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Ⅴ-02 ゴブリンを倒す



「さてと、行くか」


 さらに買い物をしてからシャムスをマリーに預け、今俺は南側城壁からそのまま伸びる『バラム・ディクタティカ』、通称皇帝の長城の入口に立っている。


 土魔法で身体強化を行う。詳しい理屈はわかっていないけど、そもそも体内には自分が使える属性の因子が入っているらしい。

 通常の魔法とは違う理屈でそれを活性化させるのが身体強化なのだそうだ。


「久しぶりだから、ならしながらいこう」


 目の前には草が生えている石造りの道がある。使用された痕跡がほとんど無いため、廃墟とはいえずいぶん綺麗なものだ。

 最初はジョギング程度から始め、その感覚に身体強化によるアシストを上乗せしていく。


 緩急をつけて自分の意識と肉体の間のズレを小さくしていく。

 徐々に速度を上げていき、最高速度になったあたりで、道の先に半裸の人影がいくつも見えてきた。


「ゴブリンか。なにげに集団戦は初めてだな」


 二十ジィまで近づいた所でとまって三十体ほどのゴブリンの集団を観察する。

 禿頭の横にとがった耳。頭を乗せる身体は矮躯で不健康そうに血管が走る白い肌は遠目では緑にもみえなくもない。


 彼らはこちらを見ずに崩れた壁が坂になった場所で何かと戦っていた。

 壁際からのぞくと、下にはブッシュコヨーテが沢山群れていた。


 上がってきてはゴブリンの粗末な槍に突き落とされている。

よく見れば一体のゴブリンがひときわ長い槍の先に粗末な革袋をぶら下げていて、コヨーテはそれを狙っているらしい。


「へー、ゴブリンって釣りするんだな」


 あの袋にはおそらく魔石がじゃらじゃら入っているのだろう。肉食魔獣は魔石自体に釣られても不思議じゃない。

 それでもとうとう魔石が手に入らないと理解したのか、生き残ったブッシュコヨーテたちが逃げていく。


 残ったゴブリン達は坂の下に降りてコヨーテの身体を解体し始めた。心臓から魔石をとりだして袋に投げ込んでいるのが見える。

 ゴブリンを含む魔物は魔石を使うわけでもないのに集める習性がある。

 ある地域の魔物はあまりにも魔石を集めるため、狩人が魔獣ではなく魔物をメインで探しているくらいだ。


 今知ったけど、ゴブリンは狩りの撒き餌にも使うようだ。魔物の生態も奥が深そうだ。

彼らが巣に帰るのだろう、もう一度城壁に昇ったとき、漸く俺がいることに気づいた。キィキィと何かはしゃべっているけど、当然俺には理解できない。


「ソレ! ソレェェ!」


「マセキ! ソレダ! ホンモノ!」


 前言撤回。たまにわかる事をいっている。新発見だわ。そして内容がサハギンのものと一致している事で仮説に確信が持てた。


「魔石って、やっぱり無尽の魔石だよな?」


 ステカにあった取った覚えの無い称号は、魔物にとっての称号だったのか。

 身につけた特別な魔石など覚えなどないので、俺の心臓にでも埋まっているのだろう。


「で、魔物が探していたのは魔石じゃなくて、『無尽の魔石』の方だったと?」


 いやいや、いやいやいや、ロガーさん、いくらなんでも趣味悪くないですかね? 

 LPマイナスといい、アップロードじゃなくて呪いの類いじゃないか?


 そんなことを考えたけど、いいや、もう。対集団戦の練習に集中しよう。


「敵が槍衾で突撃してきます」


 ゴブリンだって頭は使う。槍衾が有効なことくらいは知っている。


「ロックウォールで分断します」


 ざくんと逆さギロチンのように壁がせり上がり、少し遅れていた後続十体を壁で阻んだ。


 運悪く跳ね上げられた一体が壁の下に落ちていく。


「さらに逃げられないように横も塞ぎます」


 道の側面にも壁を作る。飛び降りて逃げられたら面倒だからね。

 強めの魔獣は当然として、最弱の魔物でも全部さばく自信がなければこんなことはしてはいけない。

 唯一の逃げ場である敵の方向に向かうのは当然だから。たった今彼らが突進してくるように。


「ファイアで間引きます」


 後ろに下がりながらファイアを放つ。

 レジスト出来ずにのたうつ一群無傷の一団が離れた所で二者を再び壁で分断した。

 残っているのは十体程度の火が効かず、火属性の獣魔法をつかうゴブリンだ。

 つまりこいつらには今手に持っている火属性の槍もタダの槍ということになる。


「一突きで倒さないと数で潰されます」


 身体強化した上で、槍持ちをブリーズで足止めし、剣など短武器持ちにゲイルを使って突進し一撃離脱する。

 レジストを挟みながら各個撃破を心がけ、とどまらない。

 残った二体の槍持ち達も一人ずつ、巻き上げ、スリ落として戦闘を終了した。


「うん、身体強化が使えるからサハギンの時より断然動けてるな。さて、先ほど仕込んでおいたのを開けますと」


 一枚目の壁を溶かすと目の前には焦げた死体の中に一体の無傷なゴブリンがいた。

 たぶん群れのヒーラー役だったのだろう。火を消した後、自分と他の者の回復を行っていたに違いない。

 死体に回復魔法をかけている。


「……」


 無言のまま槍で突き刺す。位階も低いゴブリンの身体は一瞬でまわりの死体以上に炭化して崩れた。

 ゴブリンにもヒーラーがいるのを忘れていたのは反省点だ。魔物は一瞬で殺しきらないといけないのに。

 すべての壁を解除したとき、目の前の十体ほどのゴブリン達は仲間達が俺の後ろで骸をさらしているのを見て驚愕し、逃亡した。



お読みいただきありがとうございます!


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