Ⅴ-01 猫をマリーにあずける
ズークじいさんの工房を後にしてからしばらくバザールで買い物をしていたが、いったん休憩しようという話になった。
場所はバザールの上、半屋上にあるカフェだ。強い日差しを防ぐひよけの下を通る風が気持ちいい。
「へー、ポエニキアまで行くんだ」
「うん、でもしばらくは滞在しようと思う。シャムスも長旅で疲れているし」
「やった! シャムスちゃん、この街を案内してあげる。聖堂とか鐘楼とか、港以外も良いところいっぱいあるし、魚料理のおいしい店もたくさんあるのよ?」
長旅で疲れてるって言ったばかりなんだけど……まあいいや。本人の自主性に任せよう。
「それにしても、ユーリは服買わなくて良かったの?」
マリーがシャムスを膝に抱えてなでながら訊いてくる。
マリーも背が高いが、シャムスも年の割には高い。なんかこう、やり過ぎじゃないかな?
「別に良いだろ。シャムスみたいに暑くてかなわないってこともないし、まだ全然着られるし」
一応自分の服を見たけど買わなかった。マントはさすがに脱いでマジックバッグに突っ込んでいる。ちなみにバッグの事はマリーには話してある。これから何度も見せる事になるからだ。
「その帝国の兵服、質は良いけどサイズが全然あってないでしょう。ブーツとジレの絞りで一見普通にみえるけど、シャツの丈が長いしウエストもぶかぶかよ?」
知ってる。シャツの裾がすぐにズボンのすそから出てきて着心地悪いし。でも仕方ないだろ?
「金が無いんだよ言わせんな」
憮然として言い返す。あ、金が無いで思い出した。
「マリー、その金を稼ぐために城外に行きたいんだけど、問題ないよな?」
「それは大丈夫だけど、城外は珍しいわね。漁場ならいくらでも海棲生物の狩りができるから陸地側に行くのは警備の軍人くらいよ?」
まあそうだろうな。でも俺の場合、陸路で隣街まで行けるか、とかいくつか確認もしなきゃならない事があるんだよ。
「だからこそだよ。珍しい魔物がいるかも知れないだろ? 複属性持ちとかがいれば良い金になる」
マリーの顔が少し険しくなる。
「一度倒したからと言って、うぬぼれると死んじゃうわよ?」
ギルドで魔石を全部ぶちまけたとき、ハーピィの双晶もマリーは見ている。
特殊個体の魔獣はイレギュラーなため、ある程度攻撃パターンがわかっている魔獣に比べて格段に狩猟難易度があがる。
マリーの忠告は確かに的を射ている。
「ありがとう、気をつけるよ」
でもお互い主張を押しつけ合うような事はしない。忠告して、返礼して、それで終わりだ。
「三日間帰らないからその間シャムスを預かってくれないか?」
「イエス! 喜んで!」
話を変えると即答でシャムスに頬ずりし始めた。シャムスはうんざりした顔ですべてを諦めたネコの様にされるがままになっている。
「図書館でこの先の街の情報をあつめておいてくれると助かる。俺は俺で《《調べて》》おくから」
「わかった」
どうやら俺が陸路の先を見に行くことも理解したらしい。こういう所は聡いな。
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どうやら相続した防具が最強っぽいんだが。
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