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第百六十七話 襲撃の裏側~極秘任務開始その三~


「というわけで、彼女らとともに敵襲の対処を行う。君達はそのサポートをしてもらうつもりだ」


 うーちゃんが落ち着くのを待っていたら日が暮れる。話の途中だろうと何だろうと、ここは自分が進めなければと思った神子が発言する。

 戸惑いそして騒がしい一室に、落ち着きが戻ってくる。神子の言葉にハッとしたのか、ミーチャも冷静さを取り戻したようで引き締まった表情へ。


「えー、もう始めちゃうの?」


「えと、あの中は絶賛戦闘中だと思うから早いとこ助けに入ってあげたいんだけど」


「ふむ、貴様の推測はいい線いっている。だがな、それよりも優先するべきことが目の前に転がっているだろう」


「あ、はい……」


 神二人相手では神子ですらタジタジのご様子。というかそれが当たり前であるのだろうか。ジーン達はもう慣れてしまったのか、あまり特別扱いをしていないのだが。いや、最初からそこまでであった気もするが。

 しかし、状況的に一大事であることには変わりない。ズルズルと長引かせるのは得策ではないことは、うーちゃんもせーちゃんも理解していることではあった。


 ただちょっと自身の欲求を押さえられなかっただけで。


「お嬢様、お戯れはそのあたりに」


「お菓子の準備ができましたが、お召し上がりになられませんか?」


 うーちゃんらをよいしょするように、ドーシルとドートが神子をフォロー。いつの間に用意したのか、うーちゃん好みのお菓子を並べていた。


「うわぁ! すごいのです! ありがとうなのです!」


 食欲には負けてしまったようで、すんなりと大人しくなるうーちゃんであった。彼女の扱いを理解している二人だが、実のところ神子と同じようにしているだけであるのは内緒である。


「せーお嬢様もこちらに」


「お、私もいいのか」


「はい、存分にお楽しみください」


「ラッキー☆ ありがたく貰うよ」


 当然、うーちゃんだけでなくせーちゃんの分も用意してある。いつもはおちゃらけているドーシルも、執事さながらの所作。

 ドートなんかはぎこちなさがあるものの、彼が普段見せない行動である。おぉ~、と小さく感嘆の声が漏れるほど。


 見様見真似でも、その雰囲気だけでうーちゃんもせーちゃんも満足なのだ。


 ドーシルとドートのおかげで大分柔らかい空気になる。そのことに心の中で感謝の言葉を述べ、次は自分の番だと意気込む神子であった。


「それで、作戦とかあるのですか?」


「そうだね……あの黒い靄の正体を掴まないとなんだけど、それはうーちゃんとせーちゃんを頼らせてもらう」


「ま、あれは私達ぐらいにしか対処できない代物だからな。任せておけ」


「ちょーっとだけ、頑張っちゃうのですよっ」


「だから、作戦といっても君たちはいつもとやることは変わらないね。サポートがメインだよ」


 極秘任務とは言うが、内容自体は特別大きく変わることはなかったりする。重要なのは、秘密にすべき情報があるという点だけ。


 秘密にすべき情報とは、うーちゃんとせーちゃんの存在だ。


 神が実際に存在し、力の恩恵を受けられると広まれば大きな混乱を引き起こす原因となるだろう。


 神二人が個々人の願いを叶えるのかどうかなど、そこは問題ではない。もしも国を挙げてその力を奪いにきてしまえば、否応なしに戦闘が発生してしまうことは間違いない。

 極端な例を出すのなら、神子らが世界征服など考えていなくとも、事情を知らぬ者はその可能性を考慮すべき状況になってしまう。他国と協力してでも打ち倒すべき共通の敵、という立ち位置になってしまう可能性もある。そんな状況になってしまうのは避ける必要があるというわけだ。


 全て打ち明けて、全面的に無害であると主張するのはどうか。一部はそれで納得する者も出てくるのだろうが、良からぬ思いを抱く者も少なくないだろう。

 信用してもらうために割く時間や労力を考えれば、最初から公表はしない方が良い。なんやかんやを処理する面倒さが段違いなのだ。


 ひっそりと動いて、ひっそりと終わる。それくらいが丁度いいのかもしれない。


「じゃ、また会える時があったらよろしく」


「さよならなのです~」


 突発的に発生したお茶会的な。その最中であったのだが、これまた突然に別れを告げる神二人。


 タイムオーバーであった。リィの顕現による効果が切れ、間もなくミーチャ達からは認識されなくなるということだ。

 認識されないとは言っても、見えない触れられないようになるだけ。綺麗さっぱり記憶が消えるだとか、思い出せないだとかにはならない。


 すぅ~~っと消えていく二人の様子を眺め、最初から最後まで呆気にとられているミーチャ達であった。


「あはは、流石の君達でもついていけなかったかな」


「いえ、その……すみません」


「いいっていいって、僕もはじめましての時はそうだったからね」


「神子様はずうっと私の手を握ってたもんねっ」


「一言で言えば、怖かったのでしょうね」


「余計なことは言わなくていいってば!」


 ここで笑いあえる環境というのは良いのか悪いのか。部隊の動揺を拭う意図はなかったのだが、結果的には神子のおかげで場の空気がいつもの調子を取り戻すきっかけに。


 各自持ち場へと散っていき、各々が全力サポートのために動き出す。若干勝手が違ってくる部分に関しては、改めて説明ないし指示が下るのだが、それにしても手際が良い。

 神子が直接動いているプラス、部隊KINAKOMOCHIが高練度の域に達しているからこそであった。


 そうなってくると、いつも以上に暇を持て余す人間が出てくるわけで。


「ん~~っ……」


 椅子の上で伸びをするのは、ミーチャ。一番偉い神子が働いているというのに、相も変わらずのマイペースであった。


「あっはは、あなたは変わらないねっ」


「私が働くほど仕事が増えるらしいんでね。大人しくさせてもらってるのよ」


「ふむ、それは貴様が有能過ぎるが故なのか……その逆なのかどちらなのだろうな」


「それ私に言わせます?」


「冗談だ」


 自分達は働いているのに、指揮官がくっちゃべっているこの状況に不満は出ないのか。出ないのだ。その方がマシだと知っているからこそ、逆に安心して働けるらしい。


 それにこの兄妹とミーチャは付き合いが二年になる間柄。毎日のように顔を合わせ会話もしていれば、軽い冗談もほいほいと出てくる。基本ミーチャがからかわれる立場ではあるが。

 ただただ雑音で邪魔な時もあるとのことだが、会話だけでも笑える時もあり作業BGM的な役割も担っているのだとか。


「ふむ、冷静だな」


「まぁ、これでも付き合い長いからね」


「心配じゃないの?」


「心配するだけ無駄だって、身に染みちゃってるって感じ。また帰ってきてくれるって、不思議と思えるんだよね」


 ごちそうさまです。


 定期的に惚気を聞かされてお腹いっぱいな職員達の気持ちなど知らず。自身の話が惚気であることなど気付きもしないで。


 そんなこんなで極秘任務は進んでいき。それはもう順調だったのだが、途中でで問題が起きることになる。


 ――――! ――――!


「反応ロスト! 封印はおろか、既に彼女の姿はありません!」


「施設内の検知開始します……反応なし!」


 タイミング的には、うーちゃんとせーちゃんが隔離されていたあの空間へと入っていったところだ。そして、ジーンやチャチャがばたんきゅ~していたタイミング。


 もっと言えば、ジーンの力が弱まったタイミングだ。


 それは計測装置を誤魔化すことができなくなったタイミングということ。


 つまり、警報が鳴るほどの問題を起こした犯人はジーンであるということ。


 つまりつまり封印を解いた犯人がジーンであるということであり、その封印されていた人物と言えば。


 彼女しかいない。



襲撃の裏側~極秘任務開始~に関しては、後々大きな修正及び削除される可能性があります。ご了承ください。

サイドストーリー的な認識をしていただければと思います。

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