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4 マリア

 母が亡くなってから、マリアも塞ぎ込むようになった。私の消沈ぶりも激しく、伯爵も落ち込んでいた。


 ただ、私と伯爵は領民のためにも半年の喪に服しながらも働いていた。マリアは部屋に篭りがちになったが、それに気を割く余裕は……無かった。


 モーガン様は何かと訪ねてきてくれては、私を励まし、マリアのことも励ましてくれていた。未来の妹だからね、と、会話のきっかけになるような贈り物を携えて。


 私は……一度も贈り物なんてもらった事が無いのに。一瞬そんな考えが頭をよぎったが、4つ下の妹に妬いてしまう程愚かでは無かった。……今思えば愚かであればよかったのに。


 ある日、使用人達が噂しているのを聞いてしまった。モーガン様はマリアと二人きりになる事はなく、常に使用人が部屋に控えていた。当然のことであったし、そして使用人とは、本来そこで何があったかを口にするものでは無いのだ。


「……あれじゃジュリアお嬢様がまるで……」


「モーガン様もモーガン様よ……」


「マリアお嬢様は明らかに……」


 一体何を話しているのだろう。気になった私はもう少し物陰に近付いて聞き耳を立ててしまった。淑女としては恥ずかしい行為だが、正面から聞くよりもありのままを知りたかった。


「マリアお嬢様がモーガン様に『お母様が亡くなってから虐められている』だなんて……、マリアお嬢様は喪に服すというよりも勝手に引き篭もったんじゃない」


「そうよね。部屋に居ながら、伯爵様とジュリア様が知らないからって普通にお菓子を食べて、寝巻きのまま昼までごろごろして、晩餐も部屋でとるからと言って一人だけ……」


「えぇ、お二人は忙しくされてるから知らないだけで、引き篭もって今まで通りワガママに過ごしてらっしゃるだけだわ」


 これはかなりの衝撃を私に与えた。


 母の話を聞いた時もショックだったが、マリアがまさか、母の死からそう簡単に立ち直って……モーガン様に、私がマリアを虐めている? 一体何の証拠があって言っているのか。


「部屋から出られないから使用人が気を利かせておやつや食事を運んでくれているんです……、だなんて。運ばされてるだけだわ」


「ジュリアお嬢様たちは私たちまで暗くならないように気を遣ってくださっているけど、マリア様はさすがマリア様よね。昔からお上手だこと」


「モーガン様を敢えて誘惑していた事でしょう? 初めて訪れる日の注文は今でも覚えているわ。『お姉様より可愛くして』だったわね」


 使用人達の愚痴は尽きない。


 まさか最初から、マリアはモーガン様を狙っていたの? 一体何故?


 そして母の死をあろう事か……だしに使って私からモーガン様を奪おうとしている?


 私はその後もしばらく、使用人達の話を呆然と聞いていた。

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