第三十三話 試験(終)
試験十日目。
「……はぁぁああ! ぬぅぅう……」
『……ハァハァ……ヒイヒイ……』
「ふむ、大分時間も伸びてきたな。といっても、まだ一時間程度が限界、か」
火の大精霊の試験は十日目に突入していた。最初と比べれば魔力の圧縮を上手くできるようになっているジーン達。具体的に言えば、攻撃範囲が数十メートルから一キロ前後にまで広がった。
「よし、そこまで。休憩しよう」
火の大精霊が合図をすると、二人は慎重に魔力を圧縮を開放していく。ちなみにジーンは三度、ミカは四度この作業で爆発に巻き込まれている。
魔力を開放し切った二人は大の字になってその場に寝転がる。
「二人ともお疲れ様。はい、これ飲んでね」
すると、ミィが二人に魔力回復の効果がある飲み物を渡す。これは一気に回復させるというもではなく、自然回復の手助けをするというものだ。これはミィが作ったものであり、水の大精霊との勉強会が早くも役に立っている。
「ありがとう、でもこれ、もうちょっと味を何とかできないのか?」
『確かに、ちょっと苦いね』
味優先ではなく、効果優先で作ったので何とか飲めるといった感じなのだ。しかし効果は抜群なのでジーン達も味は我慢しているのだ。
「それくらい我慢してよね。効果が薄くなるよりいいでしょ?」
「確か、味も良くしようとすると効果が半減……するんだっけ」
ジーンの言うように、味を考え出すと色んな物を余計に入れる必要があり、それぞれが本来の効果を邪魔し合うようになるんだとか。水の大精霊は効果優先の考えなので、ミィも影響されたのだ。
しばらく休んだ後はまた魔力の圧縮をし続ける。これを日に何度も繰り返していたのだ。
試験十日目、成果――最高一時間、薬効能UP、薬の飲みやすさDOWN。爆発二回。
試験十二日目。
「ふー、大分慣れてきたな」
『そうだね、ちょっとだけだけど、話す余裕も出てきたし』
汗を流しながら二人が言う。
「この試験もあと少しで終わりそうだな! だが、油断してまた爆発するなんてことが無いようにな!」
試験十二日目、成果――最高一時間と十五分。爆発一回。
試験一七日目。
「それで、その後にミカが注意を引きつけて」
『ジーンが殲滅、って感じだね。ちーねぇ達はどうするの?』
「奴らが逃げられないように、結界を張ってもらう。後は俺と同じように奴らの相手をしてもらう」
ジーンとミカは魔力を圧縮させながら作戦会議が出来るぐらいにまで成長していた。一時間維持が大きな壁となっていたが、それを乗り越えたら飛躍的に維持できる時間が伸びたのだ。
「うむ、三時間経った。合格だな!」
火の大精霊が腕を組み、声を張って言う。
「今のお前たちならば、最初に俺が見せたように出来るだろう。この試験はあくまでも魔力のコントロール技術向上が目的だったからな。火属性以外でも色々試してみるといいだろう」
「ありがとうございました。これからももしかしたら力を借りるかもしれないですけど、その時はお願いしますね」
『また今度僕の活躍聞いてよね! 楽しみにしててね!』
二人はそれぞれ想いを伝える。
「ジーンに最後一つ。お前は精霊に愛されてるということを忘れるな。同様に、お前から愛してやるのもな」
火の大精霊からそう言われて、ジーンは少し考える。
「(ここ最近はあんまりフーやスイ達に構ってやれてないな……よし、明日は思いっきり遊んでやるか)」
『僕も忘れないでよね、ジーン!』
ジーンが考えていることがミカには伝わったらしく、ニコニコしながら言う。
「ああ、勿論さ……ミィの事も忘れてないから安心しろ」
ジーンは視界の隅でもじもじしていたミィに気づいて、声をかける。するとミィは、嬉しそうに顔を少しだけ赤らめて頷く。
「それでは、俺達はこの辺で失礼しますね」
ミィとミカもジーンに合わせて頭を下げる。
「うむ、またいつでも来い。歓迎するぞ」
「じゃあね、ミィちゃん。楽しかったわ」
三人は光に包まれて火の大精霊と水の大精霊の前から消えていった。
チャチャ「ジーン覚醒しなかったね」
ジーン 「チャチャ達がテキトーなこと言ってただけだからな、俺は悪くない」
イッチー「まぁそうだけど、ちょっとは楽しみだったっていうか……」
ミィ 「イッチーも楽しみにしてたんだ」
ミカ 『皆期待してたんだね、僕もだけど……』
ジ 「え、皆期待してたの?」
ミカ 『だって……覚醒だよ?』
イッチー「憧れっすよ、男の……」
ジーン 「……まじか」
ミィ 「ジーンのカッコいいとこ見れると思ったのに……」
チャチャ「ねー……ほんとに残念」
ジーン 「何か、俺が悪い気がしてきた」
ミーチャ「まぁ、皆落ち着いて。それよりもチャチャ達が何か企んでるみたいだけど、気を付けてね」
イ・チャ「「!!??」
ジーン 「ほぉ……詳しく教えてくれ」
イッチー「や、やだなぁ。今俺達はジーンさんの罰を実行中で……」
チャチャ「そ、そうよ! 疑うよりも、むしろ褒めて!」
ミカ 「罰を受けてた時点で、褒めるっていうのはおかしいんじゃないかな……?」
チャチャ「……ということで次回! 二人の秘密!?」
ミィ 「あっ、逃げた」