていたルーティンをまたやっている。

そういえば、3年2組だったよな。


朧げな記憶を頼りに教室に着くとそこには信じられない光景が広がっていた。



「やっぱり。りさのいう通りだったねー? 椎名さんめっちゃぶりっ子だったじゃん」



クラスのカースト上位のりさというが楽しそうに話す。りさの手にはスマホがあり、俺と椎名との告白の様子が流れていた。


撮られてたのか……


それに対して椎名は真っ青でひどく怯えた表情をしている。



「あ、入江くんじゃーん。かわいそうに頑張って勇気出して告白したのにあんなひどいこと言われちゃって大丈夫―? ほんと性格悪いよねー?」


「ほんと俺ショックだなぁ〜ことりちゃんのこと好きだったのによぉー俺らのことも影で悪口言われてるんだろうなぁ〜」



吐き気がするほど薄っぺらい言葉に「は?」と返してしまう。

次々とクラス中のみんなが辛かったなとか大丈夫か? とか気安く声をかけてきた。


俺をいじめていた癖に、無視していた癖に。


そうだ。この時からだ。いじめの対象が俺から椎名になったのは。

椎名小鳥は男子からはモテたが女子には嫌われていた。

彼女は典型的なぶりっ子で、自分が可愛いと自覚しているタイプだった。


どちらかというと、俺を振った時の椎名の方が本性に近いのかもしれない。


始業のチャイムが鳴り響き、先生が来る前にみんな席に着いた。


授業中、ひそひそと笑い声がする。見るとスマホを隠しながらいじっていた。ラインで椎名をどうするのか話しあっているのだろう。


昼休みになると椎名はいつも数少ない女友達と一緒にご飯を食べていたが、その女友達は椎名に近づこうともしなかった。



「…………ッ」



ガタ! と立ち上がり弁当を持って不安が混じったような顔をして女友達の所にいった。



「お、お弁当一緒に食べよ?」



椎名はできる限りいつも通りの天使のような笑顔で言った。その声は震えている。



「……ごめん。椎名さん。もうあなたの居場所はここにはないの……男の子と一緒に食べたら? 人気者でしょ?」


「っ!」


「あははは!! 超面白い!! センスあるね!」


「ちょっと男子ぃ〜ひとりぼっちの椎名ちゃんを仲間に入れてあげなよ〜」



「えーぶりっ子はちょっと……」



りさは愉快そうに大声で笑う。それに続き悪意のある笑い声が教室を埋め尽くす。



「ッ!!」


椎名は弁当を落として教室を出ていってしまった。


椎名の裏の顔を見てクラス中と敵対してしまった。数少ない女友達や男子からも見放されてしまった椎名に味方なんていなかった。


当たり前だ。

みんな平穏な学校生活を送りたいに決まってる。

自分が標的にされるのは嫌だ。


だからみんな彼女を無視する。見えないふりをする。


先生も気づいてはいたが特に何もしなかった。気づかない振りをした。


日を追うごとに椎名へのいじめは激化していき、耐えられなくなった彼女は冬休みの前日に。

学校の屋上から飛び降りて自殺したんだ。


当時、俺は彼女に振られたのでいじめられる姿を見てもざまあみろと思い、何もしなかった。みんなと同じように見てみぬ振りをした。


じゃあ、今回は? 今の俺はどうなんだ? 前と同じようにまた見て見ぬ振りをするのか?


……ちげぇだろ。俺は……彼女に助けて貰った。なら、今度は俺が。


立ち上がり椎名の落とした弁当箱を拾い彼女の後を追いかけた。


はぁ、はぁ、あのガキどこにいるんだよっ!


中庭など学校中を探したが椎名の姿を見つからない。


教室に戻ったのか? それともトイレに篭もったとか? どちらにせよ一旦戻るか……教室に戻る最中屋上へと

続く階段の前に着いた。



「……まさかな」



自分でもないだろうなと思いつつ階段を登る。そもそも屋上の扉は鍵がかかっていて外へは出れなかったはず。そんなことを思いながらドアノブを回すと、扉が開いてしまった。



「……マジかよ」



扉の先には屋上の隅っこで体育座りをしている椎名の姿があった。

顔は伏せているため椎名の表情は分からない。



「……弁当、届けにきた」


「…………」



反応なしですか。



「……ここ置いとくぞ」



隣に弁当箱を置いた瞬間、椎名は弁当箱を払った。

それにより弁当箱は勢いよく飛んでいってしまった。



「……うざいのよ。何? チャンスだと思った? 弱ったところに付け込んで、今優しくすれば、あわよくばとか考えてるんでしょ! ほんっと男って気持ち悪いっ!」



告白の時よりも強い拒否反応。瞳の奥に強い憎悪が燃えていた。


「どうせ、私のことなんて見捨てる癖にっ」


「見捨てない。今度は」


「は? 今度は?」


「俺は椎名小鳥を見捨てない」



俺は椎名小鳥の目を真っ直ぐに見た。彼女は俺の心を探るように俺を見る。

しばらく沈黙が続いた。



「……あっそ。好きにすれば。どうせ、あんたもことりのことをすぐ見捨てるに決まってる」


「そうだな。好きにするよ」



俺は椎名の隣に座り弁当を食べた。



「お、椎名! おはよう」



とにかく椎名を一人にしてはいけないと思った。


その日から、みんなが椎名を無視する中、俺は椎名に話しかけ続けた。だけど椎名は完全に俺の言葉を無視していた。


まるで俺の存在を無視するかのように。だけどそんなことでは俺の心は折れない。

一度、人生のどん底を体験すると大抵のことでは折れなくなるものだ。


昼休みも椎名の後について、屋上に行き、弁当を一緒に食べる。と言っても椎名にとっては俺はいないような存在、黙って弁当を食べるだけだった。



「椎名! またな」



そして授業が終わって下校する時、俺は椎名にまたなと必ずいうようにした。


まぁ、それもシカトされるんだけど。


次第に妙な噂も流れるようになっていった。援交してるとか、6股してるとか、教師とも関係を持ってるとかそんな噂だ。


当時はみんなその噂を信じていたけど、まぁ改めて思うと下らない嘘だった。


それだけではない、椎名の教科書がゴミ箱に捨てられていたり、机に落書きなどのいじめが増えてきた。


俺は対策として早朝、誰よりも早く学校に来て教科書を探し出したり、倒れた机を直したり、落書き消しなどを椎名が登校するまで終わらせ、何事もなかったかのように振る舞った。


元に戻っている椎名の席を見ていじめっ子たちが困惑しているのを見るのは少し面白かった。


そんな日々が続くと今度は俺にもいじめがおこった。元の生活に逆戻りだ。しかし、そんなことはどうでもよかった。



「俺たちお似合いだってさ。いっそ付き合ってみるか? ははー」



どうせ返事なんて来ないだろうと思って冗談を言ったら



「きしょ」



すごく冷たい声で言われてしまった。内容はひどいものだが、久し振りに椎名と会話出来た気がする。

それが堪らなく嬉しかった。


まぁそれ以降、いくら頑張っても口を聞いてくれなかったけど。


12月23日終業式 この日は椎名小鳥が飛び降り自殺した日だ。


放課後、俺は屋上で空を眺めていた。綺麗な夕焼け空。彼女はこの空を見上げながら旅立っていったのだろうか。とそんな感傷に浸っていると


ガチャっと扉が開く音がする。


振り返ると椎名が驚いた表情でこちらを見つめていた。



「……やっと、どっかいったと思ったのに……」



舌打ちと共に椎名は呟く。



「椎名もこの夕焼け空を見に来たのか?」


「…………」



椎名にはあまりここにいて欲しくない。だから



「俺はしばらくここにいるけど、椎名はどうする? 一緒にこの夕焼け空を眺めるか?」



椎名が俺のことをうっとしがっているのはわかっている。だから、そんな感情を利用して彼女をここから追い出す。



「……帰る」



椎名は一言だけ言って扉のドアノブに手をかける。



「椎名!! またな! その……よいお年を!! ら、来年もよろしく!」


「…………」



椎名は何も言わず、帰っていった。


「……ふぅ」



よかった。うまくいったと手すりにもたれかかる。これで椎名の運命を変えることが出来た。


あ、そういえば



「今日も一言だけ喋ってくれたな……」



冬休みが終わり、新年最初の登校日。椎名は来るのだろうか? というかそもそも生きてるのか? そんな不安を抱えながら登校する。心臓が躍動する。



「……あ」



栗色の髪と少し小さい背中、マフラーとコートを身につけた椎名の後ろ姿が見えた。


よかった! 一気に椎名に向かって走り出した。



「椎名! あけましておめでとう!! 今年もよろしく!」



あまりの嬉しさにいつもより大きな声で椎名に話しかけた。

しまった。朝からこのテンションはうざかったか?



「……はよ」


「!!」



へ、返事をした? 椎名が? 



「……何?」



椎名は怪訝そうな顔で俺を見ていた。



「あ、ああいや……なんでもない」



しまった。あまりの衝撃で言葉を失ってしまっていた。

冬休みがあけても俺と椎名へのいじめは終わらなかった。


ただ、少し変わったとすれば椎名が俺の話に相槌をうってくれるようになったのだ。

少しだけ、ほんの少しだけど俺と椎名の関係は前に進んだ。気がする。



そして、卒業式。中学生最後の日。


卒業式を終え、みんな教室や校庭で何やらだべっている。

まぁここにいても誰とも話さないし、さっさと教室を出よう。そう思い、教室を出ようとして。



「待って」



椎名に呼び止められた。


え、お、俺に言ってるのか? 


辺りを見渡すとやはり誰も居なかった。



「あんたしかいないでしょ」



俺の様子を見て呆れたように言う。



「そ、そうだよな。すまん。それで俺に何か用か?」


「……最後だから言っておこうと思って」



一瞬言葉を詰まらせ、椎名は俺に言った。



「……今までありがとう」



微笑みながらそう言った。その一言だけでこの半年が報われた気がした。


駄目だ。泣くなっ。我慢しろ。



「さようなら」



そう言って椎名は去っていった。

その背中を見送る。椎名の背中は滲んで見えた。


この走馬灯もえらく長い間続いたものだ。最後に一通り回って帰ろうかと思い、椎名とは反対方向に歩き出した。



「…………」



『さようなら』



先ほどの言葉がどうにも耳に残る。なぜだろう胸騒ぎがする。嫌な予感がする。自殺した過去は変えることが出来たはずなのに。



『最後だから』


「……!」



まさか。


俺は振り返り、屋上に向かって走り出した。

扉を開けると目の前には手すりを乗り越えた椎名の姿があった。俺の嫌な予感は当たってしまったようだ。



「……何してるんだよ」



こちらに気づいたのか、ちらっと俺を見て、はぁとため息をつく。

近づいてくる俺の姿を椎名は鬱陶しそうな目で見ていた。


手すりの手前まで着いた。


俺と椎名の間にある鉄の手すりは心の壁のようだった。



「そんなところにいると危ないぞ」



「……本当は、冬休み中に自殺しようとした。だけど、その度あんたの顔が、あんたの声が、浮かんできて……死ねなかった」


「何度も、何度も何度も何度もまたなって言葉が……私の耳に残って消えなかった」


「だったらどうして、お前は今飛び降りようとしてるんだよ」


「……この先、生きていてもいいことなんて一つもないし。家に居ても、どこに居てもことりは一人ぼっち、誰もことりのことを見てくれない。パパもママも誰も。だからことりが生きていく理由もない。もう、楽になりたい。それにもうあんたとも……」



椎名は自分の未来に希望を見いだしていないんだ。結果、生きる気力がない。まるで未来の俺のように。



「落ちようとしたって無駄だ。お前は死なねぇよ。俺が死なせねぇ」


「……わからない。なんであんたはこんなに優しいの? ことりの体目当て? 援交してるとか言われてるもんね? あれ嘘だからことりは普通に処女だし。見返りがなくて残念でした。……だからもう放っておいてよ」



「……見返りならとうの昔に貰ってる」



そう。俺がしんどかった時、椎名小鳥だけはそのままでいてくれた。助けてくれた。笑顔で接してくれた。

それが作られた笑顔だとしても嬉しかった。


そして何より。



「……俺も死んでもいいやって思ったんだけどさ。あの時の後悔がそれを邪魔をするんだよ」



自殺した椎名小鳥に何もしてやれなかったという後悔が俺を今の俺を動かしている。



「……意味わかんない」



椎名はそう言いながら、俺の体をどんと押した。



「っ!」


思わず尻もちした瞬間、椎名は「じゃあね」と言いながら振り返り前を向いた。


飛び降りる!! そう思った俺はすぐさま立ち上がり、椎名に手を伸ばす。



「ぐっ」



間一髪、落ちていく椎名の腕を掴むことが出来た。右手に椎名の手、左手に手すりを持っている状態。


まずい、掴んだのはいいがずるっと椎名の腕がずり落ちていく。



「早く……俺の腕を掴めっ」


「もう、放してよ」



椎名はこちらを向かず、俺の腕を掴む気配が一切ない。このままじゃあ椎名がっ。


考えろ、考えろ、考えろ!! 必死に脳をフル回転させながら考える。どうすれば椎名を救える? 少しでも彼女の生存確率を上げるには?


……あ、思いついた。椎名の生存確率を上げる方法が。でもこれをしたからといって彼女が死なないとは限らない。


それに俺自身の覚悟が必要になる。でもやるしかない。



「お前は……お前だけは俺が死んでも守ってやる」



己を奮い立たすため、椎名にそう言った。そして俺は手すりを掴んでいた手を離した。



「……え」



椎名の驚いた声がした。

すぐさま椎名を抱きしめ彼女を庇うように落ちていった。直後、身体中に衝撃と激痛が稲妻のように走り視界が暗転した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




目を覚ますと目の前には白い天井があった。

薬品の匂いがする。

耳を澄ますとピッ、ピッという機械音が聞こえる。



「……!! ――!!」



横を見ると涙を流した椎名が何か叫びながら抱きついてきた。


よかった。椎名は無事なんだな。と抱きつかれながら思っていると猛烈な眠気が襲ってきた。

目蓋が重く、再び目を閉じた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「ちょっと、何ぼーとしてるの?」


「―え?」



気がつくと目の前にはエプロンをつけた女性が俺を見上げていた。

栗色のショートボブにヘアピン。くりっとした瞳をしている。



「……椎名……小鳥?」



にしてもなんだか大人びているような? 椎名小鳥を大人にしたらこんな感じなんだろうか?



「……はぁ? 頭大丈夫?」


「え? なんだこれ?」



自分の服装を見るとスーツ姿になっている。え、どうなってるんだ? 現代に帰ってきたのか?



「あんたも椎名でしょ。全く。ネクタイ結んであげるから動かないでよ」



……今こいつなんて言った?


慣れた手つきで椎名? は俺のネクタイを結んでくれている。左の薬指に指輪が目に入った。

周りを見渡すとなかなか高級そうなマンションだ。俺の住んでるぼろアパートとは大違いだな。


まさかここに住んでいるのか?



「よし、完璧。さすがことりね♪」


「あ、ありがとう?」



ふふんと子供のように自慢げに胸を張る椎名にお礼を言うと両手を広げてきた。



「……ん」



……? え、何これ? 



「まだ? 早くして欲しいんですけど」


「何を?」


「……行ってきますのぎゅーに決まってるでしょ」



目を逸らし、頬を赤らめながら椎名は呟く。


いや、それラブラブの夫婦がやるやつだぞ……椎名さん何言ってるの? 



「もういい。ことりからやる」



ぐぎゅーと椎名が抱きついてきた! う!? なんか柔らかいし、いい匂いするし、なんだこれ!? 何が起こってるんだ?



「……ねぇ」


とても甘ったるい声をしながら椎名は俺を見上げてくる。

頬を赤くし瞳はとろんとしている。



「チューもしたい……」



????? 何を言っているんだろう? この人は?



「いやそれはーむぐっ!?」



唇にとても柔らかい感触が襲ってくる。え? 椎名の顔がすごく近くにある。なんだこれ?

困惑しているとパッと椎名が離れ、机にあったお弁当箱を俺に渡して俺の好きだった満開の笑みでこう言った。



「行ってらっしゃい。あなた」










最後まで読んでいただきありがとうございます!


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面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当にうれしいです!


ご好評につきヒロイン視点の話も金曜日に投稿いたしました!!

終盤は今作の続きも書いていますのでよろしければお読みください!!


https://ncode.syosetu.com/n5643he/


さらに後日談も投稿しました!!


主人公とヒロインがいちゃいちゃする話になっております!

こちらも是非お読みください!!


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― 新着の感想 ―
>>目蓋が重く、再び目を閉じた。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「ちょっと、何ぼーとしてるの?」 すごくよいストーリーでしたが、ここの部分でいきなり一気…
[良い点] 最後の破壊力にボコボコにされました ああてえてえなあ
[一言] いいですねぇ…
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