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世界の始まり

初投稿です。勢いなので定期連載は期待しないでください。ごめんなさい。

遥か昔、人々が手に取った様々な物……故人の遺品や人の手を渡り歩いた逸品など、思いが強く込められた物を媒体に、人の心を具現化する事に成功した錬金術師がいた。


具現化した心は、時には想像の生物を形取ってこの世界に現れ、それらは喋ることこそ無かったが、やがて自我をもって行動するようになった。


この錬金術は、心に器を与える術として《錬器》と名付けられ、生まれてきた生き物は「物に憑く魔物」として、《憑魔(つくま)》と呼ばれた。


物に宿った心と、作り手の意思次第で、多種多様な生き物になるこの錬金術は、瞬く間に世界に広がっていった。


形見から生まれた犬、嫁いでいった娘の鏡から出て来た小さな鳥、名だたる名剣から現れた武神に似たなにか。

それは家族として、切磋琢磨する相手として、寂しさを紛らわす相手として、人々の日常に溶け込み、寄り添っていたが、小さな幸せの享受はそう長くは続かなかった。


人の思いは、喜びや楽しみの様な良い思い出よりも、怒りや憎しみ、悲しみの方が強く永く残る。人の欲にもまた強い思いが篭っている。


これにいち早く気付いた錬金術師は、錬器を禁忌とすることを提言した。が、取り合ってもらえることはなく、錬器術は徐々に悪しき用途に用いられる様になっていく。


国の代表者たちは人々の財や武具などの、欲望や負の感情が強い物を錬器させ、兵として、兵器として憑魔を率いて他国を侵略、略奪するようになっていったのだ。


奪った、奪われた物にはまた強い思いが残る。それを国々は嬉々として血を流して奪い合った。

世界全てを巻き込んだこの略奪戦争は、やがて人々が疲弊しきった所で、秘密裏に行われた国同士の対話と2つの約束で終わりを迎える。



一つは錬器術を禁忌として、全ての文献と技術を破棄、抹消すること。

もう一つは錬器術師と憑魔の全てを処断すること。



錬器術師たちは、戦争の切っ掛けを作った罪人として、次々と捕らえられ、慈悲も乞うも許されることなく、一族全てが処刑された。

憑魔もまた、見付かれば殺され、本来の物へと還っていった。


錬器術を生み出した錬金術師は、何匹かの憑魔を従え懸命に逃げ、捨てられた古城に辿り着き身を潜めていた。

男は錬器術を生み出した事をとても後悔したが、それよりも己が欲の為に話を聞き入れなかった国を恨み憎んだ。


男はこうして逃げる事が出来たが、家族はもう殺されている事だろう。


妻は、子は、もしかしたら無事だろうか?

いや、そんなことはある訳がない。

一人逃げた私をきっと恨んで死んでいったであろう。

私は人々に少しの感傷と幸せを触らせてあげたかっただけなのだ。

それなのになぜこんな目に合わなければならない?

なぜ家族に、人々に恨まれなければならない?



辛い……憎い……苦しい……悔しい………



悔恨と憎悪に支配される中、男は手元に残っていた少しの持ち物と、連れていた憑魔、そして打ち捨てられた古城に向け、自身の命と魂を乗せて、人として最後の言葉を吐き出した。




「この世界の全てよ。呪われてしまえ」




この日より、世界は変貌を遂げた。

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