ミーチャに視点を向けてみる
必要最低限。与えられた仕事だけをやっていればいいかなって、そう思ってた。
私は好きでやってる訳じゃないし、冷たいかもしれないけどただ巻き込まれただけ。
知ってしまった後からは、勿論助けになってあげたいという気持ちが出てきた。それでも時々、何やってるんだろうって、そう感じることがあった。
精霊? なんて訳分かんない事言われて、すんなり信じられるかって感じよね。まぁ、ミィちゃんの力のおかげで、私も見えるようになったワケだけど。
何だか知らない内に責任重大な事やらされて、何で私が……。って、戸惑っちゃって。ギルドの職員やってた方が気が楽っていうか、何も考えることなくやってられたっていうか。
「それでも、もっかい頑張ってみるとしますか」
「急にどうしたんですか?」
「いやね、二人が帰ってきたから元気出てきたって感じ」
ミィちゃんには悪いけど、私ってミィちゃんのために頑張ってるんじゃないみたい。
「二人とも頑張ってるからなんだな、って。だから私も頑張ろうかなって思ったんだって、今気付いた」
「大事な人達なんだ、って言ってましたもんね」
「そんな事言ったかしら。ま、全ては明日からだけどね~」
「今日からって訳じゃない所が先輩らしいですね」
基本私は手を抜きたい楽をしたい楽しい事だけやってたい、って性格だからさ。その辺の切り替えには時間がかかるのよ。きっと。
「じゃ、そうゆーことで明日からよろしくー」
今日はジーンとチャチャが帰ってきたお祝いしなきゃだし。別に明日から頑張るから今日はもういいやなんて思ってないし。
ほら、ご馳走を沢山作っておきたいじゃない。だって久しぶりに皆での食事なんだもん。それにお友達も連れてくるって話だし。
まぁ、私は料理なんてできないけど。
「掃除でもやっときますか」
できない事やって大失敗するのはイヤだからさ。いつもはミィがご飯当番だったから、それに甘えちゃってたのがここで仇になったかな。
「……別に料理したいとは思った事ないし、仇でも何でもないか。面倒くさいし」
やっぱり、二人が帰ってきて私も気分が高揚してるのか。素直に掃除だけやってればいいのよ。ま、面倒だってことには変わりないけど。
「……お友達って、どんな子かな」
ジーンにしては珍しい。チャチャやミィがいてくれたお陰だろうけど、それでも友達って言える子ができて、何だか私も嬉しくなっちゃった。
別に当たり前の事なんだけど、どうしてだろう。
ジーンの友達って変な子ばかりだったけど、今回はどんな子なんだろうか。
口調がおかしかったり、全く喋らない子だったり。ただただ声がメッチャ大きい子もいたっけ。
皆、今は何をしてるんだろうか。冒険者をやってる訳じゃないみたいだし。
どの子も魔法の適正があったから、そっち関係の事やってるんだろうか。まぁ、そんなこと考えても時間の無駄か。
「……この際、普段やらない所もやっておきますかね」
魔法かぁ。子供の頃は不思議で仕方なかったけど、いつの間にかそういうもんだって考えるようになってたからさ。
……ホントどうしてなん?
「検索……魔法の仕組み……」
うーん。どの本も書かれてる内容がパッとしないなぁ。ほとんどが、世界の法則を無視した謎要素である、で終わってるし。謎を解明した結論は未だ存在していない、って事か。
「……借りている……?」
変わった解釈をしてるものがあるけど、どれどれ。私がじっくりと読んでやろう。
私達は世界の力の一部を借りているだけ。魔力を操り魔法を繰り出すという力は、本来得ることのなかった能力だと考える。この星自らが魔力を操作し、世界の安定を保つというのが自然に思える。
そこかしこで風が吹くように。雨が降る、雪が降る、雷が落ちる。火山が噴火する。
魔力という要素がある以上、それらと同じように何かしらの事象が起きるはずなのだ。
何がどう起きるのかなど、私が想像できる範疇を遥かに超えているだろう。ここに、予想をつらつらと書く必要はないだろうね。
では、どうして私達が魔法を使えるようになったのか。それは――
「…………?」
それは――――――――
「いや気になるんじゃが……!?」
どうしてそこで終わっとるん!? 先を、先を読ませて?
――の記――――ってい――――らな――――録を見――――ら、君――――目をお――――たい――――の想――来に繋――――うに
「最後の最後だけ少し読めたけど……ま、どうしようもないか」
明日になっても覚えてたら、ドーシルあたりにでも聞いてみよう。
「掃除もこれくらいでいいんでねー?」
あー。なんかドッと疲れた。もういいや。ジーン達が帰ってくるまで、ちょっと一休みって感じで。