とある女の子の悩みと新しい友達
ちゅんちゅんと小鳥のさえずりが聞こえてくる。少し開けておいたカーテンから光が差し込んできて、眩しい。ガバッと勢いよく体を上げて時計を見る。6時ピッタリ。これも厚生が朝起きる方法を教えてくれたお陰だろう。本当に感謝だなぁと思う。だが…
あいつもう……彼女いるんだもんな……
聞いたのは夏休みが始まる日。青葉という学校の中でも人気……というか凄い人と付き合う。と。そう伝えられて私としては頭が真っ白になったし……。まぁ……その子と前から遊んでいるとは聞いていた。それにその子が厚生に気がありそうなことだって分かっていた。でも。それでも。
「……悔しい……」
私 桃子は。
厚生のことが好きなのだ。
パジャマから私服に着替え、階段をおりる。良く考えれば青葉という子にも会ったことないな……勿論部活の時に厚生を迎えに来ているので声は聞いた事があるのだが私がパソコンを使っているところが丁度廊下と繋がるドアの所から見えないため私は学校で見る程度。あっちはそもそも私の存在を知っているのかも危ういレベルである。そのため。
「よし!」
玄関で靴を履き玄関から出る。2月になったとはいえまだ寒い。風邪をひかないようにセーターを来て道路を歩く。よく見た商店街も子供の頃とは違い活気が無くなっているな……。やっぱり目の前の景色なんてコロコロ変わるんだなぁと私は思う。全部が全部知った頃のままなんかじゃない。そんなの分かっていた。でもそれでも……
「はぁ〜……」
何とも頼りないようなため息を着く私であった。
ピンポーンと。
とある家のチャイムを鳴らす。その家とは他ならぬ青葉の家のチャイムである。なんたって厚生の彼女。どんな人なのか知っておくべき……そう思い立った私は厚生から青葉の連絡先を教えてもらい、今日は厚生が来れないとのことで私が料理を作りに行くこととなった。青葉とはメールでしかやり取りしていないがかなり緩い印象を受け、悪い人ではなさそうと思ったが……
実際今回のご飯を作りに行くというのも軽く許可してくれたし……
ガチャ。扉が開く音が聞こえドアの方をむくと。
そこには全てが整った美少女がいた…ではなく
崩れた髪で眠そうな顔をしてこちらを向く美少女がいた。
「……」
「……」
どちらも何も言わずに相手の目を見つめる。すると突然
「っ!そうだ……今日は厚生じゃないんだ……っっっ……」
すそそそそと……
ドアを閉めて戻っていく彼女。
一体なんなんだろうか…そう思っているとインターホンから声が
『ち……ちょっと待っててください!』
まぁ多分髪の毛を整えるのだろうか……
10分ほど経ってドタバタとドアの向こうから音が聞こえ、ドアが開かれる。
「す……すいません!待たせてしまって!」
「い……いえ!中に入っても?」
「はい!」
やっと入れた家の中はかなり綺麗に整頓されていた。キッチンもかなり綺麗に整えられており何だか厚生の家のキッチンを思い出す。というかこれまさかだけど厚生がやってたりして……
「なにか……食べたいものある?」
ぎこちなく私が質問をする。
「フレンチトーストを……お願い致します」
相手もぎこちない返事を返す。なんか……緊張してる……あ。私もか……
料理を作りながらなにか話そうかと考えたが話すような内容もないし勇気もない。そもそも話しかけることも出来ずに料理を作り終えてしまった。
「はい。どうぞ……」
「ありがとうございます……!」
やはりぎこちない言葉を交わしテーブルで向かい合うように座る。無言で食べ進める青葉。その表情は何処か笑みを浮かべているようだったが確信を持つことはできない。そんな青葉を眺めていると髪の毛が少しぼさっとしている事に気づいた。さっき直したのでは……?と思ったが恐らくきっちり治していなかったのだろう。所々にそんな髪のハネが見あたった。
「髪の毛はわざとそういう風にしているの?」
「いえ!あんまり髪直すの上手くなくて…」
微笑してそう答える彼女に何処か可愛さを覚えた私は何故か
「直してあげる?」
そう言っていたのだった。
「はい!こんな感じでどうかな?」
「す……凄いです!めっちゃ綺麗になってる!ありがとうございますー!」
目を輝かせて言う彼女は何とも愛くるしい。
この髪を整える間、色んなことを喋ることが出来た。好きな物や動物、食べ物、趣味など。そして何より厚生のことも。
両方かなり喋りやすくなったといえるのではないだろうか。
そして……
「青葉の髪長いから色んな髪型出来るねー……羨ましいなー」
青葉と呼ぶ事が出来るほどに仲良くなった。
「そんな事ないですー!髪洗う時は大変だし……あ!」
「ん?」
「あだ名とかで……呼んでもいいですか?」
「いいに決まってるよあだな?良いけど」
んじゃあ……と考え出す青葉。
「Pさんでどうでしょうか」
「Pさん?」
私にP要素なんてあっただろうか……?
「桃は英語でピーチなのでPさんです」
「あぁ!そういう事ね!」
なかなか面白いあだ名だなぁと思わず笑ってしまう。
「いいね!Pさん。ぜひそう呼んでください。」
私がお願いする。
「はい!よろしくお願いしますね!Pさん!」
暗くなった道を1人歩く。もうすっかり日も落ちた。ついさっきまで青葉と楽しく話していたがゆえ夜の静けさが身に染みる。こう1人で歩いているとふと青葉との会話が頭をよぎる。
「青葉は厚生のどんな所が好きで告白したの?」
「それは……」
と少し考えた後……というか悩んだ後
「どれと言うのは考えれば考える程わかんなくなりそうです。だから全部だと思います」
その言葉を思い出して思う事。そんなの決まってる。あの完璧超人の彼女を惚れさせてしまうような何を厚生はしたのか。だ。まぁあいつの事だから何も気づかずやってるんだろうけど。
「はぁ〜……」
深いため息をついて私は家への道を歩く。
私が厚生を好きになったのは5年前。小学五年生の頃。家に帰る途中で迷子になった私を見かけて声をかけてくれて。元々幼なじみで少しは話していたため家の場所を知っており、家まで連れていってくれた。その時に。あいつは……厚生は。
「お前がまいごになったら何時でもおれをよべよ!助けてやるからな!」
ただその一言で。あいつが輝いて見えた。ヒーローに見えた。そして。
カッコよかった。
というかよく考えれば迷子で周りに誰もいないのにあいつを呼んでなんの意味があるんだろうか……考えてみれば馬鹿だなぁと思うが……それでもやっぱりカッコよかったのだ。当時の……というか今もかもしれないが、私を恋に落とすには十分のセリフだった。
青葉にもきっと。そう思うようなことがあったのだろう。
今日彼女をとても好きになった。でも。だからこそどうすればいいのか分からなくなる。
あ。そういえば明日はバレンタインだなぁ……と今更ながら思い出す。青葉のチョコ作ってないな……私のをあげようかな。
少し難しい恋愛の話は心の奥に閉まっておこう。きっとどうにかしなきゃ行けない日が来るから。その日まで。
そう思っていると玄関の前に到着。ドアを開けてお母さんとお父さんがいるリビングに向かう。
あぁ。私は。桃子はどうすればいいのだろうか…
えっと……久しぶりです。なんかいつも書いてる気がしますね……というのを書いてる気がします……
もう時間がなかったんです!はい。えっと次回はバレンタインと書きましたがその前に少し青葉と桃子の関係性を先に書こうかなと思ったので今回はこんな形になりました。これからは毎日頑張っていきます。もう1作の方は少し書けなくなってます。スランプです。なので暫くはこっちだけ書いていきます。
黒髪美少女ずんだ