怪しい二人
「困った事になったな…」
…私は心の中で、そう呟いた。
窓際の雑誌コーナーで週刊誌を読んでいるフリをしつつ、店内を横目で観察していた。
深夜の窓ガラスに反射した店内には客が7人。
…この時間帯にしては結構な来客数である。
私の名前は渡辺てつろう。
このコンビニのオーナーだ。
…とはいえ、経営は全て店長代理として息子に丸投げしている。
さっきからジロジロとこっちを訝しげな目で睨んでいるが、まだまだヒヨッコの雇われ店長だ。
私は店にはあまり顔を出さないし、店員にもオーナーだと名乗っていない。
…なので、今ここで私の正体を知っているのは息子だけ。
どうせまた小銭をせびりに来たのだろう、とか息子は思ってるのかもしれないが、今日はサプライズとして防犯訓練をしてやろうかと企んでいた。
ジャンバーの下に玩具のナイフを仕込んである。
プラスチックの刃は突き刺すと引っ込むようになっていて、見た目は刺さったように見えるパーティーグッズ。
…とはいえ、客がいるところでやったら大騒ぎになってしまうので、店員だけになるのを待っている…という状況。
しかし、窓際に並んで私と同じく雑誌を読んでる若者と…この時間帯では珍しくお菓子コーナーにいる中学生風の子供。
この二人は落ち着きがなくソワソワしている様に見てとれた。
…万引き…なのか?
遊び半分のサプライズどころではなくなり、今は何とも複雑な心境で様子を伺う事になったのだった…。