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圧倒的な勝利

「あー、いましたいました!」

 そう叫びながらオルフェウスが指差す方向をよく見ると、そこには宴を開いているであろうゴブリンの集団がいた。10体くらいはいるだろうか。大柄なゴブリンから小さいゴブリン、女性的なゴブリンがおり、寄せ集めの集団と言うよりは家族の団欒の様にも見える。

「おー、本当だ……で、さっき言ってたいいことってなんなの?」

 先程閃いたらしい、オルフェウスが倒すことの出来ない人型のモンスターを退治する方法を未だに教えてもらえていない。

「今からやるので見ていてください」

 ふふふ、とお姫様らしいお淑やかな笑みが溢れている。

「さあっ、やりますよー!」

 そう言うとオルフェウスは、小さい魔法陣を無数に展開し始めた。

 ここからゴブリンの集団までは100メートル近くあると思うが何をする気なのだろうか。そう考えている間にも魔法陣がどんどん増えていき、その無数の魔法陣から出てきたのは無数のーー剣?

「えっ……殺る気満々じゃない?」

「違いますよっ、失敬な! ちゃんと見ててください」

 そう言うと初めて使う魔法とは思えないほど慣れた手つきで、生み出した武器を全てゴブリンの集団へと向かわせた。

 遠すぎて詳しくは見えないが、ゴブリンの集団に向かっていく無数の武器は圧巻だ。……あ、ゴブリンが武器に気付いたっぽい。怒号が聞こえる。ん、静かになった? いや少し抵抗してるっぽい。

「おっけーです、さあ行きましょう勇者さん!」

 オルフェウスが何をしたのか詳しくは見えなかったがどうやら一段落着いたらしく、意気揚々とゴブリンの方へ向かっていく。

 ゴブリン自体は決して怖くないが、今向こうがどうなっているのかが分からないこの状況がとても怖いため、恐る恐るオルフェウスについて行く。

 ゴブリンの集団の元へ辿り着いたとき、若干想像していた光景がそこに広がっていた。ゴブリンの首元や心臓、急所という急所に突き立てられた武器。武器。武器。

「うわぁ……」

 ゴブリン達の瞳から伝わってくる感情は、畏怖。どう考えてもここに広がってるのは暴力で屈服させる恐怖政治。

「さ、これで解決ですね勇者さん」

 それをこの屈託のない笑みで行うお姫様。ある意味国を担う能力はあるのかもしれない。

「た、助けてくれ! もう悪いことはしねぇよ、俺たちはただこの子達を育てることに必死なんだ!」

 この状況のゴブリンには流石に同情せざるをえない。やっぱり子育て中の家族ゴブリンだったらしい。

「だめですよ、そう言ってまた街の人達に迷惑かけるんですから」

「ほ、本当だって姐さん! なんなら、俺たちの衣食住さえ確保してくれたら町を守ってさえみせる!」

 ……姐さん? すごいな、恐怖政治。

「ほ、ほんとですか?」

 意外とチョロいなこの恐怖政治。

「んー、分かりました。じゃあ町長に交渉してみましょう」

 そう言うとゴブリンたちに突き立てていた武器を一斉におろし、街に向かうためにゴブリンたちに背を向けた。途端にゴブリンの瞳に宿る殺意。やっぱり恐怖政治は向いてないのでは、このお姫様。完全に油断してるオルフェウスを守ろうと無敵スキルを唱えようとしたその時、

「あ、みなさんの頭には既に私の意思で即発動できる即死魔法が埋め込まれてるので、気をつけてくださいね?」

 これ以上ないくらいに無垢な笑みを浮かべ、そう言った。表情と言動の差が激しすぎて一瞬言葉の意味を理解できなかった。咄嗟に構えかけた武器を背中に隠すゴブリン達。やっぱ凄いわ、恐怖政治。

「じゃあ町に戻りましょうか、勇者さん」

 そう言うとオルフェウスは無防備な背中をゴブリンに見せながら、意気揚々と町へ戻っていった。

 場面変わって町長の家。さっきは2人で町長の前に座していたが、今は12人の大所帯となっている。それは何故か……まあご想像通りにゴブリン一家が共にいるからだ。

「ーーそんな訳で、即死魔法の発動権限を町長さんに付与しましたのでお好きなタイミングでどうぞ」

 隣で恐ろしい話が着々と進んでいく。

「お、おぉ、それは承知したが……」

 ゴブリンに迷惑をかけられていた町長もゴブリン一家に同情の視線を向けている。

「改心したゴブリンさんたちがこの街を守ってくれると約束してくれたので、しばらくは安心かと!」

 改心(?)させた本人が自信満々に、声高々にそう述べた。

「問題も解決したことですし、僕達はそろそろ次の町に行こうかと」

 色々と問題が新たに増えた気もするが一番の問題が解決したので、早々に次の町に向かうために立ち上がった。

「それもそうですね、じゃあ私たちはこの辺でーー」

 そう町長に言うと、そのままゴブリン一家に目線を向け、

「もう、悪さしちゃだめですよっ?」

 釘を刺すかのように、そう言った。ゴブリン一家は何も言わず深々と頭を垂れた。即死魔法は可哀想だがこの町の町長なら変に扱うこともなくゴブリン一家を養ってくれるだろう。町に平和も訪れて一石二鳥だ。

「勇者様、今宵は豪華な食事も用意しておる。是非一晩この町で過ごしてはくれぬか」

 町長に少し引き止められたが幸い外はまだ明るい。留まるよりはなるべく早くこの物語を進めたい。

「いえ、僕らは先に進んでやることもあるので。そのご飯は是非ゴブリンとの親睦のためにお使いください」

 そう言うと僕とオルフェウスは町長の家から出るために歩を進めた。

「あっ、町長さん。先程付与した発動権限、即死魔法とは言っても町長さん次第でいくらでも苦しませながら発動させることはできますので、よろしくお願いします」

 部屋を出る直前、ニコッと笑いながらオルフェウスは町長に向かってそう言った。言われた側の町長のなんとも言えない表情はいつまでも忘れることは無いだろう。


「さて勇者さん、次はどこに向かいましょうか」

「んー、そうだな……あっちの方向かな」

 物語の大筋が決まってるため、直感で次に進むべき方向が分かっている。寄り道をする必要性も感じないしそのまま目的地に向かってしまおう。

「勇者さんの行くところならいくらでもついて行きますよー!」

 次の目的地――ここから見た限りだと森を突っ切るルートらしい。たいした大きさの森ではなさそうだし前準備もいらないだろう。

「よし、じゃあ行こうか」

 そう言って僕とオルフェウスは次の目的地へと向かった。


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