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第百二十四.?話 一方その頃6


視点 ???



「弟子の成長を見られるってのは良いもんだな!」


 出来得る限界まで気配を消していたはずなのに、とびきりに笑い飛ばすのは。


 勿論、そんな大声で気付かれるようなヘマはしない。古くから磨いてきた技がその程度のことで乱れるわけがな


「ん!? 何だ貴様! どこから――うっ!?」


 乱れるわけがないだろう。


 長く世界から隔絶された空間に居たかなど、関係ない。彼女のドジの前には、かつての仲間も随分と苦労したのだ。全くもって問題無いと言える。


「およ!? 今師匠の気配が……?」


 バレなければセーフ。灰色判定などなく、黒か白の二つに一つである。


 そもそもまず、どうして彼女はコソコソと隠れているのだろうか。彼女の持つ強大な力なら、どんな状況もぶち壊して進めるだろう。にもかかわらず部屋の隅っこでたった一人の少女に熱い視線を向けるだけ。


 ぽわわわわぁ~ん


『お師匠はいかないんよ?』


『お留守番ってのが神子との約束だかんな』


 というお留守番を宣言した一言。


『ティティは来るのか?』


『なんだ、気に入らんってか』


『いや、心強い戦力だからな。頼りにしてる』


 という同行を匂わせる一言。


 ぽわわわわ~ん


 回想も程々に、弟子の戦いを見守るティティ。とはいっても、結果は言うまでもない。今の夜桜なら、大抵の障害を乗り越えるないし粉砕できる勢いがあるのだ。


 応援こそすれ心配などしない。昂る気持ちをどうにか抑え、隠密行動を続けるティティである。


「さっさと行くんよね」


「んん~! むお~!」


 既に超えた障害など見向きもしないで、てとぽぽ走り去っていく夜桜。立ち塞がろうとする敵をことごとくまともに相手をしない態度を貫く。


 反射させられた魔法で服に火が付いた。剣で斬ったら煙になって消えた。槍で薙いだら味方を攻撃していた。滑って転んだらパンツ視えそうだったけど結局見えなかったし顔面ごと踏まれた。けどちょっと嬉しかった。ウインクが可愛かった。俺を見て笑った。いや俺を見て笑った。


 戦場の花を相手にした者達の声は様々であった。


「なーにやってんだ……」


 ティティからすればふざけていると見えてしまう。もともと茶目っ気を披露していた夜桜ではあるが、流石に戦闘中までは……と思っていたらこれである。


「ま、おもろいし問題もねーけどな! ハハっ」


 動きも対処もふざけているような夜桜。まだまだ荒く脆い。指摘箇所も一つや二つでは足りない。隙が無いとは言えるはずもない。


 それでも夜桜の、彼女独自のスタイルを確立させつつあるのだ。


 動きが不自然でもいい。傷を増やしてもいい。転んだっていい。一つ一つ洗練していけばいいのだ。


「帰ったら仕置き……じゃなかった稽古つけてやらんとな」


 ティティ的には(おこ)である。そんなもんは今試すことじゃねぇだろ! と心の中でもとい声を大にして叫んでしまったほどだ。


 練習してないことが本番でできるわけがないだろう。とは、どの分野でも言われることかもしれない。ましてや夜桜は命を失う危険性を持っているわけだ。


 うっかりおっ()んだ。なんて展開も十分にあり得るのだ。そんな展開ティティは望んでいない。本人も望んでいないだろう。


「んー曲がり角!」


「はぃ! 待ち伏せすんませんっした!」


 壁際に潜んでいた脅威も難なく対処し、


「よーん天井!」


「曲者はこっちだった……? なんちって」


 天井裏で待機していた偵察も無視することなく、


「んん誰なんよ!?」


「んふっw ふぃよえおっふw あ、お気になさらずww」


 ェニューェルェルとの出会いを経て。


 見かけ上は空……空であると思い込んでいただけで、覗き込んでみれば在るのだ。偶然にしろ、意図的にしろ観測したことには変わりない。観測してしまった以上、在るモノとしてこれから先もそこに在り続ける。


 まず入れ物から溢れ出てくることはないが、一度開けてしまえば際限なく干渉され影響を受け続ける。


 知らないから時が止まっている、なんてありえない。いいや思考を止めるべきではない。果たしてそれを真実として受け入れてしまって良いものか。


 誰にも知られていないコトは動き出してすらいない。と考えてもいいのではないか。


 何かに知られて初めて、何かは動き出すのだ。視る、触る、聴く。勘違い、思い込み。想像、妄想、幻想。接触の仕方など考えても意味はない。知らない手段も在るに決まっているだろう。


 大事なのは『存在しない』ではなく『知らない』だけであるということ。知る知られるという繋がりを持つことでエネルギーの供給が始まるのだ。


 ……夜桜は(がわ)に留まらず中身をも在るモノとして現世界への干渉へと導いた。それは神に等しい行いではないのか。


「――――――――」


 ティティはその瞬間。全てを悟った。


 かつて聞かされたうーちゃんの推測に思考領域を埋め尽くされ。


「っ師匠!?」


「・/S・――――――――D.S.」


 繰り返しを抜け出す術が塗り替えられ。フィーネの訪れぬ連なった音の永続。違いなどあるはずない不変の映像がひたすらに視覚を焼いていく。


夜桜が駆け寄ろうとした時点で、既にティティの姿は消えていた。


 何が起きたのか。理解しようとし、一歩歩き出すのと同時に思考を放棄する夜桜。


「狼狽えてる時間はないんよね」


 いくら考えても分からない、かも。と直感したのだ。ならば、考えるだけ無駄。師匠ですらどうしようもない問題なのだ。自分も対処できないだろう。


 というのは諦めが早いと非難するべきか、力量を把握し驕ることがなかったと称するべきか。


 今はリィの元へ。味気ない通路の中を花は舞い踊り行く。





繰り返し、ループの表現。

・/S・

↑が合わさった感じの記号があるでんすよ(言い訳)。D.S.とセットなんですけど……思いついたままのを勢いだけで採用しちゃった

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