第三十話 試験(2)
「なるほど。試験、というよりは修行って感じですね」
大精霊の話を聞いて、ジーンが言う。内容としては、魔法を習得する為に色々なことをやるらしい。他の大精霊の試験内容も似たようなものとのこと。
『どうして試験って言い方をしてたの?』
「特に意味はないぞ」
「何も考えてなかったともいえるかしら」
ミカの疑問に大精霊二人は笑って答える。前に会ったときはしっかりした人達かと思ったが、そうでもなさそうだとジーンは思った。
「ま、なんだ。早速だが始めていくか。時間もそう無いんだろ?」
一応、こちらの事情も話してある。だからといって、大精霊達から積極的に干渉してくれるわけじゃないが。
「それなら場所を変えましょうよ」
水の大精霊が提案をする。
「場所、ですか?」
ミカとジーンは何となく分かったようだが、二人に初めて会うミィが聞く。
「もっと見晴らしがよくて、私の好きな場所よ」
「確かに、そうしてもらえると助かります」
『僕もあっちの方が好きかも』
ジーン達は水の大精霊の意見に賛成する。
「俺はこっちも好きなんだけどな……」
火の大精霊はここで生まれたということもあって、この場所が気に入っているよう。しかし、水の大精霊に「何か文句でも?」と言いたげな視線を貰い、仕方なく賛成する。
『……水の大精霊は怒らせると怖いから気を付けないとな』
『え、そうなの……? 優しそうな人だけど……』
『前来た時はすごかったからね……みーねぇも気を付けてね』
三人は通信魔法まで使って情報を交換する。
「あら? ミカ君たちも何か言いたそうね?」
『そ、そんなことないですよ。お二人は仲が良いなぁと思っただけで……ね、ジーン?』
おいミカさんや。俺まで巻き込むな。
「えぇ、何か秘訣でもあるのかなぁ、と思いまして」
「……ふふっ、もぉ二人とも恥ずかしいじゃない」
……危なかった。精霊は魔力の流れとかに鋭いからな。気をつけなければ。
何はともあれ、満場一致? で場所を移動することが決定。
「それじゃあ行きますね」
水の大精霊が魔力を高め、ジーン達は青白い光に包まれていく。光が治まったときには、ジーン達はそこから転移させられていた。
その頃チャチャとイッチーは……
「よし! これで二体目!」
激しい爆発を背にチャチャが言う。
「何が“よし!”だよ! 二体ともほとんど俺がやってんじゃねーか!」
少し離れた所から、イッチーが文句を言いながら近づいてくる。
「そんなことないでしょ。魔力はほとんど私のを使ってるんだから」
「確かにそうだが……納得できねぇ」
二人はジーン達と別れてから、最初にミーチャのいる街に行った。ジーンに罰としてAランクの依頼十個達成を言い渡されたので、情報を集めるためだ。Aランクの依頼があればよし、無くても情報を貰えればよしという考え方だ。
運良く二つもAランクの依頼があったので、今は早速とばかりに討伐に来ている。
「さ、早く戻って休も? お腹空いちゃった」
チャチャは流石に三つ目の依頼に行こうとは言わなかった。決してお腹が空いたからではない。
「はぁ、そろそろ一人で転移できるようにしろよな」
イッチーはまたか、と思いつつ場所を探り始める。一応チャチャ一人でも転移は出来る。出来るのだが、チャチャの転移は不安定なのだ。空高くに移動したり上下逆さで移動したり。本来、目印めがけて転移するので転移場所がずれるなんてことはありえないのだが……チャチャには常識が通用しないようである。
「練習はしてるんだよ? 数キロ程度なら大丈夫なんだけど、それ以上になると何か出来ないのよね」
努力はしているのだが、なかなか報われないチャチャである。
「……ま、暇な時になら練習付き合ってやるぞ」
「ありがと。それよりも早く戻ろ」
素直に感謝されてしまい、むずがゆい思いをするイッチー。
「それじゃ、行くぞ」
二人は光に包まれ、ミーチャへ依頼達成の報告をしにムロマリへと転移した。
ミカ『次回、遂に試験に突入するよ!』
ジーン「やっとだな」
ミィ「ジーンもミカも頑張ってね! でも、その間私は何してれば……?」
水の大精霊「うふふ、私とお話でもしてましょうよ」
火の大精霊「俺も混ぜてくれ。俺もミィには興味があったんだ」
水の大精霊「……へぇ、私の前で堂々と。浮気かしら?」
火の大精霊「へっ? いや、そんなつもりじゃなくて」
水の大精霊「言い訳無用! お仕置です!」
火の大精霊「あ、いや、ちょっと! まっ……」
ジーン「っというわけで! お楽しみに!」