第三十ニ話 試験(4)
二日目の試験が始まった。
「うおぉぉぉぉ!!」
『でりゃあぁぁ!!』
「もっとだもっと! 気合いが足らんぞ!」
叫べば出来るわけじゃないが、それだけジーン達が気合いを入れている証拠だ。一日目で維持できた時間は最高五分。まだまだ先は長い。
「それでね、これを混ぜるの。これだけで、効果が格段に良くなるわ」
「うぅ……あんまり美味しくはないですね……」
「もう、贅沢言っちゃダメよ。味何ておまけなんだから」
ミィも知識を増やしているようだ。
本日の成果。最高八分。体力強化剤(飲み薬)・魔力強化剤(飲み薬)効能UP。
三日目の試験開始。
「おっしゃあぁぁぁ!」
『ぬおおぉぉぉ!』
「足りん! もっと魔力を込めるのだ!」
「うぅ……くっそ……!?」
ジーンの作っていた魔力球が突然輝きだした。
「ふむ……退避!」
火の大精霊はミカだけを連れて結界の外に出る。
「しまっ……」
結界内で凄まじい爆発が発生。勿論ジーンは逃げる時間もなかった。
「ど、どうしたんですか!?」
「なに、ジーンが爆発しただけだ。心配するな」
いやいや、流石に今のは心配するだろうと思うミカ。
「えっ、ばく……早く助けないと!」
爆発と聞いて慌てて結界内に入ろうとするミィ。しかし、それは火の大精霊に腕を掴まれて阻止される。
「とりあえず落ち着け。今あの中は窯の中のようになっている。お前が行っても一緒に焼かれるだけだ」
そう言われても納得できるはずもなく、遂には泣き出しそうになるミィ。
「大丈夫よミィちゃん。きっと怪我はしてるかもしれないけど、多分生きてるから」
きっと、とか多分とか曖昧な表現は止めて欲しいと思うミカ。
「俺が行ってくるから待ってろ」
そう言って火の大精霊が結界の中に入っていく。そして、数秒後すぐにジーンを抱えて戻ってきた。しかし、黒く焦げて腕も片方吹き飛んでしまっていた。あの爆発でこれだけ残っていれば幸運なのかもしれないが、そんなことミィには関係ない。
「ジーン! ねぇ、ジーン!」
ミィは声をかけることしか出来ずにいる。ミカはそれを見守っている。
「辛うじて生きてはいる。……後は頼むぞ」
火の大精霊は水の大精霊に向けて言い、そっと水の大精霊の前にジーンを置く。
「まぁ! 結構酷いわね。久しぶりにあの薬の出番かしら」
水の大精霊が言う薬はどんな傷でも治るとされているものだ。腕が吹き飛ぼうが首がと身体がサヨナラしようが全て治る。そして、何のリスクも無い夢のような薬だ。千年に一度作れるかどうかの滅茶苦茶貴重なものではある。
水の大精霊がその貴重な薬をジーンに振りかけた。すると、みるみるうちに傷が治っていき、焦げた肌も元に戻っていく。
「これで、しばらくすれば目を覚ますと思うわ」
「それまではゆっくり休ませておけ」
『それならお家で寝かせとこうよ。ミィもそこで一緒にいてあげて』
火の大精霊に確認を取り、ミカがミィとジーンを連れて転移する。行先はミィの家である。家の中に転移してからジーンを魔法を使ってそっと運ぶ。そしてベットに寝かせるミカ。
「じゃあ、僕は戻るからジーンが目を覚ましたら教えてね」
「分かった。ミカ君も……気を付けて」
ミィを安心させるように、ニコッと笑い火の大精霊達の元に戻るミカ。結局、ジーンが目を覚ましたのは日が落ちかけ暗くなり始めた頃だった。ジーンは夕食を食べて特に体調も悪くないことを確認してから、明日に備えて休むことにした。
「ミィには心配かけちゃったな」
「そうだよ、とっても心配したんだから……ジーンが死んじゃったら、目を覚まさなかったらって悪いことしか考えられなくて……」
「……ありがとな。ずっと傍にいてくれたんだろ」
「……明日も行くの?」
「ミカに差をつけられちゃうからな。それに時間に余裕があるわけでもないし」
「そう、だね。うん、頑張ってね! あ、でも死にかけるのは困るけど」
ミィは休んだ方が良い、という言葉よりもジーンに声援を送っていた。
「大丈夫……とは言えないけど、善処するよ」
善処する、便利な言葉だとジーンは思う。ミィもジーンの言葉を聞いて、この分だともう一回死にかけるかもと覚悟を固める。その後話を少ししてから寝た。
イッチー「今回も俺達の話は無かったみたいだな」
チャチャ「もう! でっかい虫とか鳥の大群とか相手にしてたのに」
イ 「色んな魔物が合体した奴とかな。まぁ、この分だと書かれることは無いな」
チャ「あー、早くジーン達に合流したいー」
イ 「後五つじゃねぇーか。やる気出せよ」
チャ「そうは言っても、全然見つからないじゃない。依頼自体が無いんじゃどうしようもないよ……」
イ 「……俺からの提案なんだけどな」
チャ「期待していいの?」
イ 「勿論」
チャ「聞いてあげましょう。……ふむふむ、はぁ、なるほど、おお」
イ 「どうだ?」
チャ「それ採用」
イ 「というわけで次回、ジーン覚醒!?」
チャ「期待しないで待っててよね!」