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Ⅳ-02 ウェイトレスがウザがらみしてくる


「ここで休もう」


 ウェイトレスに手を振りながら透かしのはいったベンチに座る。


「飲み物はどうする?」


「店員おすすめノンアルコール」


 ぐったりとテーブルに突っ伏したシャムスが息も絶え絶えに答える。

 この世界にカフェという言葉はなくて、飲食を提供するところはみな酒場だ。酒を飲むのが基本なのでこんな注文になる。


「すみませーん。冷やした水二つとアイスマルドの原液一瓶おねがいします」


「はーい、ただいまお持ちしまーす」


 店の奥から若い女性の元気な声が聞こえてきた。


「ユーリは店員じゃない……」


 シャムスが肩で息をしながら答える。このままじゃ熱中症になるな。


「細かい事は気にすんなシャムス、日陰にはいったからもうマントぬいでいいぞ……ブリーズ」


 風魔法で乾いた空気に流れが生まれ、少し強いけど心地よい風が生まれる。シャムスがよろよろと起き上がってマントを脱いだ。


 シャムスのマントの下は針葉樹を思わせる緑の上着と漆黒の膝丈スカートだ。

 シャツにフリルがふんだんにあしらわれていて、似合っているけど非常に暑苦しい。


「飲み物が来るまでこれ食べてな。SPが回復するぞ?」


「……うぅ、すっぱい」


 シャムスが顔をしかめながらウルソの実をかじる。どうやら酸っぱいのは苦手らしかった。


 それでも口の中で転がしているうちに大分楽になってきたみたいだ。


「はぁ、日除けのためでもやっぱりマントは暑いよ」


「脱いでも暑そうだけどな」


「だよね。うーん……うーん……」


 うなってはこちらを見てやはりうなる。服を買って欲しいと願うべきかどうか悩んでいるんだろうな。俺のなかでは買うのは確定なんだけど。


「おまたせしましたー。アイスマルドでーす。大銀貨十五枚でーす」


 トレイに飲み物を乗せたウェイトレスがあからさまなぼったくりをしてきた。あったよなこういうフリ。


「お、来た。服はあとで買いに行くから、今は冷たいものを飲んで休もう。はい、小銀貨十五枚」


「おぉ、お客さんスルーですか? ではアイスマルドを注ぎますねー」


 ワインをベースにスパイスを入れて煮詰めたアイスマルドの紫が氷の中に広がっていく。

 自分のネタがすべった後、何事もなく仕事をこなすあたりにプロフェッショナルを感じていると、シャムスが口をむずむずさせている。


「服のことなら経費だよ。対象の快適さを保つことだって護衛の仕事だ」


 シャムスと俺の前にグラスが置かれたので口をつける。甘みと酸味と香辛料のバランス、なにより冷たいのがありがたい。

 ところでなんでウェイトレスが俺の後ろに侍ってるんだろう。至近距離にいられるとおちつかないんだけど。


「すーずしー……、あ、お構いなく」


 ウェイトレスはタダ乗りブリーズをしていた。

 お構いなくじゃねぇよ。遠慮というものがないな。


「でもここまでの乗船賃で五万使ったじゃない。すぐに足りなくなるんじゃない?」


 シャムスもウェイトレスはスルーすることにしたらしい。


「足りなくなるな。どれだけ節約しても四十五万ディナじゃポエニキアどころか宗教都市のハギアまでの船賃にもたりない」


 シャムスの顔を覆う不安の色が濃くなる。トマスの奴、依頼人のシャムスに行程の話はしていなかったのか?


「え? じゃあどうするの?」


 俺が四十五万ディナを持ち逃げすると考えないくらいには信頼してもらえているっぽいな。

 ステカが汚れてしまうし、そもそも人としてそんなことしないけど。


「そりゃ陸路で行きながら魔獣を倒して稼ぐよ。海の上じゃ使えなかったけど、俺が得意なのは知っての通り土魔法だ。こんどこそ道中の安全は保証する」


 本当は一抹の不安があるけど、可能性の話を今しても仕方が無い。後で確認に行かなくちゃな。


「稼げるとしてもそれはユーリのお金であって私のお金じゃないでしょ? そこはきっちりしてもらわないと気持ち悪くて私が嫌」


 なるほど、シャムスは下手な借りは作るのが嫌らしい。


「俺も狩人になって稼ぐけど、シャムスだって稼げるんだ。問題ない」


「私レベルのアレじゃ黒字にならないよ? 出来る方法があるの?」


 へえ、この年齢で経費への理解があるのか。やるな下町娘。


「それもこの街にいる間に何とかする。まずは一緒に狩人ギルドに入ろう」


「そうだよ入っちゃいなよー。今なら特典で私が着てるのと同じ服をあげちゃうよ?」


 後ろから援護射撃もされていることだし。ん?


「まだ風に当たってたのか。まあいい、涼しくしてやった代わりにハンターギルドへの行き方を教えてくれないか?」


 立ち上がるとともに、ウェイトレスが満面の笑みをうかべてクルリと回って建物の奥にむかって歩き始めた。


「はーい! ハンターギルドテーベ支部にご新規さま二名ごあんなーい!」


 なにこのウェイトレス。

 テンション高いんだけど。


お読みいただきありがとうございます!


つづきがきになる方はぜひブックマークし、物語をお楽しみ下さい!

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