Ⅳ-04 魔石鑑定士
【お詫び】
一話分飛ばして投稿してしまいました。大変申し訳ありませんでした。
この文章が本来のⅣ-03の続きです。
ギルド登録自体は普通に進んだ。星遺物の前でステカの一部を開示して個人認証をすれば登録自体は完了する。それと同じ星遺物で加工された、複雑な模様の入ったドッグタグも二枚渡された。
「シャムスちゃんは正式にギルドには所属できないけど、その一対のタグはユーリが保証人、っていう意味の被保証人証明になるからね」
二人でそろって首にかける。これでシャムスも一人で街を出歩けるようになった。護衛の仕事は都市の中ではしない。肩の荷が一つ下りた気分だ。
後はレクチャーみたいなものだ。ギルドは加盟した狩人から魔石の買い取りを行うとか、狩人のランクは鉛(初級)、鉄(一般)、銅(熟練)、銀(英雄)、金(伝説)の五段階あって、各ランクに応じて引退後に恩給が支給されるとか、そういったものだ。
ちなみに金になると領地がもらえ、実質貴族になれる。もちろん伝説クラスなので、本当に貴族になったのは一人くらいしかいないらしい。
でも既にしってる事ばかりだから半分も聞いていない。
さて、早速だけど登録した目的を果たさせてもらおう。
「話はわかった。さっそく魔石の買い取りを頼むよ」
「ほんとに聞いてた? さっきから適当に相づちを打たれてた気がするんだけど」
マリーが不信感を漂わせながらも魔石を鑑定する準備をしていく。
袋を櫃から取り出し、中身をトレイに一度全部出していく。するとマリーの顔が唖然としたものに変わった。
「ちょっとユーリ、さん? この大きな魔石、一体どこで?」
シーサーペントのこぶし大、淡い水色に濁った魔石を指さしていった。
「ああ、これは売らないよ。もうすぐ連絡が来ると思うけど、乗っていた船がシーサーペントに襲われたんだ。追いつかれそうだったけど秘蔵の魔鉱をつかったから倒せた。命には代えられないからな」
エルフの刻印魔法を隠すために魔鉱をつかったと押し通す。このあたりはシャムスとも相談済みだ。
そう言いながら袋に戻そうとするとマリーが手をつかんだ。
「ちょっ、ちょっとまって! 売らなくて良いから後学のために見せて」
マリーに渡すと下から魔石を照らす白光台と設置型ルーペを使ってうなりながら見ている。
相当みてる。穴が開くほどみてる。
五分くらい見てようやく魔石を下ろした。
「ありがと、すごいもの見せてもらったわ」
これがかぶりつきかー、としばらくぼーっと見ていたので反応が遅れた。
「でもごめんなさい、討伐依頼が出ていないから魔石買い取りは出来てもギルドとして報酬は出せないの」
申し訳なさそうにマリーがいう。
だよね。出現がレアで討伐が難しい魔獣はたとえ災害級でも討伐依頼がでない。なので討伐しても報奨金はでない。
「うん、それはしかたない。国だって予算に限りがあるからね。貯金と考えておくよ」
「でも気をつけてよ? 私の鑑定では大金貨三枚、三百万ディナは下らないわ。大きさだけだったら高齢の大型魔獣の魔石程度だけど、魔力の質が陸のものとは違うし、ひび《クラック》による魔力漏出もない稀少品よ。他の魔石とは格が違うんだから他人にみられないように隠しときなさい」
そう言いながら魔石を俺の手に戻してきた。そうはいってもこの後シャムスが刻印するんだけどね。
「ほかの魔石は買い取りでいいの?」
「ちょっと待ってくれいくつか抜くから……よし、残りを頼むよ」
シャムスに刻印させる分を抜いて差し出すと、マリーがすごい手捌きで属性とグレードごとに魔石をより分けはじめた。
ルーペだけではわかりづらいものは土魔法のクレイで薄くのばして光にすかす。
シャムスがその光景に見とれている。
一般に受付嬢、と呼ばれているけれど、彼女らは正確には魔石鑑定士資格保持者だ。
魔石買い取りのプロといえる。
一瞬で見極めはじいていく手際からするに、おそらく高位の魔石鑑定士の資格も取っているんだろう。素直にすごいな。
あっというまに鑑定が終わり、二つの山がはかりにかけられた。
「百ディナ/ルム級魔石が三十ルム、千ディナ/ルム級魔石が四十五ルム、単体鑑定ではこの若草色の魔石が五万ディナ、この海棲生物の深い群青色の魔石は三万ディナ 全部で十二万八千ディナということでいい?」
すらすらと出てくる言葉にシャムスと二人で顔を見合わせてしまう。ちなみにルムはほぼグラムだ。
「その額でいい。素早いし正確だし、相当勉強したんだな」
「さっき騙されたせいで素直にうけとれないわね。それは良いとして、これは全部魔獣からとったものよね? 興味本位で聞くけど前職はなんだったの?」
やっぱりさっきの事を根に持っているらしい。鑑定の腕を褒めたのは本当なのにな。
クチをとがらせて抗議するのはいいけど興味本位で人の経歴を聞かないでほしい。
「軍人だよ。すこし前に除隊した」
実質は日雇い労働者だったけど、嘘ではない。新しいステカにも工兵科(中尉相当技官)除隊とか書いてあるし。
「ふーん。そういうことなら実戦慣れしてるってことで、ランクは鉄級第十位で登録しとくわ。一定期間同じ成績なら第一位までは自然と上がっていくからそのつもりでいてね。昇級は魔獣の暴走、スタンピードからの都市防衛とか、国への特別な功績があった時に審査されるから」
ドッグタグに情報を追加され、もう一度わたされる。
「わかった、ありがとう。それじゃ魔石がたまったらまた来るよ」
シャムスを促して鑑定室をでると、もう何組かの狩人がホールを行き交っていた。
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