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Ⅲ-10 シーサーペント(3)


「あぶねぇ……やべぇなブレイニク……」


 起き上がってみると、船の周りは一面の氷原となっていた。南国の日差しを反射してやたらとまぶしい。


「ごめん、こんな強力とはおもわなかった……」


 しばらく呆然としていると、船尾楼の手すりにぶつかって止まっていたシャムスがまぶしそうに顔をしかめながら戻ってくる。


「ところで、なにしてるの?」


「舵がやられたらしゃれにならんから放水」


 さっきから割と全力で水魔法のスプラッシュを真下にむかって連射している。舵がやられたらせっかく助かったのに漂流しなくてはいけなくなる。


「手が離せないから扉までいって船長に終わったっていってきてくれ」


 シャムスが階段を降りていく音を聞きながら遠くのシーサーペントを見つめる。動く様子はないけど死んでいるかは確かめないといけないな。眼晶も欲しいし。


 どう対処するか考えていると大人達が戻ってきた。みな眼の前の光景に呆然としている。


「うおぉ……、一面氷かこれ」


「窓から氷が追いかけて来た時は肝まで冷えたけど、安心してみれば絶景だな……」


「あれ、もしかしてシーサーペントか? がっちり凍ってんじゃねぇか。ハハ、お前らすげえな」


 恐怖から解放された力ない笑いは次第に歓声に変わっていった。


 そんな歓声の中、樽をカトラスで叩く音が響き、ざわめきは次第に静かになった。


「とりあえずの危機は去った。だが、陸につくまでは安心するな。シーサーペントは向こうで動かねぇが、本当に死んでいるかわからん。確かめに行くから腕に覚えのあるやつは何人かついてきてくれ」


 しばらく皆顔を見合わせていたが結局3人が前に出てきた。一人が火の上位まで使え、二人がそれぞれ風と火の中位を使えるらしい。


「それから残る奴にも仕事がある。舵だけはこの男が凍らせないでくれたが、船全体が氷で囲まれて動けねぇ。氷を火でもなんでもつかってたたき割れ。いつ新手の魔獣が来るかわからねぇからぼやぼやすんなよ!」


 船長の号令で皆が慌てて動き出した。水夫は縄ばしごを氷原におろし、一人が降りて足場を確認すると残りが次々と降りてゆく。皆は進行方向の船首側、船長達の一行は船尾側だ。


「お前達は休んでて良いぜ。これだけの大魔法を使ったんなら余裕ねぇだろ?」


 ああ、複合魔法を使うって話にしたんだったな。


「気にしないでくれ。俺達も結果を見ないと落ち着かないんだ」


 船長が気を遣ってくれるが、最後まで責任は持ちたいので船長についていく。


「まあ、そういうならありがてぇんだけどよ」


 シャムスもついてきたけど、向こうであの少年に魔法についてきかれるよりましだと思ったんだろう。

 シーサーペントの前まできた。ここまで来た6人は船の備品の槍を持って来ている。


「さて、どこから溶かす?」


「蛇ならクチか、目か、耳だな。溶かしてそこから槍を突き入れる」


「耳は硬くて無理だな。角が生えてる」


「じゃあ右目周りを溶かすぞ」


 魔獣は死ぬと眼球が結晶化するので生死の基準に使われる。生きていればそのまま眼球の奥にある脳を破壊できるので目を潰すのはとどめを刺す際の王道だ。


「じゃあ俺がファイアでゆっくり溶かしていくぞ。皆いざというときにそなえてくれ」


 比較的魔力が残っている船長の指示で各自が槍を構えた。気配から俺とシャムス以外は身体強化をしているのがわかる。

 しばらく火であぶっていると、向こうの眼球が透けて見えるほど顔の周囲の氷が溶けてきた。皆に一層の緊張が走り、全員が槍を構え直す。


 火属性上位の狩人らしい男が槍で注意深く目の周りの氷を割っていく。


「おお、石になっているっぽいぞ」


 男が顔に喜色を浮かべた瞬間、眼球がぐるりと回った。


 くそ、中までは凍らなかったか! 

 間近でみていた男はとびすさり、皆は槍を構え、俺は間合いを詰める。


 氷のひびが右目から左目にかけて走り、一瞬後に細く割れた氷から顎門が現れた。間髪入れずにホーシールドの先をその中に突っ込む。

「メタルアロー!」

 シールドの鉄そのものを加工して射出した。それでもタイムラグがもどかしい。


 ――――ズリュ。


「まだ動くぞ!」


 船長の警告と同時に追撃をかける。


「クレイ!」


 三本ある鉄の矢の先端をらせん状に広げ、つながっている盾を引っ張り脳をかきまわしていく。蛇の身体が痙攣し、割れた氷がつぶてとなって皆に降りかかる。

 魔獣も生き物だ。生命維持に必要な脳幹を破壊されては生きていられないだろう。やがて動きが止まった。


「——目玉が今度こそ眼晶になった。もう大丈夫だ」


 船長が確認し、俺は手を離した。盾は使い物にならないので放置だ。付与もされていないタダの鉄の盾でこんなこと二度としたくない。

 シーサーペントは動きを止め、氷原に細長い首を横たえていた。


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