表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/347

未来からの贈り物





 一つの可能性を手に入れた。この世界の欠陥とも言える、ある情報を知ることができた。


 完成しているように見えて、未完成で未熟な世界。


 誰かを犠牲にしないと辿り着かない、一つの可能性。


 つまり俺は諦めたのだ。この世界を救う術を知るために、この世界を犠牲にした。


 だが、そのおかげでこの世界を救えるかもしれない。絶対ではない。あくまでも可能性の話ではあるが、俺は確かにそれを手に入れたのだ。


 まだこの世界が終わった訳ではないが、この世界は不完全なまま変わる事は無いだろう。そこかしこに穢れが溢れでる世界。


 闘う術を持たない人には辛い世界。いつ危機が訪れるのか、それに怯えながら生きるしかない。


 そんな世界など俺は認めたくない。それを変えるために戦った者達のためにも、認めるわけにはいかないのだ。


 だが、それも昔の話。


 俺は今、この世界この状況を認めてしまっている。


「なぁ。俺やってやったよ」


 既に誰一人として存在しないこの星。動物も植物も、とうの昔に滅んでしまった。残ったのは俺だけ。


 守るものも、大切な仲間も、愛する人も。全ては土に還った。


「大好きなんだよ……」


 そう伝えてあげられなかった。それだけが心残りだ。


 痛いぐらい抱きしめて、そう言いたかった。


 どこで間違えたんだろう。どこに大切なピースを落としてきたんだろう。もう何度も考えた。


 だけど、俺には分からない。いくら考えても正解なんて分からないんだよ。


「笑ってる顔が――」


 いつまでも傍にあると思ってた。


「その綺麗な目から――」


 大きな雫が落ちるなんて思いもしなかった。


「いつまでも聞いていたいその声から――」


 大嫌いだなんて言葉、聞きたくはなかった。


「代わりなんているはずないだろ」


 なのに。


「俺はチャチャを殺したんだ」


 この自身の手で。


「ありがとう、か」


 チャチャの最後の言葉だ。


「チャチャは受け子だった」


 それを今の俺にはどうすることもできない。


 過去に戻るにも、解決法が分からないんだよ。何回やっても、チャチャを救えないんだ。


「もう、魔力が足りねぇんだよ」


 俺が助ける未来はもう存在しない。魔力が尽きても、きっと俺は死なない。


 いつまでも、この終わった世界で独りだ。


 ありえない。チャチャのいない世界なんて絶対にありえない。


 未来の無いこの世界で何を希望に生きればいいのか。変わることの無い景色など、俺に耐えられない。


 それでも、俺の意志なんて関係なく時は流れていく。俺にはもう、何もできないんだよ。






































 ――だから。希望を託そう。


 俺じゃない俺にしかできない。


 たとえ俺の意志が途絶えても、俺は諦めるはずないからな。


 それが救いなのか? 流石に笑えてくる。


 でも、誰に任せる訳にもいかねぇんだ。絶対に俺が救う。俺自身で救いてぇんだよ。


 我が儘なんて知らねぇ。別の道なんて知らねぇ。


 チャチャを救うのは俺でありたいんだよ。


「託すぜ。この世界の結末をよ」


 狂い始めた感覚に最後の命令を下す。


「さあ。うんと遠い過去にいってくれ」


 細かい調整なんてしねぇ。全魔力をつぎ込んでメッセージを過去へ飛ばすんだ。


                 ・


                 ・


                 ・


                 ・


 《――この記録がこの先残っていくのかは分からない。だが、もしもこの記録を見た人物がいるのなら、君に伝承の役目をお願いしたい。どうか、俺の想いが俺の未来に繋がりますように》






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ