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Ⅲ-07 集団の怖さ


 マセキ、魔石? 

 魔物が魔石を欲しがるのも、片言でしゃべるのも普通だけど、魔物は魔石をただ集めるだけだ。

 魔獣のように食べはしない。クワセテって違う意味があるのか? 

 わからないけど魔石を欲しがっているのは確かだ。

 でもマジックバッグの中の魔石は認識できないはず。

 襲ってくるなんてそれこそ軍の物資輸送馬車ぐらい大量の魔石じゃないと……あ。


 魔石に思い当たった思考は中断し、さっきと同じ戦法でつっこんでくるサハギンのトライデントを受け流してから踏み込んで槍をつかみつつ首を盾の先で突き上げた。

 ホーシールドの刃はないけどそれなりにとがったエッジが強引にサハギンの喉笛のおしつぶしていく。


「多いな」


 甲板には3体のシーリザードマンが這い上ってきたところだ。その右手には曲刀が握られている。速攻で盾を右手順手に持ち替え、中型ナイフを左手逆手に抜く。


「ゲイル!」


 足を踏み込んだ瞬間、はじかれたように前進する。風魔法は気圧操作が主な使い方なので瞬間的な加速・制動ができ、身体強化なしでも近接戦闘に使える。

 不意を突かれたリザードマンが慌てて振り下ろした曲刀の鍔元近くを押さえ、盾とナイフで挟み込むように手前に引き、相手の手首を切る。


「ゲァァァ!」


 リザードマンが叫ぶが構わずナイフを捨て、曲刀を奪い取りそのまま切り伏せた。

 先ほどからシャムスは後ろを警戒しつつ、他のリザードマンとの間に俺を挟むように動いている。基本を押さえてくれていて助かる。

 曲刀を手に入れたので、後はごり押しさせてもらう。速さで圧倒し二体のリザードマンの首を切って戦闘を終えた。


「疲れた……」


 階段まで戻るとそのまま樽にもたれた。緊張で余計なSPを減らしてしまった。そばで待っていたシャムスと目が合う。

 う、なんか責められている気がする。

 護衛として頼りないと思われたか?


「や、大分ブランクがあるし、ここじゃ土魔法の身体強化も使えないし……」


「ううん、言い訳しなくても大丈夫だよ? 一人で二十匹倒して生き残ってるなんて普通にすごいし」


 攻撃の要の火魔法も使えないし、武器も量産品だから――という続けようとした言い訳は飲み込んだ。


「そうか。そう言ってくれるとほっとするよ」


 ゴブリンやサハギン程度の魔物なら百匹くらいショート・ソード一本で倒せると考える奴がいた。転移直後の俺だけど。

 この世界で育っていても、物語の英雄のように雑魚ならいくらでも殺せると思っている人は都市の城壁外にでたことのない内地人を中心に意外と多い。


 普通の人が魔法を使うこの世界でも、普段は徒歩で歩くし荷物も手や荷車で運ぶ。

 身体の強度は前の世界の人間よりむしろ弱いくらいで、上位の軍人や狩人が戦闘で超人的な動きができるのは中位以上の魔法適性をもつ人が使える身体強化の技術を磨いてきたからだ。


 そんなエリートでも魔物や一般兵士五十人とまともにぶつかれば死ぬ可能性が高い。

 重火器、爆弾に相当する魔法も威力減衰を考えると中距離でしか使えないし、そもそも五十名もいれば属性がかぶる敵が何人もいる。

 弱い彼らでもレジストは出来てしまう。攻撃魔法は封じられ、自分はそれ以外の属性魔法で一方的に攻撃される。

 多対一は怖いものなのだ。


 そうなると身体強化で逃げ回り一人ずつ倒すしかないが、全方位から一斉に襲われれば終わりだ。

 SPをガンガンけずられたら傷はなくても痛みでまともに動けず、0になればLPも削られはじめ、満身創痍まんしんそういでやがて動けなくなりLPが0になり、死ぬ。


 

 前の世界で言えばサブマシンガンを持った現代人にとっては刀もちの侍は五十人でも雑魚と呼べるけど、弾倉が空になっても雑魚と呼べるか、という話だ。

 甲板を蹴る靴音がこちらにやってきた。


「魔物が待ち伏せていたか。すまん、判断ミスだ。ここまで魔物・魔獣が集まってくるとは予想外だった。後ろ甲板の戦闘もまだ終わっていないが、ここは見ておく。休んでくれ」


 背の低い若い男がカトラスを片手にわびてきた。たしか水夫長……だったか?


「よろしく頼む。じゃ」


 シャムスを促して後ろ甲板に向かうことにした。


 お読みいただきありがとうございます!


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