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俺には精霊がついているらしい  作者: あいえる


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第三百十三話 「  」へと排除します/null


 隔離された空間への干渉など可能なのか。

 まずそもそもどうやって隔離されているというのか。


 いや待てそれよりも隔離とは一体どういった状態であるのか。


 魔力による結界や封印の類であるのか。

 それとも全くの別の要素を含んだものであるのか。


 神やそれに近い特別な存在だからこそ可能な技術であるのか、卓越した技術があれば誰でも可能であるのか。


「私に与えられた権能の一つ、と言えば理解できますか」


 神に与えられた力。世界に大きな影響を齎す力。

 唯一の能力(オンリーアビリティ)を行使した結果だと世界の意思は語る。


「一種の不具合とも言えます。想定外の挙動を前にして世界が選んだのは“保留”することでした。私に与えられている排除の力はあまりにも大雑把な能力なのです」


 それは対象を取り除く、押しのけるといった能力。

 誰を、何処から何処へと押しのけるのか。


「ほら、こんな風に」


「うおっ!?」


 世界の意思はジーンへ向けてデコピンをするように指を弾く仕草をしただけ。

 それだけで座っていた椅子から強制的に吹き飛んでいくジーンなのであった。


 ダメージはない。痛みは無くそれによって怪我をすることもない。

 本当にただその場から排除するだけの能力。


 机の上の小さな埃を息で吹き飛ばすような。道に転がる小さな石を蹴とばしてしまうような。


「気に入らない者を目の前から消してしまう。ほんと、子供が考えそうな力でしょう?」


「愚痴はいいから。それで、どうしてその力が隔離に繋がるんだ?」


 爪弾きにされたジーンは損な役回りを不幸に思いつつ問う。

 そして、ジーンが椅子へと座り直すよりも先に世界の意思は返答を。


「何処へと押しのけるのか。指定はしなくとも無意識の内に多くの場合は視界の外へと押しのけるだけで終わります。指で弾いたら、足で蹴ったらどれくら飛ぶのか……なんてイメージが優先されることもあるでしょう。いちいちこの場所からこの場所にと全てを指定するのは面倒ですから、適当でも問題はないということです」


 歩くとき、歯を磨くとき、誰かを視線で追う時。

 何もかもを意識しているわけではないが、なんとなくできているそんな具合。


「ただ、意識をすれば意図的に悪さをすることもできるのです」


 それは歩幅を調整するように。どこの歯をどの角度でどのくらいの力で磨くのか、誰のどこをいつまで視線で追い続けるのかといった具合に。

 意識をすれば、力の使い方さえ知っていれば調整など自在ということ。


 そして、今度は世界の意思は問う。


「排除した後の場所を意図的に指定しなかったらどうなるのでしょう。力は行使されない? さっきみたいに近くに吹き飛ばされるだけに終わる? それとも、別の世界へと飛ばされてしまう?」


「普通に考えれば何も起きない、失敗するなんだろうが……まぁだったらわざわざ言わないよな」


「そう。たとえ神に与えられた力でも他世界に干渉できる可能性はゼロ。権利が無い、仮に権利があっても必要になる膨大な魔力も用意できません」


「それは世界の意思である母さんでもか」


「あらあら、こんな私でも母と呼んでくれるのですか?」


「茶化すなよ。ただの気まぐれだ」


「うふふ、そういうことにしておきましょう。話を戻しますが、たとえ私であっても無理でした。膨大な魔力は有れども権利がありませんでした」


 もっとも、他世界に干渉できる存在など神である創造神ですら不可能なのですが。と、世界の意思は付け加える。


 当たり前のように他世界が存在することを明かしているのだが、今更気にすることでもないのか。


 別の可能性の未来や過去ではなく、全くの別の世界。魔力に縛られることなく生きる世界があれば、より濃い魔力に晒されているせいで崩壊寸前の世界もあるのかもしれない。

 そんな風に頭の片隅で浅い想像を浮かべるジーンなのであった。


「ただ、この世界もご存じの通り完全ではないのです。抜け穴があったのです」


「穢れがどうのって話じゃないんだよな、それは」


 世界の意思は小さく頷くことでジーンの言葉に同意を示す。

 既に彼女の顔は我が子との会話を楽しむ母の顔を見せていた……ような気がするのは考え過ぎか。


「何がどう悪さをした結果なのか詳細など知りません。しかし、結果として“この世界ではない場所”へと排除できてしまっているのです。『もう訳分かんないし、世界と世界の狭間にでもちょっとの間だけ置いておこうかな!?』みたいな感じなのでしょうか」


「すごい曖昧だな……」


「何もかもを全て把握しているわけじゃありませんからね。もし全知全能であるのならば、こんな状況にはなっていませんから」


「それもそうか」


「今、ものすごく落胆しましたね失望しましたね。悲しい事この上ないのですが」


 最初の第一印象からして良くはなかったぞ? なんて口にすればどんな嫌がらせをされるのか分かったものではない。

 ここまでお膳立てしたのにちゃぶ台を返すなんてことはしないハズだが、うっかりが何に繋がるのか考えればキリがなく。


 訂正と謝罪をもってして事を穏便に済ませ、話を戻すジーンなのであった。


「それで、そんな曖昧な場所を正確に把握してるのか? ミィを確実にそこから救えるのか? やってみたら別の変なモノが出てきましたじゃ困るんだが」


「心配無用です。どんな場所であれ所謂住所のような情報はありますから。何がどこにあるのか、という情報は掴んでいます」


 と、ここで世界の意思が何やら自慢げな顔を見せびらかす。


「担当は彼女なので。では、あとは任せますからね」


「おう、よろしくな。このクソの妹だと思ってくれればいい」


 ぬるっと床から出てきたように見えたのは気のせいじゃないだろう。

 世界の意思そっくりの顔を持ったそれでいて世界の意思よりも身長が低い女性は、機嫌の悪そうな表情を隠すことなく出会いの挨拶を済ませるのであった。



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