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深夜2時の
「困った事になったな…」
…俺は心の中で、そう呟いた。
深夜2時。
普段なら客足も途絶えて清掃を始める時間帯だというのに、今日に限って店内にはまだ8人もの客が残っていた。
正確には…というのも変な話だけど、実際には9人の客がいた。
この9人目の客は俺にしか見えない。
俺の双子の弟の渡辺ゆうまだ。
弟のゆうまは1ヶ月前にこの世を去った。
あまりにも突然の事で、全く実感が沸かなかった。
…というか、葬儀の間も俺の隣にはゆうまが笑顔で立っていたのだから、実感が沸くはずもなかった。
この事は誰にも相談できなかったし、他の人にはゆうまは見えていないようだった。
「…お前、本当にゆうまだよな?」
と聞いたところで、
「何言ってんだよ、当たり前だろ?かずま」
と毎回ケロっと返される。
この1ヶ月でたまに現れるゆうまの事を、俺は自然と受け入れるようになってしまっていたのだった。