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第二十八話 試験(0)

「ま、俺たちも出来ることをやっておかないとな」


 残り時間は約二か月間。少しでも早く用事を片付ける必要がある。


「私たちは何するの?」


 近くに川が流れている場所で、お昼ご飯を食べながらミィが聞く。魔物が近寄らないように結界はしっかりと張ってある。


「ミィはこれまで通り傷薬の調合をしてくれればいい」


 魔法が使えないミィが、何か役に立ちたいと言って勉強してきたことだ。精霊との繋がりを強めてくれた時点で貢献してくれているのだが。といっても、今ではミィが作る薬が重要な物になっているので、とても助かっている。


『街で売ってる物より質が良いからね。それに、魔力を回復させるやつなんて作れるのみーねぇだけでしょ』


 ミカは小動物とのふれあいを楽しみつつ言う。


「そうだな。ほとんど副作用が無いのはありがたい」


 一応、魔力回復薬は街でも売ってはいるが何かしらマイナスの効果が出てしまう。眩暈がしたり手足が痺れたりするのだ。それでは戦いの最中に使えないので意味がない。安全な場所を確保してから使うのが普通だ。


「小さい頃はよく使っていたが……今は絶対に使いたくないな」


 最初にミィから渡された時は驚いたが、飲んでみてもっと驚いた。頭の痛みや痺れなどの身体的異常が無かったのだ。さらに、魔力を使った後の気怠さが収まっていった。

 

 ここで考えるのは、売りに出せば必ず儲かるだろうということ。しかし、それは実行されることは無かった。理由としては数を多く用意できないこと。あまり目立ちたくは無かったということ。そこまでお金に困っていなかったこと。等々いくつかあった。


「……ジーンはどうするの?」


 食べ物を飲み込んでから話し始めるお利口なミィ。 


「前にも行ったところばかりだが、大精霊に会いに行く。そして、試験……だっけ? それを受ける」


『昔行ったときは、実力が足りてないとか言われちゃったんだよね』


 大精霊様いわく、世界にはジーンよりも強い人……というか生き物がまだまだいるらしい。人の中では一応ジーンが一番強いみたいだが。


 そんなジーンでもまだ実力が足りない試験なんて想像もつかないでいた。しかし、あの時よりも精霊との繋がりも強くなっているし、様々な経験もしたので今なら受けさせてもらえるだろうとジーンは考えている。


「ちーねぇも依頼が終わったら受けに行くの?」


「勿論だ。受けさせてもらえるかは分からんけどな」


 試験に合格すれば更なる力が得られるみたいなので、試さないよりはいいだろう。失敗しても死ぬことは無いと大精霊達は言っていたし。


「移動は魔法があるから大丈夫だし、どこから行くの?」


『最初は火と水の大精霊様だよ』


 大精霊は、特に力が強い精霊という認識でいいらしい。王様というよりも、兄ちゃんとか大先輩とかおじいちゃんみたいな立ち位置のよう。


「ここから一番近いとこにあるし、一番頼りになりそうな感じだったからな」


「……確かに、今まで会ったことのある大精霊の中だと、しっかりしてるのはあの人たちだけかもしれない」


 大精霊は地水火風の四つの種族だけでなく、例外と呼ばれていた他の種族もある。ジーンはそちらの試験も受けるつもりだということをミィに伝え、出発の準備もといお昼ご飯の片付けを開始。

 

「今日はチャチャがいないから、洗い物が少ないな」


 使った食器などを水で洗いながら、ジーンが言う。


 お皿を浮かせ、水の玉で包み込ませる。お皿を傷つけないよう、それでいて汚れが落ちるように水の流れを調節をするジーン。それを一気にやっているため、ジーンの周りには十数個の水玉が浮かんでいる。


 これは、ミィ達がご飯を作ってくれるようになってから始めたことだ。今では当たり前のようにこなしているが、最初は皿が割れたり汚れが残っていたりとしていた。

 実はかなり高度な技術で、チャチャは未だにマスター出来ていない。ちなみに、イッチーからしたら出来ない理由が分からないらしい。


『ちーねぇは沢山食べるからね』


 ミカは小動物たちに水のシャワーを浴びせながら言う。モフモフした奴や、左右に角の生えた奴などがいて、みんな可愛い。たまに魔物が混じっていることがあるのだが、今は結界に反応していないので問題ないようだ。


 動物と魔物の違いとしては、魔力を持っているかいないかである。見分ける方法としては、ジーンのように結界を張っている場合やレーダーを使っていれば、それらの反応を見れば分かる。

 

 魔法が使えない人たちは、魔物の目を見て判断するしかない。魔物の目は、微妙に色が違うのだ。しかし、遠くにいる生き物が、動物なのか魔物なのかを判断するためだけに近づくことは普通しない。それに、違いも本当に微妙なので慣れない人は全く分からない場合が多い。

 なので、見た目ではほとんど分からない場合が多いので、安易に近づくのは危険とされている。


 片付けが終わった後、ジーン達は移動の準備を始める。準備と言っても、魔法を使うのでジーンの近くに集まるだけだ。


「よし、始めるぞ」


 一応ジーンが確認を取る。ミィもミカも問題ないようなので、ミカとジーンが魔法を発動させていく。


 一言でいえば、一瞬で目的地に移動する魔法だ。一度行ったことのある場所ならどこにでも、という魔法ではなく、移動するための”目印”を残した場所に行ける魔法だ。


 今回は大精霊のいる場所へ転移する。距離的にはジーン一人の魔力でも十分なのだが、試験のことを考えてミカと二人で魔法を発動させることにしたのだ。

 

 すぐに魔法は発動し、三人の姿が消えていった。

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