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Ⅲ-06 魔物の襲撃


 急いで甲板に出ると乗員乗客の多くは船尾楼に集まっていた。


「見ればわかるだろうが、今この船は海棲魔獣の標的にされている。中位魔法以上が使える乗客は出来れば戦闘を、下位魔法持ちは帆に風を送るか側面でレジスト防御を担当してくれ!」


 階段を上っていくなか、魔導具の拡声器を使った船長の大声が響いてくる。


「シャムス、中位魔法は?」


「使えるけど、エルフ独自でやり方が特殊だから人前で使いたくない」


 なるほど、エルフは魔法を使えないのになぜ魔物・魔獣の棲む瘴気の森で生活できるのか謎とされていたけど、外の世界で使わないだけだったんだな。


「そうか。じゃあ船首に行っておこう」


 皆の集まる船尾に背を向けて船首を目指す。


「え、ユーリって中位魔法使えるでしょ!?」


 シャムスが不安げな声を上げる。


「使えるよ。でも土魔法限定だ。木と水しかない海の上じゃ土魔法は使えない」


「使えない! それじゃ私以下じゃない!」


 今のは土魔法が使えないって意味だよね? 人として使えないとか言ってないよね?


「大丈夫、土魔法以外でもやりようはある。まあ見ててくれ」


「見ててくれって、船首に魔獣はこないでしょ?」


 中型船なので船尾楼での喧噪がここまで聞こえてくる。

 船尾に迫っているのは速く泳ぐことができるシーウルフ、クロエオルカなど、海で船を襲う魔獣の定番だ。

 あいつらは海に住んでいるくせに水属性じゃなく、火や風属性を持っている。


 狩りの方法はわかっていないけど、攻撃力が低い水属性もちばかりの海では有利なんだろう。

 人間の船にもファイアーボールやウィンドブラストに相当する獣魔法を撃ってくる。

 けど船には船員、乗客ともにたいてい火・風属性持ちがいるので彼らが船を沈めた事はない。


「魔獣はともかく、魔物はくるんだよ。フレイムアロー!」


 腰に下げていたホーシールドを掲げ持ち、船首右舷から海上の不自然な所に向けて攻撃をする。

 水中からなにか青黒いものが浮かび、後ろに流れていく。

 いちいち不明瞭だが、大体魔物なので気にしない。どうせ後から集団で来るんだ。そのまま4回右舷の怪しい影に向けてフレイムアローを打ち込んでいく。


「下位魔法なのに全然威力減衰しないのなんて……あ、左にもいる!」


「わかった!」


 シャムスがいつの間にか高さのある船首楼に上がって海を見渡している。

 左舷に回りさっきと同じように2つの海の影に矢を打ち込んでいくが数がすくない。


「ユーリ、目の前! サハギンが上がってくる!」


「わかった! 十分だ、もう降りてこい!」


 どれだけいるかわからないが、甲板での白兵戦もありうる。戦力にならないシャムスは後ろにいてもらう。


「おい船長! 艦首に魔物がとりついてきた! 余裕があれば人を回してくれ!」


 素早く後ろに回り込んだシャムスを確認しつつ、風魔法のブリーズに声を乗せて応援を求める。


「まだ手が離せねぇ! 三分くれや!」


 あまり期待していなかったので構わずに目の前に現れたサハギンの顔に至近距離からファイアを見舞う。

 そいつは火炎放射をもろにくらい海に落ちていったが、鱗をまとったゴブリンのような顔が次々と顔を出してくる。

 威力はないが速いウィンドブラストで牽制しつつ、甲板を走り回ってファイアで仕留めていく。アローは飛距離があるけど威力が弱い。


「ユーリ、正面から一匹上がってきた!」


 右舷の最後のサハギンを落として一息ついた所でシャムスが叫ぶ。

 左を見れば典型的なサハギンがトライデントを構えたところだった。


 ――――ィン!


 レジストしたけどほっとしている場合じゃない。さっき俺がしたのと同じ牽制の風魔法の後には距離を詰めたサハギンのトライデントが迫ってくる。


「チッ!」


 小指側に盾部分が来る、逆手に持ったホーシールドを回すことで敵の穂先をたたき落とし、間合いを取り直す。

 火魔法は甲板上では使えない。焦げたら賠償になるからだ。

 ホーシールドは農具が元の小盾で、攻撃手段は単純なシールドバッシュだけど、昔熟練の農民がトンファーのように扱っているのを見て可能性に気づいてしまった。


 活殺自在で対人用として便利だったからしばらく愛用していた。今もそれなりに使えている。

 特に意味はないが手首をならすために風切り音を立てて振り回しているとサハギンが吠えてきた。


「マセキ……マセキッ! クワ! クワセテ……ッ!」



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