表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/36

境界を越えて

「人が大勢居るところには慣れていないだろ。色々と気を付けな」


「合わなければ、また野でも山でも、風と獣に付いていくだけだ」


「そうだな……。気が済むまで自由に生きるといい。たまには腕を見せに来い」


空が白み始めた頃、三人は既に出発の準備を済ませ、村の出口にいた。

サイプレスが言葉少なげに、別れを惜しむ。

何人かエルフ達も出て来て、思い思いに別れを告げた。


「本当に良くして下さって、ありがとうございました。ご恩は忘れません」


「ここの事はきっと忘れちまうけどな。助かったよ、ありがとう」


アリシアとノラも短く礼と別れを済ませば、多少打ち解けたエルフが返事を返す。


「もし、お前達がまた迷い混んだら、飯くらいは出してやるさ。それと、カレタカは()()()()()だ。頼んだぞ」


「さあ、もう行くといい。陽のあるうちに進んでおかないと、後が辛くなる」


そう言われると、カレタカは少しだけ名残り惜しそうに、村に背を向けて歩きだした。



コンパスを頼りに、時折現れる獣や憑魔を倒しながら南下を続けると、日暮れが差し迫る頃、流れの緩い川沿いに出た。


「サイプレスさんが言っていたのはこの川ですね。このまま下っていけば森を抜けられると」


「やっとか。なんか半年くらい森で暮らしてた気がするぜ」


川縁で休息を取りながら、ノラは森を出た後を考えた。


「カレタカさんは、森の中から出たことは?」


「一人になってからは……、ない。3年ほどは数えていたが、そこから先はどれだけ経ったのか、自分でも分からない」


「時折、エルフ達に会うくらいで、後は墓守を続けていたのか。そりゃ話すことも忘れるよな」


アリシアが軽くからかうと、初めての出会いを思い出す様に目を閉じる。


「あの時は、すまなかったな」


「いや、あんたが強くて助かったよ。お陰で()()()に済んだからな」


挑発的な言葉に珍しくカレタカも乗じた。


「そうだな。おまえが弱ければ、後の友を殺してしまうところだった」


「友の語りに、殺すって言葉は似合わないと思うのですが……」


当人たちは楽しんでいるのであろう、その会話に、ノラは溜め息しか出てこなかった。



陽が落ちてからも川縁を歩き続けると、やがて木々は少なくなり、拓けた大地が目に入ってきた。

森から完全に抜けた場所で、ふと、カレタカが振り返り、暗くてもう見えない森をじっと見つめる。


「森を外から見ることは、もうないと思っていた……」


「森の外はどうですか?」


ノラの問いに、カレタカは暗くて先の見えない大地と、満天の星空を見上げて呟いた。


「あぁ……、広いな……」


その晩は、少し大きい立木の元で天幕を張り、火を焚いて夜を過ごした。

夜番を受けたカレタカは、遮られる物のないゆっくりと流れていく星空を、二人が寝た後も飽きもせずにずっと眺めていた。


夜が明けて、早々に天幕を片付けて、軽い食事を済ますと、三人は再び歩きだした。

木や岩に、足も視界も妨げられる事が無くなった三人の足取りは軽く、陽が昇り切った頃に、サイプレスの言っていたそれは見え始めた。


大きめの石を積み上げ、ワイヤーネットで覆った、簡単だが頑強そうな石垣に、その外を囲むように堀が掘ってある。

遠目からでも分かる、高い(やぐら)が二本、狭そうな集落の端々に立っていた。


その様相を確認しながらアリシアが言った。


「まさしく最前線(フォアフロント)だな。交易や住み家にするようには見えねえ。どっかの出資の開拓基地だろう」


その開拓基地の方から、人が二人、陸鳥に乗ってこちらに向かってきた。

やや遠めから、こちらに止まるよう要求する。


「おい、お前ら止まれ。何処から来た?」


「何日か前、キャラバンが竜に襲われたって聞いてないか?あたし達はその生き残りだ。行きずりの流民に助けられて、ここまで戻って来た」


アリシアが何でもないように答えると、男はふぅん、と訝しげながら、ジロジロとノラとアリシアを見回す。


「そういう事なら分かった。まぁ()()()()していくといい」


そう言い残して、男たちは基地へと戻っていった。


「なんか嫌な見られ方でした」


「ありゃ、ろくでもねえ事考えてる時の目だな。おまえの胸を見る奴は、どれも大体あんな顔だ」


「えぇ……、なんかショックです」


「まぁ、初見からして長居したくなる雰囲気じゃねえ。情報だけ貰ったら、とっとと出ていこう。補給も無しでいい」


あまり良い予感はしないが、仕方なくと行った形でフォアフロントへ向かい始めた。


「カレタカ。か弱い乙女を守ってくれよ?」


「……ノラを守れば良いのか?」


アリシアはカレタカの脇腹に拳を突き入れ、無言で抗議した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ