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第四十話 再会

 地の大精霊と別れた後、ジーン達はミィの家に戻ってきていた。ちなみに、精霊達はジーンが召喚しなくても勝手に出てきている。ジーン、精霊自身が成長した証だとも言える。


「――で、あと約一ヶ月しか時間がないが、後は風の大精霊に会う必要がある」


 そして昼食後、作戦会議が執り行われていた。敵のアジトに乗り込む日付等を確認しつつジーンが言う。必ずこの日にしなければならない、という事ではないがのんびりしている訳にもいかない。ミィへの危険を、排除する必要がある。それに、ミィの家族にかかっている封印の解き方も聞きださなければいけない。


「ちーねぇはどうするの? もう一か月も経ってるけど」


 チャチャが罰としてドラゴン退治……いや、Aランクの依頼十個の達成を課したのだ。連絡は取っているかもしれないが、ミィはそれから顔を合わせていないので心配になったのだろう。


「これから迎えに行く」


『今?』


「これが終わったらすぐだ」


 今どこにチャチャ達がいるか知らないが問題は無い。魔法でちょちょいのちょいなのだ。


「やった! ちーねぇに会えるんだね!」


 余程嬉しかったのか、椅子の上で体を揺らすミィ。たいへん可愛らしい。


「僕たちを見たら、驚く……かな?」


「お、そういえばチャチャの姉御は俺たちの変化を知らないよな」


「チャチャ嬢の反応が楽しみだ」


 精霊組がより人っぽくなったのは、チャチャと離れた後のこと。しかも全員の姿が変わっているため、チャチャの反応が楽しみである。普段大人しいチーやクーも気になっているようで、そわそわそている。


 その後、作戦の変更点も含めてもう一度確認をする。精霊たちの成長で使える選択肢が増えたのは良かったといえる。後はチャチャにも作戦を伝えるだけだ。

 会議が終わった後は、早く早くとミィがせかしてくる。それでもジーンは、いつも通り落ち着いた様子でミィを抱き寄せ魔法を発動させていく。数秒もしないうちに魔法が発動し、カッと強い光がジーンとミィを包みこむ。


 今日は何故か落ち着かなかった。朝からずっとそわそわしている。


「なんだ、今日はいつもより激しいな」


「そんなことっ、ない、ですっ」


 小さな湖のある場所。静かな森の中。二人は拳と拳をぶつけ合っていた。一人はこれでもかというほど拳を連続で打ち込む。一人は余裕をもってその拳をいなす。

 その内の一人は勿論チャチャであるが、もう一人は――

 

「大精霊様ー、もう少しでお昼できますんでその辺にー!」


 大精霊様と呼ばれた男、火の大精霊である。私は火の大精霊に稽古をつけてもらっていた。私はジーンと別れた後、Aランクの依頼をすぐに終わらせた。最初は、終わらせた後にすぐジーン達の元に戻るつもりだった。けど、最後の依頼だったドラゴンを討伐しているときにふと思ったのだ。


「(もし、もしも私がちょー強くなってたら、ジーンにメッチャ褒めてもらえるんじゃね)」


 そして、いつも通りイッチーと相談することなく行き先を決定。

 ちなみにその時、このままだと昔のように自分勝手で仲間が離れていった時のようにならないかと少し心配をしたイッチーである。


「じゃ、ここまでにしておくか」


 私の渾身の一撃を受け止め、にやりとする火の大精霊。うざい。ただでさえ今日は落ち着かないというのに。まぁ、お昼を食べて落ち着こう。


「うふふ、今日は色んな具をパンで挟んでみたのよ」


「要はサンドイッチだ」


 ジーンの周りには料理が出来る人が案外多い。ミィ、チャチャ、フー、スイ、クー、チー、そしてイッチー。クーとチーはちょっとした手伝いができる程度だが、簡単なものなら作れる。まぁそれが分かったのは、つい最近なわけだが。


「お、美味いなこれ」


 肉が挟んである物を食べて火の大精霊が言う。


「あ、それは俺が作ったやつです」


 イッチーが作ったやつらしい。水の大精霊はニコニコしている。


「こ、これも美味いな」


 今度はフルーツが挟んである奴だ。


「……それも俺が作りました」


 それもイッチーが作ったやつらしい。水の大精霊はニコニコしている。


「……」


 今度こそは、と野菜が挟んであるサンドイッチに手を伸ばす大精霊。ここで大精霊は、はっと何かを感じる。


「(俺の好物は魚だ。よって、俺が選ぶべきはこっちのサンドイッチだ!)」


 野菜が挟んである物の奥にあったものを手に取り、かぶりつく。

 

「うめぇ!」


 これだ、と確信する大精霊。


「……大精霊様、それも私が」


「…………」


 固まる大精霊。


「ねぇ、どうしてさっきから私の作った物を食べないの? ねぇ、どうして私の作ったやつを避けたの? ねぇ、どうして?」


 こいつまたやったな。とチャチャは思った。実はイッチーが手伝うようになってからほぼ毎日、このイベントが発生している。


「だ、大精霊様、こちらのもどうですか?」


 イッチーがさりげなく、いや、ストレートに水の大精霊が作った物を皿にまとめて、火の大精霊に渡す。


「おぉ、こっちのは更に美味しいぞ!」


 ちらりと水の大精霊を見やる火の大精霊。


「まあ! それは私が作ったものですのよ」


「お、おう、そうだったのか。またいつか作ってくれよな」


「勿論よ、いつでも作ってあげるわ」


 あー、ジーンも私の作ったやつ美味しいって言ってくれるかな。いつもミカ君はそう言ってくれてるけど。昔に比べれば、上達したと思うんだけどな。たまーに失敗するけど。


「ごちそうさまでした」


 さて、昼からは水の大精霊様との修行だから気合い入れてかないといけないな。もう少しで合格貰えると思うし、頑張らなきゃ。


 気合いを入れ直すチャチャ。ジーン達は火の大精霊と修行をしたが、チャチャは水の大精霊と修行をしている。内容は回復魔法だ。

 今までは擦り傷が治るかなー、どうかなー。程度だったものが、今では骨折ならすぐに直せるほどになっている。疲れもある程度取れる魔法や、軽い病気を治す魔法、よく眠れる魔法まで習得済みだ。


「本当は何がどうなって、何をどうすればいいのかってきちんと分かって欲しいんだけど、魔法って便利よねぇ」


 今回はそこまで望んでないと水の大精霊は言う。今は魔法を発動させるのが先。症状に合わせて適切な魔法を発動させる事が出来れば合格だと。


「あとは、離れてても回復させられる方法をマスターしてもらいます」


 今は三十センチほどが限界のチャチャ。成功すれば数十メートル先に対象がいても大丈夫になる。方法は意外と簡単で、回復させたい人と契約で繋がりを持てばいいそう。後は、どれだけその人を大切に思うかどうかだそうだ。尊敬、好意、憧れ、愛情が大きいほど距離が伸びる。

 水の大精霊は、火の大精霊相手なら数キロ先でも問題ないらしい。本当かどうかは知らないが。 


「まずは、あの子にやってみましょうか」


 水の大精霊はイッチーを指さして言う。契約は既にしているからやってみてと言われ、チャチャは取り合えず試してみる。


「お、何か急に体が軽くなった気がする」


 成功だ。距離は十五メートル程離れているかどうかといったところ。水の大精霊によればある程度の仲ならこのくらいは問題ないらしい。


 契約法も教えてもらったし、ジーンやミィとも契約しなきゃいけないなぁ。


 チャチャがそんなことを思っていたら、湖の近くで何かが光る。なんだなんだと皆で近づき、警戒する。


「ここは、どこだ?」


『ジーン、水の大精霊様のとこだよ』


「ちーねぇはここにいるの?」


「ここに飛んだってことは、そのはずなんだけど。まあ探してみようか」


 大精霊達に背を向けてジーン達が話す。何故ここで働かないのだジーンのレーダーよ。ミカは気付いているが、あえて言わなかった。

 会話は聞こえていなかったが、チャチャは滅茶苦茶混乱していた。折角驚かせようとしたのに、今会っていいのか。そもそも何でここに来たのか。ジーン達が振り向く数秒の間に無数の選択肢が生まれる。


「あ、」  


「お、そこにいたのか。えっと、大精霊様こんにちは」


 時間が待ってくれるはずもなく、すぐにジーンに発見されてしまうチャチャ。目が点になっている。


「っ、ちーねぇ!」


 そして、気持ちを隠すことなく爆発させチャチャの胸に飛び込むミィ。チャチャが下になる形で倒れこむ。ぐふぅ、と空気がチャチャの口から漏れたのは気のせいではないだろう。


「い、良い子良い子」


 気合いで痛みを堪え、ミィの頭をよしよししてあげているチャチャ。今日は長い髪を横でまとめている。サイドテールミィ、可愛い。と思ったチャチャ。なので、その髪が顔に倒れた際に覆いかぶさってしまったのも全く気にしないのだ。


 その後は各々状況を説明しあい、これからのことを話し合った。驚かせるという作戦が潰れたチャチャの元気がなかったのは、少しかわいそうだった。とイッチーはミカとミィにこっそりと話した。




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