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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

装甲お嬢様

置き去りにしたあいつらを、絶対許さない。 拘束された、女性型、完全思考○○型装甲巨兵(ドレス)”ホワイトプリズナー”開封。

「マーブル、お前囮になれ」

「それ、いい案ね~」

「あなたの代わりの、シーフはもう見つけてありますの」

 戦士でリーダーのアレク、魔術師のマリッサ、司祭のセレスである。


 今、”死の砂漠”を、六輪装甲車が疾走している。

 少し離れた所に、サンドワームの群れがいた。

 追いかけられているのだ。


「そんな、だからサンドワームの巣に、近づいちゃ駄目って言ったのに」 

 恐る恐る言った。


「うるさいっ」

「ずーと、役立たずだったんだから、最後くらい役に立ちなさいよ」


「待って」


 ドンッ


 マリッサとセレスが、マーブルを装甲車の荷台から突き落とした。


「さよなら~」

「囮と言うよりは餌ですわね」


 マーブルは、砂漠の上を転がった。

 すぐに起き上がって、必死に装甲車を追いかける。


「サンドワームに、生きたまま食べられるのは嫌あ」


 必死に逃げていたが、遂にサンドワームに追いつかれた。


 キシャアアアア

  サンドワームに一匹が、大きく飛んで頭の上から襲い掛かる。


「あああああああ」

 (ここで、死ぬの……そんなの認めないっ)


 ドン


 間一髪で横に避けた次の瞬間、足元の砂漠に穴が開いた。 

 浮遊感。

 

「ガッ」

 何かにぶつかった。

 マーブルは、全身を襲う激痛に、意識を手放した。


「かはっ」

 マーブルは、床にあおむけに倒れている。

 上には落ちてきたであろう穴が、四角く空いていた。

 光が四角く入ってくる。

 ちらりとサンドワームの頭が見えた。

 狭くて入ってこれないようだ、


「……駄目ね……」

 力が抜ける。

 自分の周りに、自分の血がじわじわと広がっていくのが分かる。


「くううう」

 マーブルは、声もなく泣いた。


 目の前が暗くなってきた。

 (ここで意識を失ったら、もう二度と目覚めないわ)

 

 その時、頭の上に、赤黒い炎が立ち上がった。


 最後の力を振り絞って、頭を動かした。


 黒い鎖の繋がれた、白い巨兵が片膝をついて座っている。

 

 背中には、白い羽が生えていた。


「天使さま?」


『復讐したいか?』 


「……え……」


『あと少しでお前は死ぬ』


『復讐したいか』


「し、したいです、……したいですっ」

 縋るような声を出す。


『では、我の一部となれ』


 (……天使様の一部……)


「な……りま……す」


『良かろう』


 治療用のナノマシンが、マーブルを包んだ。

 キラキラと祝福を受けている様だった。

 


 マーブルは、意識を取り戻した。


 目の前に、羽の生えた白い、装甲巨兵が片膝をついて座っている。

 両手と胴体いたるところに、黒い鎖がまとわりついている。

 赤黒い炎を上げている魔法陣に、マーブルの血が足元から続いていた。


「くふふ」


(頭がすっきりする。 今までが嘘みたい) 


「くふ」


 マーブルは、爪がはげるのもいとわず、素手で床の魔法陣を削り始めた。


 ついに魔法陣の一部が、削り取られる。


 グギギギギギギ


 ゆっくりと、拘束している鎖がきしんでいく。


「くふ、天使様~」


 バキンッ

 

 白い装甲巨兵が、立ち上がった。


 白い重鎧にアーマースカート。

 肩までの金髪に、赤黒い宝石を真ん中につるしたティアラ。

 背中には、金属の羽毛で出来た白い羽が生えている。

 目をつぶった美女の顔は、まるで聖女のようだ。

 手には、白い盾と、メイス。

 

 巨兵の、胸部装甲が開いた。

 鎧と素肌の間に、ちらりと漆黒のドレスが見える。


「くふふふ、天使様あ」

 吸い寄せられるように、コックピットに座る。


 いつの間にか、マーブルの額には、赤黒い宝石を真ん中につるした、ティアラが飾られていた。


 

 マーブルの復讐は、凄惨を極める。


 付近のサンドワームは、一匹残らず、細切れにされた。


 アレクたちは、逃げ込んだオアシスの住人ごと、拷問の後、惨殺される。


「おいっ、こいつを見ろ」

 騎士たちが街を調査に来ている。


 うずたかく積み上げられた、アレクたちと住人の死体の傍らに、


「……何が起こったんだ……」

「爪が全部剥げてるぞ」


「笑ってやがる」


 騎士たちが呆然としたような、声を出した。


 マーブルが静かに息絶えていた。


 額に、ティアラはない。




 この後、突然”ファーストビル(始まりの地)”教に”聖女”が現れる。


 どこからともなく現れた、天使型の完全思考○○型装甲巨兵ドレス”ホワイトメイデン(プリズナー)”が選別するのだ。

 

 選別された”聖女”の額には、マーブルと同じティアラが飾られていた。



 


装甲お嬢様シリーズ第四段。

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