仲の良かった3人
「困った事になったな…」
…私は心の中で、そう呟いた。
私の名前は渡辺らむ。
深夜のコンビニでビールを選びながら、そっと隣の旧友の顔を覗き見る。
彼女の名前は渡辺みやび。
高校時代の同級生だ。
もう10年も会っていなかったけれど、偶然にも私の職場に彼女がやって来た。
動揺は…顔に出なかったはず。
自然な笑顔で挨拶をしたつもりだった。
…たまたま同じ人を好きになっただけ。
結局私が彼と付き合う事になったけれど、彼とは大学に入ってすぐに別れてしまっていた。
友達よりも彼氏を選ぶ。
憧れ…だったのだろうか?
彼氏がいるというステータス。
彼も私をアクセサリーのようにしか思ってなかったように感じていた。
そんな小さな優越感の為に大事な友達をなくしてしまった…
彼と別れた事よりも、その喪失感の方が大きかったのは間違いない。
…そんな彼女との偶然の再会。
ちらっと見た横顔が何だか切な気に見えて少し不安になった。
近況報告を語りあったけど、彼の事にはどちらも触れていなかった。
夜は長い。
朝まで飲んで旧交を深められたらいいけど…
彼女が口にしないなら私からする話ではない…
ビールを選びながら、そっと逃げ道を探していた。