洞窟探検完了
「な、なんだったんですかあれは!」
涙目のままアーレスに向かってそう叫ぶ。
「う、うちの番犬的な子で……」
「味方なんですか!? 攻撃されましたけど!?」
「オルフェウス様は彼にとっては知らない人だったので……すみません、もっと早くお声掛けしていれば……」
駆け出すお姫様に声をかけようとするシーンは見た気がするが、あまりにもタイミングを逃していて更に声が小さかった感は否めない。
「オルフェウスは魔力探知してたのに、分からなかったの?」
「あの子は魔法で変身している訳では無いので探知出来なかったのかと」
「なるほど、でもなんか口からビームみたいなの出してなかった? それでも体内に魔力あったりしないんだ?」
「あれは魔法ではなくただの体液ですね、圧縮して吐き出してます」
……こっわ。
「あ、あれ避けられてなかったらやばかったですよね!?」
「そ、それは……まあ……」
ちゃんと命の危機だった訳だ。
「すみません、流石に魔力探知に長けていても迷うような仕組みになっているのを知って欲しくて」
反省はしているようだが、なかなか過激なことをしているな。
「先に言ってもらえますか!?」
オルフェウス、その気持ちはよく分かるよ。
「申し訳ありません。では正解のルートに案内します」
いや、反省しているのかが分からなくなってきたな。切り替えが早すぎる。
「この私ですら見つけられなかった正解ルート、一体どこにあるというんですか」
当の本人は気にしていないみたいだし、まあいいか。
来た道を戻るアーレスについて行くと、最初の分かれ道で止まった。
「ここです」
「なるほど、ここでハズレに見える道を選ぶってことか」
「いえ、そこではなく」
そう言うと、アーレスは壁をランタンで照らしだした。
その途端、天井にあった魔法植物が動き出し照らされた壁に集まってきた。他の光っている苔のような植物と違い、それはツタのような見た目でゆっくりと、しかし確実に壁に穴を開けていく。
「なるほど、光っているものとは別の魔法植物をここにだけ隠していたんですね」
目視でも難しい上に、魔力探知に頼っていたら余計分からないだろう。そう考えている間にも人が1人ギリギリ通れるくらいの穴ができた。中を覗いて見たが先は何も見えない。
「ここから先はこれで進んでいきましょう」
なるほど、ここでランタンが本領発揮する訳だ。
「おぉ、真っ暗で怖いですね」
アーレスが先陣を切り、その先をオルフェウス、僕が着いて行く。先程より暗いが、歩けなくはない。特に特別な所はなく先程までの通路の何ら変わりはない。
ふと後ろを振り返ると、そこには先程通った穴はもうなかった。さっきの魔法植物がそのまま元に戻したのだろう。
しかし、改めて明かりの大切さが分かる。先程までと構造は変わらないはずの場所を歩いているにもかかわらず怖さが段違いだ。今はアーレスのランタンしか光源がない。
「光魔法とか使ってみます?」
確かに魔法を使えば一瞬で明るくなるだろう。
「いえ、侵入者にバレる可能性もあるのでこのまま進みましょう」
大きい魔力や光でバレる可能性があるか。一理あるな。
「それにここからはそんなに遠くないので、そろそろ出口に着きますよ」
少しずつ明るくなってきた。今度こそ本当に外に出られるらしい。
いつもなら真っ先に駆け出しそうなお姫様をちらっと見ると、ちょうどこちらを見ていたオルフェウスと目が合った。
「お、お先にどうぞ!」
少しトラウマが残っているらしい。