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罠の原因

 先ほどまでオルフェウス席に僕が座り、その隣にオルフェウス、向かいには先ほどの冒険者が座っている。オルフェウスが食べていた料理が余っていたため、食べながら会話をして親睦を深めることになったのだ。

 しかし、あの頼りなさそうな冒険者見習いが次の仲間か……あくまで予想ではあるけど当たっている自信しかない。どうせなら先ほど握手したかっこいい強そうなおじさんがいい。

「ポジション変更。対象、冒険者見習い・あそこの強そうなおじさん」

 と、呟いた瞬間に軽い頭痛が走った。過去にもこの経験はある。物語の大筋を変更しようとしたときに起こる現象で、能力が効いていないときに起きるのだ。どうやら目の前の冒険者見習いが仲間になる予想は間違っていないらしい。

「ど、どどどうかしましたか、勇者様?」

 心配そうにこちらを見ている。大変申し訳ないが君をモブにしようとした結果こうなっているのだ。いわば天罰を受けている状態なのでどうか心配しないでほしい。

 んー、少なくともその喋りかた、というか性格をどうにかしてほしいな。もっとかっこよくて強そうな冒険者がいい。

「性格変更。対象、冒険者見習い」

「さ、そんな訳でいろいろと話しましょうよ、勇者さん」

 即効性がすごい。性格が変わったことによって顔つきも変わったのか先ほどまでよりもかっこよく見える。

「う、うん、よろしくね」

 確かにかっこいいが、流石に目の前にいる人の人格操作に一抹の罪悪感を感じた。

「性格変更。対象、冒険者見習い」

 即座に元に戻した。申し訳ない、もうしません。

「ちなみに名前はなんて言うの?」

 いつまでも冒険者見習いと呼ぶ訳にはいかない。進行形で目の前の食べ物にがっついているお姫様も知っている様子はないので本人に訊くしかない。

「ふぁ、ふぁふぇーふはんでふ」

 いや、知ってはいそうだが何も伝わってこない。

「あ、アレースです。よろしくお願いします」

 先程までのオドオド感が多少改善されている。完全に元に戻したつもりだったが、少しばかり僕の願望が反映されてしまったらしい。

「こちらこそよろしく」

「あっ、私もよろしくお願いします!」

 オルフェウスは仲間外れにされまいと、持っていたナイフとフォークを急いでテーブルにおいて僕らが繋いだ手に自らの手も重ねた。


 しばらく皆で食事と談笑を楽しんだ後、

「改めて、クロノスと言います」

 先程の強そうなおじさんーークロノスがそう言った。話を聞いている感じだとここのリーダーらしい。

「盗賊対策とはいえ一国の姫と勇者にあのようなことをしてしまい、大変申し訳なかった」

 確かに驚いたが、大きな被害もなかった訳だし特に気にしていない。隣のお姫様にいたっては豪華な食事を大量に食べてむしろ嬉しそうだ。

「気にしないでください。むしろこんなにご馳走になってしまってありがとうございます」

「そう言っていただけると……こちらこそ感謝する」

 神妙だったクロノスの面持ちが少し綻んだ気がする。

「そんなに盗賊被害があるんですか?」

 ザッと見渡した感じ、ここの人達は筋骨隆々な男の人たちがたくさんいる。ちょっとやそっとの盗賊なんてすぐ返り討ちにできそうだと思う。

「ここ最近ほぼ毎日食料がなくなっていてね。他に多少なりとも価値があるものもあるのだが、そっちには手をつけられず食料だけが少しずつ減っていってるんだ。しかも誰にも気付かれることなく。ここは大広間になっているが辿り着くまでには入り組んだ通路を正確に進まないとたどり着けない。来て逃げるだけでも至難の業だろう。ここに来たばかりで迷った奴も数え切れないし、小動物どころか風ひとつ来ないから魔法で温度調整しているくらいだ」

 そんな状況で僕たちへ食料の提供をしてくれたのか。さすがに申し訳なくなってきたな。

 考えていたことが顔に出ていたのか、

「いやまあ、そんな食料に困るほどではないが、これ以上被害が広がる前に原因を突き止めなくてはな」

「なるほど、それは確かにどうにかしたいですね」

 状況を知らなかったとはいえ、沢山の料理を振舞ってもらい食べ尽くしてしまったオルフェウスが真剣な顔でそう呟いた。

「でも、確か私たちが引っかかった罠って宝箱型でしたよね……?」

 確かに。食料だけを狙われていたはずなのに何故か罠は宝箱の形をしていた。なんでそんな効率が悪そうなことを。

「あぁ、それに関しては俺も君たちが引っかかるまで知らなくてな」

 そう言って、隣に座っているアレースの肩をその大きな掌でポンと叩いた。

 君か、犯人は。

「す、すみません、皆さんの役に少しでも立てればと思ったのですが……色々な人にご迷惑をかけてしまって……」

 僕たち自身に責めるつもりはなかったものの、会話の流れで複数人からの視線が集まってしまいアレースから反省オーラが物凄い出ている。

「ごめんなさい……」

 瞳が潤んできてしまっている。こちらは何もしていないのに罪悪感がどんどん湧いてくる。

「大丈夫大丈夫! 今体に不調とかないし!」

「むしろ私はこんなに美味しいものが食べれてラッキーですよ!? それに久しぶりにアレースさんにも会えましたし!」

「失敗から学ぶこともたくさんある。どんどん失敗して成長してくれ」

 僕を含めて3方向、いやそれ以上から励ましの言葉が飛んできている。

「うぅ……みなさん、ありがとうございます……」

 あぁ、違う意味で泣いてしまった。不器用なとこはあるかもしれないけれど優しい子なんだろうな。

読んで頂きありがとうございます!


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