ミィに視点を向けてみる
しばらくゆるーい感じのが続くかもです。
ちーねぇ達が出発してから、なんだか施設内が静かになった気がする。いつも賑やかだったはずなのに、今はそれが嘘だったかのように落ち着いている。
「あ、今は強化計画中なんだっけ」
いつもは戦闘員の人達がいっぱい居るんだけど、今は新人さん含め沢山の人が参加してて施設に居ないんだった。騒がしさ筆頭の、タマとソチラさんがいないのも大きいかも。
落ち着いているのもいいけど、ちょっぴり寂しいな。皆でお話できる方が好きなんだって、今気づいちゃった。
「ん? ミィちゃんどーしたの?」
「ドーシルさんおはよー。なんだか寂しくなちゃったなぁ~って思って」
「大丈夫だって。心配しなくてもジーン達ならすぐ帰ってくるから」
「ち、違うよぉ!」
「んん~? 何が違うって言うのかなぁ~?」
にまにまとドーシルさんが聞いてきた。これ、絶対分かってイジワルしてる顔だ。
ここの人達って、皆イジワルするのが好きなのかな。毎日毎日誰かにイジワルされてる気がするんだけど。
ミーチャが言うには嫌われてる訳じゃないみたいだし。だったらイジワルなんてやめて欲しいって言うけど、止めてくれないんだよね。ほんとどうしてだろう?
「あれ? ミカちゃんは?」
昨日からドーシルさんとくっついて行動していたはずのミカちゃんがいない事に、ドーシルさんの言葉を訂正してから気付いた。
朝はおはようの挨拶に来てくれたのに、どこ行ったんだろう。
「神子様は今日はお休み。元気に振る舞ってはいても、元々体力の無いお方だし」
もしかして、朝は無理してたのかな。
「うーん。だったら明日は、ミィがおはようって言いに行った方がいいよね」
「だね。きっと神子様も喜ぶと思うよ」
決定っ。明日はちょっと早く起きて、ミカちゃんのところに行こっと。ここ最近はあんまり忙しくないし、きっとお寝坊はしないはず……。
うぅ~、今日は訓練厳しくないといいなぁ。いやいや、厳しくないと訓練の意味無いか。
ちょっと油断するとミィの悪魔さんが出てくるから、気を付けないとね。ミィの天使さんよわよわだからなぁ。
「ドーシルさん、今日の訓練って……」
「ふっふっふ、今日はわんこ相手の実戦だよ。二十分後出発ね」
なんですとぉ!? よりにもよって今日なんだね。しかもわんこって……。絶対そんなにかわいい相手じゃないはずなんだけどなぁ。
でもよしっ、今日もがんばろっと! 守られるだけじゃなくて、自分でも戦えるようになりたいってお願いしたのはミィだからね。
やる気も出たところで、出発前にミーチャさんにも会いに行こうかな。昨日はなんだか忙しくなるってイヤそうだったけど、大丈夫かな?
お仕事が変わってもう二年か。ミーチャさんは相変わらずマイペースだけど、今回はジーン達も戻ってきたのもあってやる気十分な感じのかな。
サボっていた分今回は頑張ってもらうってもーくんが言ってたから、一緒に頑張っていると思いたい。もーくんはずっと苦労してたきたから、ちょっとでも楽になればいいな。まぁ、他の仕事をする時間が増えたって言って、全然休まない気もするけど。
「ミーチャさんおはよー。今から訓練行ってくるね」
「おはー。気を付けていってらっしゃい」
いつになく真剣なミーチャさん。山積みになった書類と本に目を通しているみたいだ。一枚の書類を見ている時間が凄く短いけど、それはミーチャさんの能力のおかげらしい。
前に全部覚えているのか聞いたことがあるんだけど、馬鹿なの? って言われちゃった。流石に全部覚えてる訳じゃないらしい。
「ミィちゃんおはよう。今日はドーシルさんとお出掛けですか?」
「うん、そうだよ。もーくんはお手伝い?」
「はい。今まで出来ていなかった事を、順番に片付けていかなければならないので。これ、追加分です」
もーくんが持ってきた追加分のせいで、より山が高くなっていく。
「明後日には一度休みを……」
「いらないわ。休んでなんかいられないの。ジャンジャン持ってきて」
「あの、それだと僕の休みも無くなるんですが」
「知らないわ。誰かに代わってもらえばいいじゃない」
「……はぁ、分かりました。そこまで言うのならば最後まで付き合いますよ」
「そ、じゃあ次持ってきて」
誰だこの人。ミィの知ってるミーチャさんじゃない。部下を道連れにして休みなしだなんて、凄く酷い職場だ!
しかも巻き込まれたもーくんは、イヤというよりもちょっぴり嬉しそうなのはどうして!? ミィには分からないよ!
これ以上いても二人の邪魔をするだけかな。ミィもこれから用事があるし、おしゃべりはこのくらいでいいよね。
「じゃ、じゃあいってくるね」
「ん~」
「気を付けて」
二人に挨拶を済ませた後、再びドーシルさんと合流するんだけど……あれ。まだいないな。
「ドートさん。おはようございます」
代わりにお兄さんがいた。休憩スペース、広い部屋の中一人でいることの多いドートさん。
「む、ミィか。今日は妹と稽古があるのではなかったか?」
「うん、そうだよ。でも今日は実戦でお出掛けだから、ここで待ち合わせなんだけど……」
「まだ妹が来ていない、と。まぁ、それならばもうすぐ来るだろう」
ドートさんって、少しだけ雰囲気が怖いんだよね。沢山お話ししてるミィでもちょっぴし思うんだから、他の人には話しかけにくいのかも。
「ジーン達が帰ってきてよかったな」
「うん。またすぐに行っちゃったけどね」
「今度はそんなに長い別れにはならないだろうさ」
「あはは、ジーンもちーねぇもいつも何かしらやっちゃうからなぁ。もしかしたら、またしばらく帰ってこれないとかになるかもね」
「もしそうなったら、今度は怒ってもいいと思うぞ」
「でもなぁ。二人とも頑張ってる結果がそうなってるだけだし、ミィには何も言えないよ」
「むぅ……ミィは優しすぎる。一歩引くのも大切だが、時には思いをぶつけるのも大切だぞ」
あっ、実は前に一回そういったことがあったんですけど……。とは言えないっ。なんか今言うことではない気がするっ……!
「ミィちゃんお待たせ―。兄さまもおっつー」
少しドートさんとお話しをしていたらドーシルさんがやってきた。
「うむ。今日も元気が良いな妹よ」
「そりゃもう私はいつでも元気一杯って感じ!」
「出かけるのならば、ミィの事は任せるぞ」
「よし任されましたっ。兄さまも神子様のことお願いね」
「ああ、任せておけ」
この兄妹はいつも仲が良くていいなぁって思う。喧嘩してるとこ見たこと無い気がするし、神子様も頼りにしてるみたい。強いしカッコいいしで憧れちゃうなぁ。
「さ、ミィちゃん行こっか」
「はいっ。今日もお願いします!」
強くなりたい。守られるだけじゃイヤなんだって、ずっと思ってた。できれば一緒に戦いたいんだけど、それはムリ。頑張っても、頑張っても、二人には追い付けない。
それでも。それでも強くなるために頑張りたいって、そう思ってる。できることはやりたいし、最初から諦めたくもない。
ドーシルさん達には迷惑かもしれないけど、ただの我儘だって言われちゃうかもしれないけど、そんなの関係ない。
自分が信じた道を最後まで信じて歩き続けなさい。って、お母さんの言葉。昔はなんにも感じなかったけど、今はその言葉のおかげで頑張れてる。
ミィが信じるのは――
「ミィちゃん?」
「……うん。いきます!!」
今は目の前の事に集中しなきゃね!
「っせぇぇえええいっ!」
このブレスレット。ちーねぇと半分こしたこのブレスレットが輝いている限り、ミィはいつまでも頑張れる。ちーねぇがミィのために頑張ってくれるから、ミィも一緒に頑張りたい。
この指輪。ジーンから貰った綺麗な指輪。護ってくれるって、助けてくれるって約束してくれたから。ジーンがミィのために頑張ってくれるから、ミィも一緒に頑張りたいんだよ。